……お迎えが来たみたいですね。
有名どころの百貨店をイメージしました。
この王都にあるグランブルム商会本店は、俺の前世からの入れ知恵で外見以外はかなり時代を無視している。
先ずは周りの何処かの本店と違い5階建てで、他の何処かの本店は精々3階建て。
そして、1階は食い物関係で飲食店、生鮮食品、調味料や香辛料に皿やコップに調理器具等、兎に角、食い物に関わる全てを揃えている。
2階は、一般用の服飾関係で、赤ちゃんの産着から死装束まで揃えて居る。
3階は、冒険者関係で、武器や防具に、薬草やポーション。
それに、夜営用のテントや毛布に、結界石等の魔道具等を揃えている。
4階は、スタッフオンリー。
5階は、貴族関係でドレスやアクセサリー等を揃えている。
更に、貴族用の高い酒にツマミや、高い紅茶に高いお菓子を揃えて、屋上を高級サロンにしている。
「いらっしゃいませ。グランブルム商会本店にようこそ。今日は何をお求めですか?」
「……ちょっと待ちなさい。」
「……はい。どうされました、フロアマスター。」
正面玄関口から入り、俺達の入店に気付いた店員がお決まりの挨拶をしていたら、何か偉い人が来た。
「あの、お客様。」
「何?」
「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「名前? ユーマだけど。」
「……! やはり!」
「どうしたの?」
フロアマスターに言われるままに、挨拶をしていた店員を無視して4階の事務所に通されると、そこには見覚えのある後ろ姿があった。
「総督、お連れしました。」
……総督?
「会いたかったでー!」
「クラマ!」
「ああ~、ユーマや~。」
クラマに抱き付かれ、クラマの顎が俺の頭頂部をグリグリ攻めていると、我に帰ったリンとセシリアが尋ねた。
「ユーマ様、其方の方は誰ですか?」
「えらくユーマ様に懐いている様に見えるが。」
「ああ。クラマは、このグランブルム商会の最高責任者で、八魔将の1人だ。」
「……え!?」
「……はい!?」
4分後に現実に帰って来たリンとセシリアに説明して、やっと2人は落ち着いたようだ。
……そうだよなぁ。
あの8人の中で、クラマは魔王の森から出れる立場だったな、ウッカリだ。
「なぁ、ユーマ。」
「何だ、クラマ。」
「魔王の森に帰ったらする約束だったアレ。別に此処で何回かしてもエエやろう?」
「まあ、確かにね。」
「よっしゃー。ほな、行こか。」
「分かった。リン、セシリア。」
「はい、ユーマ様。」
「何だ、ユーマ様。」
「俺達の方が済むまで店の中を見てて良いぞ。」
「分かりました、ユーマ様。」
「分かった、ユーマ様。」
父親にだけは見せてはいけない顔をしたクラマは、先ほどまで普通なら30分で終わる「全身毛繕い」を1時間半掛けて行った。
そして復活したのは20分後だが、その約2時間の間にちょっとしたトラブルが発生していた。
どうやら、リンとセシリアは買い物に来ていた貴族に絡まれて、「つい」セシリアが手を出したらしい。
その場は、本店会長の人(白狐人族)が上手く収めたらしく、今、同じ階の4階別室に居ると聞いて向かってみる。
部屋の前に到着すると、中から「指導・注意」の声が聞こえて来たから中に入る。
すると、正座したリンとセシリアが居て、「先生は怒っていますよ。」みたいな感じで腰に手を当てて叱っている白狐人族の女性が居た。
「……お迎えが来たみたいですね。2人共、以後は気を付ける様に! 良いですね?」
「……はい。」
「……分かった。」
「大変だったな、リン、セシリア。」
「ユーマ様、申し訳ありません。」
「ユーマ様、すまない。しかし、正座なんて8歳の時にお父様とお母様が夜に同じベッドで遊んでいる所を目撃して以来だ。」
……すみませんが、セシリアのお母様。
セシリアの花嫁教育はどこまで進んでいるのですか?
俺、とても気になります。
そして、リンとセシリアは正座がキツかったのか、2人共に足が生まれたての小鹿状態だ。
「初めまして、ユーマ様。ヤナハと申します。」
先ほどまで、リンとセシリアを叱っていた白狐人族の女性が身嗜みを調えて挨拶に来た。
「初めまして、ヤナハさん。」
「こうしてユーマ様に会えて嬉しく思います。直接お礼を言えるのですから。」
「お礼?」
「はい。ユーマ様は、娘を奴隷から救い出してくださいました。」
「奴隷から救い出した? ……ああ! イナハか!」
「はい。その節はありがとうございます。」
「イナハは元気か?」
「はい。」
「それなら、もう良いよ。お礼なんて。」
「そうですか。それでも、もう一度言わせてください。
ユーマ様、娘を助けて頂いてありがとうございます。」
……そうか。
本店の会長なら、確かに幹部だな。
因みに後から聞いたが、リンやセシリアに絡んだ貴族は男爵で、初めて来て少々浮かれていたらしい。
向こうも自覚が有ったお陰で、丸く収まったと話してくれたけど、危なかったな。
もし、大事になっていたら、アイリスに「借り」が出来る所だった。
何か、働くんだよ。
アイリスに「借り」を作ったらいけない、て。
そんな訳で、俺達は3階に行ってみる事にした。
「何故、あの人達は良くて、ボクではダメなんだ?」
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