表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/311

序章:晴天の霹靂【四条天皇の悪戯】

物語は、おおよそ八百年前、日本列島に大変革が起きようとしていた時代から始まる。この頃、日本には二つの政権が併存していた。東の鎌倉幕府と西の朝廷である。

当時、幕府の長に征夷大将軍の位を与えたのは、朝廷だった。しかし、武力をもって朝

廷を抑えたのは、幕府だった。そのため、両者には奇妙な関係が生まれていた。


鎌倉時代中期の一二四二年一月五日、宮中で一人遊びをする少年がいた。御年十二歳の四条天皇である。この天皇は、二歳で即位して以来、生涯政務に頭を悩ませる事がなかった。なぜなら、政治は、外祖父にあたる九条道家が行なっていたからである。

だから、幼帝の仕事は、宮中を遊び回る事であった。先月、道家の孫娘(彦子)が嫁いでいたが、天皇は幼少である。お世継ぎなど、まだまだ先の話だった。

『さわがしきまでの御遊びのみにて明しく暮らさせ給ひける』(増鏡)

“騒がしい程に、お遊びばかりの日々を暮らしておられた”

その遊び相手は、彦子の弟忠家が務めたという。

しかし、「その日」に限って、四条は一人で遊んでいた。忠家も彦子も側にはいない。 そして、あろうことか、身辺を警護すべき女官の姿さえ見えなかった。

したがって、間もなく起こる“事件”は女官達の大失態といえる。

一人遊びに興じる幼帝は、先頃から、御所の床に向かって「何か」をしていた。

一体、何をしているのだろう。

『主上あどけなくわたらせ給ひて、近習の人、女房などを倒して笑わせ給はんとて、

 弘御所に滑石の粉を板敷にぬりおかれたりけるに』(五代帝王物語i)

“帝は、いたずら心を起こし、そこを通る近習・女官を転ばせて笑おうと、御所の床に「滑石の粉」を塗っておられた”

不幸は、まもなく起こった。

『主上あしくして御顚倒ありける』

“運悪く、お転びになった”

不注意にも、自分が「滑石の粉」に滑り、床に頭を打ちつけてしまったのである。しかも打ち所が悪かったらしく、そのまま意識を失った。

四条は、この日を境に公式の場から姿を消し、一月九日にその死が公表された。


四条天皇の急死。この事件は、京の朝廷はおろか、鎌倉の幕府をも巻き込む大問題に発展した。何故なら、承久の乱以来の権力図が、修正を余儀なくされたからである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ