ある夏の日
初投稿です。
初めて小説って言うものを書きました。
小説って呼べるかどうかも怪しいですが、できれば見てあげてください。
今は7月31日の朝10時、俺は良く遊ぶメンバーで明日から行く2泊3日のキャンプの準備などをしていた。
男3人、女4人の計7人。
気心が知れたメンバーばかりだから気を使うことはないんだけど、俺を含めてみんな飽き性だから遊び道具やイベントを大量に用意しなくちゃいけないのが大変だ。
まぁ、「一人5つくらいイベントを用意してくるように」と連絡してあるので退屈になることはないだろう。
みんなどんなイベントを用意するのか楽しみだ。
それなりにまめな性格のせいで前々から準備していた甲斐もあってか、キャンプの準備は何の滞りもなく午前中に終わった。
明日からのしゃぎまくりの暴れまくりに備えて昼ご飯を食ったのんびりして体力温存だ。
もし、誰かと会うとか遊びに行ってしまったら、キャンプでの体力が足りなくなっちまうからな。
ハルも来るから体力は確実に温存しておかないと、途中でバテてみんなから文句の嵐や、ハルからの誹謗中傷がまってるし、そんなのはゴメンだ。
だから、今、玄関に誰か着たみたいだけど、そんなの無視!母さんの友達か何かだろうし、のんびり冷房の効いた部屋でゲームでもして過ごす時間を邪魔されたくないしな。
昨日までやっていたゲームソフトをプレステにセットして、ゲームが起動した瞬間
バンッと背後の扉が乱暴に開かれたかと思うと、よく見知った幼馴染がどうどうと我が物顔で立っていた。
そして、最悪の一言を高らかに宣言した。
「今からゲームをするわよ!」
その一言で、俺ののんびり過ごすはずの休日は地獄に変わってしまった。
◆
明日からみんなで行くキャンプだ。
それまでにやっておかなくちゃいけないんだ。
そうしなくちゃ、絶対に後悔する。
これはあいつとアタシの真剣勝負。
アタシの作戦通りならうまくいくはず。
そうなってもらわないと困るし、そういう状況ならうまくごまかせるはず。
ダイジョブ、うまくいく
◆
「人の部屋にいきなり入って来て、何を言い出すんだよ、ハル」
突然入ってきたのは、幼馴染で明日一緒にキャンプに行くメンバーの一人のハルカ、仲の良い奴らからはハルって呼ばれてる。
性格はわがままで負けず嫌い、さらにプライドが高いっていうちょっと扱いづらい奴。
「いきなりじゃないわよ、ちゃんとノックしたし!・・・・心の中で」
「心の中じゃ意味ないだろ!」
思わずツッコミを入れてしまったが、そんな俺には目もくれずテーブルを挟んだ向かいに座った。
ハルの家は俺の隣で、良く俺とも遊ぶんだけど、突然現れるし、テレビゲームの他に突然変なゲームを始めるし、いつも俺は振り回されるんだ。
「で、なんのゲームをするんだよ。そんなことより明日の準備できてるのか?」
電源を入れたばかりのプレステの電源を切ってハルのほうに体が向くように姿勢を直した。
「キャンプの準備なんて当日やったら大丈夫よ!アキラにも手伝ってもらうし!ちなみに今日は、我慢大会よ!冷房も扇風機も消して、窓を閉めるの。先に飲み物に手を出す、又は涼しくなることをしたら負けね」
ハルは言いきった後、さも良いことを言ったような顔をしてニカッと笑っていた。
確か今日の最高気温は32℃だ。
こんな暑い日にそんなゲームを思いつくなんて、こいつは悪魔だ。
ていうか、なんでまだ明日の準備してないんだよ。俺に手伝わすって・・・俺は召使か?
「召使だなんて思ってないわよ?ちゃんと便利な幼馴染として大事に思ってるよ」
「なんで考えてることが分かったんだ!?お前超能力者か?ていうか、便利な幼馴染ってひどいなおい!」
「アキラの考えてることなんてわかる分けないじゃない、女の勘よ。ていうか、アキラのボキャブラリーを考えたらおおよその予想は出来たわ。まったく、予想を裏切れない人間ね。
あと、便利な幼馴染って言うのがイヤなら、とてもとても大切な人って思ってるって言い直してあげても良いわよ?」
あきれた、とでも言いたそうな表情で、溜息をしながら吐き捨てるように最後の部分を言い切ったハルは、何か文句でもある?と言いたそうな顔でこちらを向いていた。
もう、こうなったら両の手を上げて降参だ。
口でこいつに勝てるわけがなかったのだ。っというか、口に出してさえいないのにこんな事いわれるなんて……泣いても良いですか?
「だめよ?うっとうしいから」
「だぁぁ!!何で口に出して無いのに思ってることが分かるんだよ!?」
「それはついさっき言ったと思うけど、アキラは学習能力が無いの?それとも、記憶能力がないの?」
そういうハルの瞳は、ふつうに驚いたというような色を映し出していた。
真面目にそんな顔されると俺の頭はかなりヤバイみたいな感じがするからやめてほしいんですけど。
「仕方ないわね、優しいあたしがもう一度教えてあげるわ、女の勘よ。一回じゃ覚えられそうに無いみたいだから、もう一回言ってあげる。お・ん・な・の・か・ん」
めちゃくちゃむかつくんですけど、ほんとなんでいじめられてんだろ。
「えっ!?もっといじめてくれって?アキラってドMなの?」
「そんなこと思ってねぇよ!!」
◆
玄関の前で何度も深呼吸をした。
何度も何度もイメージで練習した。
いつもどおり振舞えば警戒なんてされないし、作戦もいつもどおりに振舞えば予定通りにことは運ぶはず。
……なんでアタシこんなに緊張してんだろ
アタシってこんな女の子みたいな子だったっけ?
こんな自分を認めたくなくて、勇気を出して震える指に力をいれて呼び鈴を鳴らした。
◆
「絶対にイヤだ。何でそんな無駄なことしなけりゃいけないんだよ。我慢大会したければ一人でやれば良いだろ。俺を巻き込まないでくれ。」
明日はキャンプだし、今日はめちゃくちゃ気温が高い。それなのにこんなことを思いついて、なおかつ俺が巻き込まれようとしてるなんて考えたくも無いけど、それが現実なんだよなぁ。
けど、今度ばかりは付き合ってられない。
「ふ〜ん、逃げるんだ。アキラってそんなに弱虫だっけ? あっ!わかった!アキラはアタシに負けるのが怖いんだ!」
カチーン
俺が逃げた?弱虫?ハルにまけるだって?そんなの絶対にイヤだ。今までのゲームも勝率は5割、絶対に俺が負けてるなんて言わせない。
「上等だ!やってやろうじゃないか!」
そう、俺は大の負けず嫌いなんだ。すこしでも、弱虫とか逃げるとか言われるとすぐ頭に血が上っちまうんだよ。
いつもこんな感じでハルにうまいことゲームの舞台に上がらせられるんだ。
しかも、俺は約束を破るって言うのもすごくイヤなんだよね。だから、一回言ってしまえばハルの勝ちみたいな感じだ。
小さい頃からずっと一緒にいるから、ハルは俺の性格を把握してるし扱いも慣れてる。
悲しいけど別の言い方すれば、猿回しのサルだな。
「お、さすがアキラ!やってくれると思っていたわよ!」
そう仕向けたのはお前だろうが。
「今回の罰ゲームは、え〜っとねぇ…、あっ、そうだ!普段言わない相手に思っていることを一つ言うこととかどう?あとはねぇ、相手の質問1つに正直に答えることとかよさそうね!」
こいつとゲームをすると大概罰ゲームというオプションが付いてくる。
この前の罰ゲームなんかコンビニでコロコロコミックスを読みながら「ドラえも〜ん」って叫ぶだったかな?
あの時はマジでいやだったなぁ〜
「今回の罰ゲームやけに軽いな。ちょっと意外だったぞ?」
「キャンプ前日に疲れるようなことをさせる鬼に見える?」
こちらを非難がましい視線で射抜いているけど、このゲーム自体鬼みたいなゲームじゃないか?
「ノーコメントだ」
「あっ、そうか、アキラはドMだから、少しくらいひどい思いするくらいがうれしいんだっけ?」
「それはお前がさっき勘で適当に言ってただけだけだからな!当たってないからな!!」
あれそうだっけ?とか言いながら首をかしげるけど、たしかにチョット可愛いかもとか思ったけど。
その表情の裏では悪意が渦巻いているのが見え隠れしてすごい怖いですよ。
そんなことを考えていた俺を放置してハルが準備を始めた。
◆
学校でマリに言われたのはかなり衝撃だった。
アキラと付き合ってるか?ッて言う質問だ。
答えはNOなんだけど、アタシは言った後、その答えがすごく嫌で認めたくなかった。
よく考えたら、ずっと一緒にいるけど、彼氏彼女の関係では全く無いのよね。
アタシは…アタシは…アキラをどう思ってんだろ?
そう思って、マリに聞いたら
「アキ君が他の女子としゃべってるのみたらすごい睨んでるよ?それって嫉妬じゃないの?」
言われてみればそうだったんだ。アキラが他の女子としゃべるとすごく嫌な気分になるし、アキラとしゃべったり遊んでるときはすごくうれしくて楽しい。
アタシは……アキラを好き。
最近自覚したばっかりの感情。
けど、話を聞いていたらユキもアキラを好きなんだって、それも、アタシが自分の気持ちを自覚する前から。
そんな最近気づいたような気持ちでユキに勝てるわけ無いと思ったんだけど、マリは
「大丈夫。気づかないだけでずっと思ってた気持ちに嘘なんて無いよ。恋ってね、早い者勝ちなの。自分の気持ちを早く相手に伝えるの。その勇気がある人が勝つんだから、がんばりなさいよ」
マリはそういうとすっごく可愛い顔で微笑んでくれた。多分これはアタシへのエールの笑顔だと思ったの。
マリの励ましに応えたいし、アキラを誰にも譲りたくない。
だから今回の作戦を実行することを決めたんだ。
◆
ハルが着々と準備を続ける中、俺は呆然と立ち尽くしていた・・・・座ってたけど。
さすがに、夏にコタツを見ることになるとは思わなかったよ。
「水分補給したらゲーム開始ね。敗北条件はさっきも言ったけど涼しくなることをすることね!」
なんでこんな勝負を受けてしまったんだろうなぁ。
今すぐチョット時間を巻き戻して勝負を受けた瞬間の自分を力いっぱい蹴り飛ばしてやりたい。
向かいに座ったハルは嬉々として楽しそうにしているんだけど、こっちは全然気分が乗らない。
窓を閉め切ってコタツにin、全然楽しくない!
「ほら、コタツに入りなさいよ、ゲームを始められないじゃない」
もたもたしてる俺に催促をかましているハルだが、そのハルもまだコタツに入ってなかった。
「お前も入ってないじゃん。人の事言えないだろ」
きょとんとした表情を見せたかと思うとおもむろに口を開いて
「先に入ったほうが不利でしょ?だから、アキラが先に入るのよ」
はい?
俺が不利な条件で始めるってことですかい?
「自己中な奴」
溜息とともにそんな言葉くれてやった
「なんか言った?」
笑顔で言ってきた。
全然目が笑ってないですよ?
めちゃくちゃ怖いんですけど。
「わかったよ。入ればいいんだろ、入れば」
もーどーでもいいやー
そんなこんなでゲームは開始された。
◆
アタシは散々アキラを引っ張りまわしてきたし、わがままもずっと言ってきた。
そんなアタシをアキラはどう思ってんだろ?
ほんとはめちゃくちゃ怖い
作戦通りにことが運んでも最後の最後が一番怖い
それでも、アタシはこの作戦を遂行しなければいけないんだ
そうしないと、アタシは前にも進めない
立ち止まるなんてあたしのプライドが許さないしね
◆
くだらないゲームが始まって30分経過。
俺もハルも余裕の表情だ。
変化といったらじわじわと汗かいてきたくらいなんだけど
「なんでこんなゲームをはじめたわけ?」
ずっと疑問に思ってたことを聞いてみた。
まぁ、応えてくれるなんて小指の皮ほども期待してないけどな
ハルは目をそらしながら、小さい声だけどちゃんと応えてくれた。
「・・・・・・・・・・・なんとなく」
せめて「暇つぶし」くらいの理由はほしかったよ俺としては。
参加をするって言ってしまった以上、やる以外の選択肢は残されていないんだけどやっぱりモチベーションとかあるじゃん。
いつもは、いきなり押しかけて冷房をかけろだの言って人の漫画をあさって、夜になると晩御飯をむさぼって帰るって言うのが、「罰ゲームつきゲーム」する以外のお前の行動だろう
今日はそっちのほうが俺としてはうれしかったぞ。
まったく、明日キャンプってのが分かってんのか?
運動神経は良いくせに体力はあんまりないだろお前。
「あのさ、明日キャンプだけど、お前だいじょうぶなのか?今日くらいのんびりしておいたほうが言いと思うぞ?」
俺は目の前の幼馴染を心配していた。
「そんな事言って、アタシが負けるように仕向ける作戦でしょ!そんなものに引っかからないわよ!」
騙されないわよ、とか言いながらそっぽを向いてしまった。
「…明日バテても知らないからな」
こっちの気も知らないで。全く、ゲームを始めたらそれしか目にはいってないんだよな、いつも。
そして、お互いに沈黙。
向かいって座ってるから、前を向いていたら自然とハルの姿が目に入る。
ひさしぶりに、じっくりハルの姿を見たけど整った顔に、つやつやの髪。
そりゃあファンクラブも出来るだろうなって言う納得のいく容姿をしてる。
そんなことを考えていて思い出した。
「そういえば、隣のクラスの石田からこの前告られてあっさりフッタらしいな?」
予想外の質問だったみたいで、ハルは少し驚いたような表情をしていた。
「確かにそうよ?それがどうかした?」
うっすらと額に汗を浮かばせながらハルが応えた。
「石田は真面目だし、頭良いし、格好も良いし、気さくないい奴だしもったいないなと思ってな」
「好きでもない奴と付き合うような趣味がないだけよ」
「ハルくらい可愛かったら男なんて選びたい放題だろ?それに、告ッたら確実にOKされそうだけどな」
ハルはボンッと顔が真っ赤になってしまった。
「べ、べつにそんなことないわよ!そ、そんな事言ってアタシを動揺させる作戦でしょ!」
あ〜、なんか普段と全然違う反応で結構可愛いと感じた俺は変態ですかね?
見た目とはちがって結構シャイだったんだな。ずっと一緒にいたけど知らなかったな。
ハルが誰かと付き合うかぁ〜、どんな感じなんだろうな。
まぁ、いつもみたいに「一緒に登校してカバンもって!」とか玄関で待ち伏せしていわれたりしないだろうし、「新しい創作料理作ったから毒見しなさい!」とかいって急に料理を持って現れたりしないだろうし、
今みたいにいきなりうちに来て「ゲームするわよ!」とか「マンガ貸しなさい!」とかもないんだろうな。
……ハルが他の男とくっつくのを想像して少し寂しい気持ちになってしまった。
ありえねぇとかじゃなくて、なんで寂しくなったんだろ?
今まで一緒に成長してきて、ハルの隣と言う俺のポジションがなくなるって言うのを知らない誰かに取られるっていうのが寂しい原因かな?
たぶん、気のせいだ。そう思うことにした。
「ま、好きな奴が出来たら付き合えるように応援してやるよ」
そうだ、幼馴染はきちんと後押しとか支えたりしてやらないといけないんだ。
みんないつか巣立って行くんだから笑顔で後悔の無いように一生懸命送り出してやらないといけないんだから。
そう思わないと、ハルが居なくなるとか寂しすぎるから。
あぁ〜なんか自分が変だ!おかしい!こんなこと考えるキャラじゃないのに!!ハルが誰かと付き合うだけなのに!しかも想像だけなのに!!ありえねぇ!!!
そんな感じで頭の中が混乱でパニックっていたらハルがボソッと呟いた。
「……別に、応援とかいらないから」
急に悲しそうな表情になったかと思うとうつむいてしまった。
◆
ほんとにアキラはバカだ。
こんなに近くに居て分かってくれないなんてありえない。
そんな事言っても、アタシもアキラが考えてる肝心なことがいつも分からない。
アタシはもっと、アキラのことを知りたい。
もっともっと、仲良くなりたい。
ずっとそばにいたい。
他の誰かじゃなくて、アタシがアキラの隣を歩いていきたいんだ。
◆
ゲーム開始から1時間半が経過した。
さすがにきつくなってきた。
今更ながら、夏にコタツに入りながら漫画を読みふけるっていったい何処の生活ですか?
ドMですか?それとも季節に対する反抗期ですか?
あれから、ハルとたわいも無い会話を続けていたんだけどさすがにネタが尽きてきた。
まぁ、結構な時間を同じ空間で過ごしてきただけに話題なんてものはあらかた使い果たしていて新しい話題なんてもの無いに等しいし。
「ねぇ…」
ハルから声をかけられ、読んでいた漫画をコタツの上において顔を上げた。
「アキラは告白されたりしないの?」
はい?
いきなり何を言いだすんだこのお嬢さんは。
「ないよそんなの。ハルとちがって平々凡々な顔立ちしていて、性格も普通、運動も普通、頭にいたっては平均より少し下っていう奴誰が相手にするかよ」
俺はモテ無いんだよ。と付け足してまた漫画に意識を戻した。
俺はもてない。なぜか女子から話しかけられることも少ないと言う高校2年生だ。
あんまり暗い印象とか与えてないはずなんだけどなぁ〜。
改めて言われるとグサっと胸になにか鋭いものが刺さる気がするぜ。今夜は枕がナミダで濡れそうだ。
「ふ〜ん、あっそう」
特に興味も無いよと自分も漫画を読み出すハル。
興味が無いなら傷をえぐるようなことはしないでください。
そう思っていたら、急に顔を上げて
「別に傷をえぐろうとか思ってやってないからね?」
やっぱりおまえすごいよ!! なんで思ったこと読めるんだよ!!
とか突っ込んだら、またひどいコといわれるんだよなぁ〜
「ちゃんと分かってるじゃない!チョットは進歩したってことよね、お姉さんはうれしいよ〜!」
笑顔でそんなコというあんた何者ですか!?
「それ絶対勘なんかじゃない!絶対読心術だ!!!いつ習得したんだよ!!」
結局突っ込んでしまう俺。なさけない。
しかも完璧無視でいつのまにやらマンガを読んでいた。
まったく俺っていったいどんな扱いだよ。
はぁ、あきらめて自分も漫画を読もうとしたらいつのまにやら顔を上げているハルに声をかけられた。
いったいお前はタイミング悪いと言うかなんと言うか見事な感じで俺のペースを乱すよね。
「アタシはアキラのこと良く見てるけど、アキラは自分で思ってるほど悪くは無いと思うんだけどね〜。もしかしたらアキラ以外の別の要因があるんじゃないかしら?変な女にバリアーはられてるとか?」
とりあえずモテ無いってかわいそうよねぇ〜と笑顔で付け足してきた。
抉れていた傷口に塩を投げつけられ、さらに褒められたと思ったら何か不吉なことを言われ……かわいそうな俺
寝る前に水分補給して思う存分枕にはタオル代わりになってもらおう。
◆
アタシの努力の甲斐あって変な虫は今のところ、追い払うことに成功している。
といっても、勝手にアタシとアキラが付き合ってるっていう勘違いで近づいてこないだけとも言うけど。
それでアタシにとってはありがたいことだ。
まぁ、実際付き合ってないから気が気ではないんだけどね。
とにかく、アタシは誰にも譲る気なんてさらさら無いってこと。
◆
ゲーム開始から2時間経過。
そろそろ真面目にきつい感じだ。
ハルなんて顔を赤くしてかなりやばそうだ。
今回のゲームは勝てそうだな。
「そろそろギブアップしたらどうだ?かなりつらそうだぞ?」
「誰が、アキラなんかに負けるもんですか…こ、これくらいなんともないわよ」
全然なんとも無い様には見えないんだけどな。
「そういえば、ハルお前暑いの苦手だろ?なんでこのゲームを選んだんだよ?」
「思い付いたんだからしかたないじゃない、それに、どのゲームでもアタシがアキラなんかに負けるわけ無いでしょ?」
そんな真っ赤なで肩で息をしてる明らかに辛いですって言う様子で言われても全く説得力無いけどな。
こっちも結構きついんだけどハルに比べたらまだまだ大丈夫だ。
実際俺はそれほど暑いのが苦手じゃなかったりするしな。
午後1時過ぎにゲームを開始して2時間経過して、今の時間は午後3時。
アイスクリームとかめちゃくちゃ食いたいなぁ。
そんなことを考えていたら、ハルのほうからぶつぶつと独り言のようなものが聞こえてきた。
「……………ばか……ってどうすんのよ……」
一人自分の世界に浸ってるって言う感じだ。
こっちのことは完全無視、かろうじて聞けた部分じゃ全く内容まで分からないけど、たぶん俺の悪口だな。
ハルは自分の分が悪くなると俺を罵倒するって言う必殺技をもってるから、多分それを小声で実行に移してるんだろう。
それにしても、負けそうだからって悪口言うなんてなんだかんだ言っても小学校から全く変わってないよな。
そんなだから俺もずっと一緒にいることが出来るんだけど。
たぶん俺はこのままずっと一緒に居たいんだと思うんだ。
それが俺の素直な気持ち、小学校から疑わなかった、いつまでも一緒にいると信じてた。
けど、もう俺もハルも高校生だ。
一緒にいられる時間がもうあと少しくらいしかないと俺は思ってる。
ハルにも好きな人が出来て、その人と付き合って俺から離れてく、さっき想像してそっから今までずっと考えてた。
たぶん、それが現実に変わるのも時間の問題、だからこそ今を精一杯ハルと楽しく過ごそう。
そう結論が出たのがついさっきだ。
ハルがどう思おうと俺は今を楽しみたい。できれば、一緒にこれからも歩いていきたい。
まぁ、たぶんこれが今日負けてしまったときに言わなきゃいけない恥ずかしい言葉なんだけどね。
だからこそ負けられないよな。
この気持ちをハルに気づかれないように、ハルが変な気遣いをしないように、ハルと俺がこのままの距離を保てるように、時が来るまで隣を歩けるようにするために負けられない。
そんなことを考えていたら目の前からゴンっていう音がした。
「おい、ハル?何のまね?」
目の前でハルがコタツに頭を打ち付けてうつぶせていた。
それから全然動こうとしない。
「おい、どうした?!」
さすがに、様子がおかしいから急いで駆け寄って、ハルの体を抱え起こした。
「おい!だいじょぶか?!」
「…なにしてんのよ?・・・まだゲームの途中でしょ?負けになるわよ?」
弱弱しくしゃべってはいるけど、意識ははっきりしてるみたいだ。
すこしほっとしたけど、ハルの体はびっくりするくらい熱を持っていた、それになぜか泣いていた。
「おい!こんなになるまでゲームにこだわることないだろ!ていうか、何で泣いてんだよ?」
「だって、……ギブアップが出来なかったんだもん……思い道理に…いかないんだもん」
そういうと、ハルは本格的に泣き出してしまった。
◆
もうだめだ。
目の前がふらふらする。
ちょっと無理しすぎたみたい。
何度もギブアップしようとしたけど、アタシの無駄に高いプライドのせいで負けを認められない。
アタシはバカだ、勝ってどうすんのよ…
負けて、罰ゲームとしてアキラに今まで好きだったって言うつもりだったのに…
あ〜もう泣きたい。
泣きたいよ…
◆
ハルをなだめながらダッシュでコタツの電源を切り、エアコンのスイッチをオン、もちろんめちゃくちゃ効くように温度をかなり下げておいた。
まったく、無理ばっかりしやがって、心配するこっちの気持ちも考えろよ!
とか、思ったけどやっぱりそんなこと言うのが恥ずかしいせいで、言葉に出来なかった。というか、今のハルの状態を見ると何もいえない。
よく考えてみれば少しおかしかった気がするしな。
いつもどおり部屋に入ってきたのは良いけど、いきなりゲーム宣言なんて今まで一度も無かったし、ゲームで負けそうだからって泣きだすなんてありえない。
いつもそばにいるはずなのに、ハルの変化に気づけなかったっていうのが一番悔しかった。
部屋の温度がさがってくるのにあわせて、ハルの異常だった体温も下がり始めたみたいでほっとした。
一応、母さんにみてもらったけど、
「バカなことしてるねぇ〜、脱水症状と熱中症になりかけただけだよ。多分大丈夫だからしっかり休んどきなさい。」
だとさ。
まったく、心配かけやがって…でも、大事ならなくて本当に良かった。
「ごめんね、なんか頭の中ふわふわってしてきて、目の前真っ白いなって、気づいたらあんなふうになっちゃったみたい…」
申し訳なさそうに扇風機の前で風に当たり体を冷やして、母さんにもらった棒アイスを頬張りながらハルが呟いていた。
「べつにいいよ、気にしてないし」
そういいながら、ハルのほうを見てみると、ハルがすこし顔を赤くしながらこっちを向いていた。
しかも、すこしもじもじと言うんだろうか?今までとは見たことのない感じの様子で。
なんといいますか? 女の子らしい? アニメとかドラマで見る告白前のシーン? そんな感じの様子だ。
「あ、あのさ……、いままで、いっぱいアキラのこと振り回してきちゃったし、今日もなんかすんごい迷惑かけたみたいだしさ、
その、もしかしたらアキラにとってアタシは迷惑な奴だったりする?」
すんごく、もじもじしながら予想もしてないことを聞かれてしまった。
確かに迷惑な奴だ。
けど、それがイヤなんて思ってないし、ハルが俺に迷惑かけてるなんていつものことでもう何にも思っちゃいないんだけど。
あ、そうか! これば罰ゲームの一つか! 質問に正直に答えるだっけか?
「えっと、一応俺の負けだし、罰ゲームのひとつの『質問に正直に答える』のほうの罰ゲームとして答えるよ」
ハルは、一度目をきゅっと閉じて、覚悟を決めたように目をしっかりと開いた。
「たしかに、ハルの行動はいきなりで振り回されるし、結構迷惑って感じることも多いよ」
俺の言葉を聞いたハルは、目を伏せて泣き出しそうになっていた。
「やっぱりそうだよね。それじゃあ、嫌われたって仕方ないよね……」
そういうとハルは、必死に涙をこらえていたけど、我慢できなくなったみたいで泣き顔を俺に見せないようにそっぽを向いてしまった。
◆
やっぱりアタシは迷惑…
自己嫌悪の渦が自分の中で渦巻いて、訳が分からなくなって涙がこぼれた。
アタシの無駄に大きいプライドがその泣き顔を見せないようにアキラから視線をそらす。
アタシは嫌われて当然、嫌われてないほうが変だ。
今までずっと、アキラも一緒に楽しいんだと思い込んでた。
けど違った。
アキラにとって迷惑だって…
あ〜、もうやだ。
そんな思いがアタシを支配していた。
そんなときアキラが口を開いた。
「なんでそこで、嫌われたってなるんだ?嫌いになってんならとっくになってるよ」
それはもう見事としか言いようのない笑顔で。
アタシはその笑顔に何度も魅了される。
これからもこの笑顔を近くで見ていたい。
それに、アキラはアタシのこと嫌いじゃないって言ってくれた。
それがうれしくてアタシは…アタシは…
◆
俺が嫌ってない旨を伝えると、ハルは顔を上げてびっくりしたような表情をしていた。
その表情が笑顔に変わってすごくうれしそうな表情になっていった。
そして、なぜか食べていたアイスをうれしそうに俺の口に突っ込みやがった。
まったく、今回のハルの行動は良く分からない。
いつもすぐ泣くような奴じゃないのに今日は2回も泣いたみたいだし。
まぁ、情緒不安定なときって誰にでもあるよな?
それに、不安定なときに他の誰かじゃなくて俺のところに来てくれたのが素直にうれしかったりするのだ。
俺は『幼馴染』っていう特権を使ってハルのそばに居れる。
今はそれだけで十分だ。
ハルは、どう思ってるかわからないけどな。
「アキラ、嫌わないでくれてありがと。そのアイスは感謝の気持ちよ!」
ハルは、顔を真っ赤にしながら飛びっきりのの笑顔を俺にくれた。
そう、これで十分だ。
この笑顔も今は俺だけが見れる特別な笑顔。
他の誰でもない俺に向けられている笑顔。
それでいい。
それで満たされてる。
まったく、俺って単純だよな。この笑顔にいつまでも魅了されていたいなんて思ってしまうなんて。
さっきは離れていってしまうけど仕方ないって思ってたのに、それをいつまでも俺に、俺だけに向けてほしいって思ってしまうなんて。
しかたない言ってやるか、これも罰ゲームの一つだからな。
「ハルは泣いてる顔よりも、今みたいに笑ってるのが一番似合うし、その笑顔が好きだよ」
言ってしまった。
言ってしまったぜこのやろー!
恥ずかしくて顔から火が出そうだ!
しかも、ハルが真っ赤な顔をしているが無反応!
ヤバイ!なんかすべった感がマックスだ!
真っ赤になったハルが何かを言おうと口を開いたみたいだけど、これは何かいわないといけない気がする!
このままじゃ俺は、ただの恥ずかしい野郎だ!
「あ、あたし「そ、そのあれだ!いつも元気なのが一番ってことだ!!」
思いっきりハルが言おうとした言葉にかぶせて、はずかしさのあまり意味不明なことを口走ってしまった。
◆
これは……夢?
今アキラから夢にまで見た言葉…アキラから『好き』って言葉を聞いてしまった。
聞いちゃった!
ありえない!ありえないよ〜!
うれしはずかしとはこのことだ!見たいな感じだよぉ!
よし!勇気を出してアタシも言おう!
そのために今日はアキラのところへきたんだ!
「あ、あたし…」
アタシがしゃべれたのはここまで、後はアキラの意味不明な言葉によってかき消された。
あまりに突然で意味不明で、頭の中真っ白になって
その空白の時間のお陰で気が付いた。
アキラはアタシを励まそうとして、『笑顔』が好きだって言ったんだ。
アタシじゃなくて、『笑顔』。
うん、今はそれでいいや。
いつかアタシを好きになってもらおう!
自分からは告白できないけど、アキラからしてもらえば全く問題ないじゃない!
さっきまで焦っていた自分がとてもおかしく思えてきた。
プライドとか邪魔してまともに返事が出来ないかもしれないけど、それでもがんばって返事をする!
がんばって、アキラに好きになってもらう!
明日からもアキラの隣をいつもどおりのアタシで一緒に歩いていきたい!っていうか歩けばいいんだ!
そう思えるだけで今日ここへ来た甲斐があったというものだ。
まだ、あたふた何か意味不明なことを口走ってるアキラに、精一杯の感謝と好きだといってくれた笑顔を、今アタシが出来る精一杯の笑顔で伝えよう。
◆
恥ずかしさのあまり軽くパニックになっていた俺に、ハルが話しかけてきた。
もしかして意味不明なことを言ってしまった俺への口撃か?
もしそれなら、俺の心は蜂の巣にされてしまうだろう。
ハルの毒舌は核兵器バリの威力を俺に対し持ってるんだ!
口撃が来る前に心の準備をしなくては、被害が広がってしまう!えぐられて塩を塗られた傷口はまだ癒えてないんだ!
そうこうしてるうちに、ハルは思いがけない言葉をくれた
「アキラ、ありがと」
それも、飛び切りの笑顔で。
その笑顔で、言葉から伝わる感謝の気持ちで、パニックになってた心が収まってきた。
うん、やっぱりハルには笑顔が一番だ。
結局はその結論にたどり着いてしまう。
俺にとってはハルが一番なんだと実感してしまうこの瞬間。
実はその瞬間が一番好きだったりするわけで。
気づかなかっただけで、ずっとまえからハルが好きだったわけで。
まぁ、面と向かってありがとうなんていわれたのは久しぶりで、照れてしまうけど、ハルの感謝の気持ちは俺が受け止めよう。
「べつに、たいしたことじゃないよ」
照れてしまって横を向いてしまったけど、それでもきちんと受け止めたつもりだ。
気づいてしまった気持ちを、いつか、いつか、打ち明けよう。
さぁ、恥ずかしい話はここまでだ!
「ハル、いきなりだけどまだ明日の準備できないだろ?さっさとやるぞ!明日の朝とか言ってたけどそんなんじゃ絶対に間に合わないからな」
俺は立ち上がりながらハルに話しかけた。
「アキラがそんなにアタシの為に明日の準備をしたいって言うんなら今からしてあげても良いわよ?」
すっごい、意地悪そうな笑顔で俺に言ってくる。
たしかに、俺は便利な幼馴染かもしれないけど、それはそうしないと俺が、後々めんどくさいことに巻き込まれるって言うのが分かっているからだ。
決して、惚れた弱みとかそんなんじゃない!…と思いたい。
とにかく、明日のハルと一緒に行くキャンプはかなり楽しみってことで。
明日も、明後日も、これからずっとハルの隣を歩けたら良いなと、ハルがずっと笑顔でいたら良いなと、そう思ったある夏の日でした。
読んでいただいてありがとうございました。
ご意見、感想などがあれば遠慮なしにお願いします。
ありがとうございました。