閑話~セシリア達の冒険(その2)
聞いていても、頭の中に記憶しているかは、別問題。
今日は、アイリスに招待されて王宮でお茶会をしている。
「セシリア、どう?」
「そうね。ユーマ様が居ないと不安だわ。」
「やっぱり?」
「ええ。」
王女だけど、その辺りは逃げていたアルと、平民のユズハ以外は優雅に紅茶やお菓子の味を楽しんでいるわ。
そして、アルとユズハは私達の所作を見様見真似で必死でやっているから四苦八苦しているわね。
「それで、何故、分かれたの?」
「アイリスも知っての通り、ユーマ様は強過ぎるのよ。」
「……そうね。」
「クラリーサなら付いて行けそうだけど、そうなると私達の戦力に不安が残るから私達の方に入って貰ったのよ。」
「クラリーサが獣人になったのは驚いたけど、そんなに強いの?」
「ええ。充分な経験を積めばコトネと互角になるんじゃないかしら。」
「それはすごいわね。」
「そ、そんな事ないよ~。」
私が、仲間の中で最強のコトネと同じになると言ったから、クラリーサが謙遜した。
「謙遜する必要は無いでしょ。充分に可能性があるのだから、ね。」
「……う~。」
あらあら、首まで真っ赤ね、クラリーサ。
この後、穏やかな時間が過ぎ、紅茶を1口飲んだアイリスが再び口を開いた。
「カフェの新作情報は無いのかしら?」
「悪いけど、知っていても話せないわ。」
「どうしてもダメ?」
「どうしてもダメ。」
「私達、親友じゃない。」
「ダメなモノはダメよ。」
「セシリアのケチ。」
しかし、楽しい一時を邪魔する者が現れたわ。
「これはアイリス王女殿下。ご機嫌麗しく。」
「あら、エルダイク様。」
「たまたま、近くを通った所、楽しそうな声に誘われて来ました。」
はあ!
何を言ってんのよ!
此処は暗黙は了解になるだけど、王族用の庭園よ!
何が「たまたま、近くを通った所……」よ!
万が一に備えて、仮面を着けていて正解ね。
まさか、此処でエルダイクに会うなんて。
卑屈で臆病であるが故に舌先三寸で中立派閥にいたコモリー伯爵家。
その次男のエルダイク。
貴族令嬢の時から、気に入らなかったわ。
確かに、家は伯爵位だけど、ここ数世代は婚姻も含めて特に功績を残していないし、事実上、斜陽に入っていたわ。
次期後継者の嫡男マーレク様は、立場を良くしようと、誠実な日々を過ごしているのに、このエルダイクがいつも足を引っ張っていたわ。
「アイリス王女殿下、此方の方は?」
「他国の私の友人のテシリアよ。」
アイリスがそう言うと、演劇の様に大袈裟な身振りで言ってきた。
「アイリス王女殿下。幾ら何でも、獣人族を引き連れている様な者と友人とは。酔狂な事は止めた方がよろしいかと思いますよ。国の品位にキズが付きかねない。」
良く言った!
竜人族の王女アルに、神獣が守護する姉を持つクラリーサに、クランブルムが後ろ楯に持つユズハ。
……無知は罪になるって本当ね。
「つまり、エルダイク様は、私が自国の品位を下げていると仰るのね?」
「そうです。」
……ブチッ!
パシッ!
「え!?」
私は、左手の手袋をエルダイクに向かって投げた。
「……この左手の手袋をボクに投げた意味を分かっているのか?」
「ええ。それを言うのなら、女である私に対して代理人を立てる、なんて、ゴブリンにも劣る事はしないわよね?」
「も、勿論だ。」
「その言葉、この私アイリスが聞いたわ。」
エルダイクに何もさせない為に、アイリスは王族としての権力を使い、直ぐに決闘の場を準備した。
見届け人は、カイル皇太子に第1王女シンフォリアにアイリス、宰相とコモリー伯爵とその嫡男マーレクとなる。
私は、何時もの冒険者としての装備を纏い、エルダイクはキズ1つと無い飾り意匠たっぷりで綺麗な全身鎧を身に付けているわ。
「これより、テシリア様とエルダイクの決闘を行う。規則は非殺で、相手の降参の宣言か、相手の気絶、もしくは、審判が戦闘の続行が不可能だと判断した場合、勝敗が付くものとする。」
コモリー伯爵は、自分の立場をどう守るかを考えているのか、落ち着きが無い。
嫡男マーレク様は、冷静に見ている。
他は、これを切っ掛けにしてゴミ掃除を考えているのか、笑顔になっているわ。
「審判は、この私、宰相が行う。両者、準備は良いな?
……両者、構え。……始め!」
審判の合図と共に、エルダイクはガチャガチャと音を立てて向かって来た。
……遅い!
これだけ遅いのなら、剣速も遅いわよね?
……ちょっとユーマ様の真似をしてみようかしら?
あら、都合良く、大上段に構えたわ。
ブン!
私は、エルダイクの大上段からの一撃をギリギリに躱して、更に一歩を踏み出して、魔力で身体強化を行い、横薙の一撃を入れる。
まあ、その時に、エルダイクの右肘辺りから何かが折れる音が2回聞こえたけど、気にする事は無いわね。
「がぁ……」
私は更に相手の左側から足払いを掛けて転げさせ、足払いを掛けた私の足をそのままエルダイクの腹に叩き突け、打撃と落下の痛みを追加した。
「ぎ、がはっ!」
そして、模擬戦用の剣をエルダイクの首筋に沿える。
「勝者テシリア様。」
「無効だ!」
「何故です?」
「令嬢がこんなに強いなんて聞いていない! ボクは代理人を立ててのやり直しを要求する!」
「却下します。」
「ふざけるな……アイリス王女殿下!?」
「私は聞きましたよ。代理人を立てる様なゴブリンにも劣る事はしない、と。」
「それは、ボクが相手の強さを知らなかったからです。」
「あら、それは相手も一緒じゃなくて?」
「そ、それなら、相手の装備品に何らかの魔法付与されているからだ!」
「それを言うのなら、エルダイクも家宝の全身鎧を纏っていますわよね?」
「んぐっ。」
「フォールイダ王国皇太子のカイルが審判を下す。神聖な決闘を汚す言動、アイリス王女の友人の名誉を貶めた発言、更に暗黙の了解とはいえ、王族専用の庭園に侵入した罪に因り、エルダイクの貴族籍を抹消しコモリー伯爵からの除籍を命ず!」
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