私を忘れたの?
詐欺師程、ATフィールドを抜けるのが得意な人種はいません。
アークザラ伯爵が口を開いた。
「本当は何が有ったのでしょうか?」
「先程、説明した通りですが。」
「それは違うでしょう。僅かではあるが、5人中3人が怯えた目をしていた。何か有ったと考えるのが妥当だ。」
「それは、盗賊に襲われたのですから、まだ恐怖心が拭えていないだけではないでしょうか?」
「……はあ。正直に答えて欲しい。きちんと真実を把握しないと彼女達を守る事が出来ない。」
「……ユーマ殿、彼は信頼出来る。」
「分かった。」
「では?」
「真実を話します。しかし、誰にも言わないと誓いますか?」
「誓う。」
「……3人は、盗賊に襲われました。」
「……分かりました。3人は、暫くの間は、男性と関わらない仕事を回しましょう。」
「後、詳しくは言えませんが、俺の魔法で『綺麗』な身体になっています。」
「綺麗……ですか、分かりました。」
「だから、彼女達は大切な思い出を作れます。」
「……しかし、貴方は何者ですか?」
「俺はありきたりなDランク冒険者です。」
「それにしては、上等過ぎる奴隷をお持ちですね?」
「色々な幸運が重なった結果です。」
この後、軽い雑談をしてメイド服に着替えたジェリン達と別れの挨拶をして、領主館を後にした。
……いや、行く先々で、貴族令嬢奴隷をホイホイしないぞ。
さて、先ずは教会に行ってトリア姉さんとお喋りをして、その後は、冒険者ギルドに行ってみる事にした。
のだが……
「良い女共を侍らしているじゃねえか。金と装備品を置いて消えなガキ。そしたら、命だけは見逃してやる。」
「はぁ。何で、街の中に人族の言葉を話すボブゴブリンが3匹も居るんだ?」
「……殺す!」
……冒険者ギルドに到着した俺達は、先に安い装備品3人分を売り払った後、受付嬢にこの街の事や周辺のモンスター情報を聞いた。
「そうですね。この街の領主アークザラ伯爵様は、良い統治をしていますね。責任有る仕事なので、滅多に街に出る事はありませんが、街に出られた時は、出会う人達に分け隔てなく接してくださりますね。」
「そうか。モンスターはどうだ?」
「周辺のモンスターですが、特に注意が必要なモンスターを見たという報告は受けておりません。」
「分かった。」
「ただ、最近、この辺りでエルフの少女を見掛けるという情報があります。」
「エルフの少女?」
「はい、誰も信じていませんが。」
「そうですか。ありがとう。」
受付嬢にお礼を言った後、俺達は依頼が貼ってある掲示板を見ると、特に目を引く依頼は無かった為、適当に森に行って狩る事にした。
???side
「あの御方の為に……」
ボクは、母さんの血だらけの笑顔しか知らない。
ボクに触れる手は温かったけどカサカサで、身体もかなり細かったのを覚えているし、何時もボクに謝ってばかりだ。
ボクはただ母さんと一緒に居られれば良かったのに。
……だから、母さんを死に追いやったあいつらが許せない!
そして、あの御方は半端者で歪な身体のボクと一緒に母さんのお墓の前で泣いてくれた。
こんな半端者のボクを抱いてくれた。
母さんの温もりしか知らないボクに母さん以外の初めての温もりをくれた人……
ボクにはあの人、いや、あの御方しか居ない。
そして、あの御方以外は要らない。
だったら、ボクはあの御方の為に死のう。
あの御方の為にボクの命が有るんだ。
ボクはそう誓ってからは、一生懸命に身体を鍛えたんだ。
それに、あの御方から頂く食事も甘くて美味しかったし、あの御方から頂いた食事を取れば取る程、胸の痛みは消えて、母さん以外は思い出せなくなって、食べた後はとても気持ち良いんだ。
そんな中、たまに、あの御方の「お願い」を叶える為に動く時もある。
勿論、ボクは喜んで引き受けた。
ボクは、あの御方の幾度かの「お願い」を叶えて、数ヶ月が過ぎたある日に、あの御方から「卒業試験」という「お願い」をされたんだ。
抹殺対象は、母さんを死に追いやった憎いエルフ共で、ボクは喜んで行ったよ。
小さな集落だ、直ぐに済みそうだな。
「待って! 私を忘れたの?」
このエルフのメスガキは何を言っているのだろう?
ボクは母さんとあの御方しか知らない。
「止めるんだ!」
「そうだ。儂らは仕方ない。だが、シーマは幼馴染みだ!」
「シーマは、最後までお前を庇っていたんだぞ!」
「目を覚まして!」
殺し損ねたクソエルフ共が何か言っている。
それに、ボクはきちんと起きている。
だから、「目を覚まして!」と、言われる筋合いは無い。
……何か、胸が痛い。
このエルフのメスガキを見ていると、母さんを喪った時と同じ場所が痛い。
さっさと殺そう。
「……死ね。」
「いやーーー!」
「止めろーーー!」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




