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貧乏男爵家の長女に転生したのに、何故か男として最強の騎士を目指しています  作者: 赤池宗


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和を乱す者

 広間の者全員が連帯責任となり、集められた。


 申し訳ない気持ちで正座していると、コベルテッドと父であるアンドールが現れた。二人は現場を見てすぐに私が騒動に関わっていると判断する。


「……久しぶりですね。こういう騒動は。もしかして、クロウ君、襲われました?」


 コベルテッドが苦笑いと共にそう聞いてきた為、静かに頷く。すると、皆の目がゴレラに向いた。


 ゴレラは顎を引き、地面に目を向ける。だらだらと冷や汗を掻いているゴレラを横目に、父が深く溜め息を吐いた。


「……コベルテッド騎士団長。実は、クロウは騎士団に入る前にも剣の訓練中、同じようなことがありました。練習相手には腕利きの傭兵などを雇ったりしていたのですが、二人でいるところを襲い掛かろうとする輩などが時折……勿論、鍛えに鍛えていた為、全て返り討ちにしましたが」


 父が嘆くようにそう呟くと、皆が私の顔を見る。何人かの視線が身体に向いているのを感じ、ゾワゾワと背筋が冷たくなった。


 コベルテッドは乾いた笑い声を上げて、父を見る。


「な、成る程、顔が整い過ぎるのも大変ですねぇ……性別関係無くモテてしまうとは……」


 呆れたような感心したような複雑な物言いをするコベルテッド。それに、父が頭を下げて嘆願する。


「不躾ながら、お願いがあります、コベルテッド騎士団長。クロウが複数人と寝場所を同じにすると、また何か事件が起きてしまうかもしれません。騎士団に入団したばかりなのに申し訳ありませんが、クロウを一人部屋か私の部屋で休ませることは出来ませんか」


 と、父が素晴らしい提案をした。なんという良き父だろうか。見直した。


 頭を下げる父の姿に密かに感動していると、コベルテッドは軽く笑いながら頷く。


「良いですよ。ちょうど、百人長が一人第三騎士団に異動になって後任もきていません。個室や一人用のテントを使っても良いでしょう」


「ありがとうございます」


 思ったより簡単に父の願いが聞き入れられた。私も慌てて頭を下げて礼を言う。


 こうして、私は遠征当日の夜からいきなり個室が与えられることになった。シュザールとブラニーからは何故か羨望と同情の二つの眼差しを受けた。


 ちなみに、ゴレラは罰として遠征中は私の荷物を背負うこととなった。どうやら、普段は真面目なベテラン騎士らしく、あまり重い処罰は免除となったようだ。


 ゴレラは上官の百人長に顔面が腫れ上がるまで殴られたが、それは別に処罰ではないらしい。中々判断が難しい。


「……悪かった。俺は、別に男に興味があるわけじゃねぇんだが……いや、何でもない」


 ゴレラは気まずそうにそう言ったっきり、話しかけてこなくなった。


 若干可哀想になったので、保存食を分けてあげた。味の無いビスケットか乾パンのような物だが、ゴレラは照れ笑いを浮かべて受け取っていた。


 その後、二つの町と村、三回の野営を経て、ようやく目的地である北の城塞都市、サンタムルに辿り着いた。


 城塞都市と呼ぶだけあって、街は大きな城壁にグルリと囲われている。高さは三メートルはあるだろうか。石造の頑丈そうな城壁の向こう側にはオレンジ色の屋根が頭を覗かせていた。


 これまで気を使われてから、一度も夜中の警戒役にはならなかった為、体力は十分である。


 この街には美味しい物や綺麗な景色はあるだろうか。


 そんなことを考えながら、私は城塞都市サンタムルの街の中へと足を踏み入れた。


 ふわりと、柑橘系の香りがした。見れば、街の出入り口そばから奥に向かって出店が出ており、果物やパンなどが売られている。


 街の中に入っても隊列は崩されておらず、宿に着くまでは自由に行動出来ない。


 ウズウズしながら進んでいくと、四角い要塞のような建物が現れた。その建物だけが三階建てであり、屋上には人もいるようだった。


「この兵舎が街の中に四箇所あります。アンドール百人長の部隊はこちらを利用してください」


 父と他の二人の百人長がここを利用することになった。一つの建物に三百人弱が宿泊することになる。百人長以上の士官は他の宿だ。


 しかし、それでも全体の半数しか収容することは出来ない。その為、残りの騎士達は何をするのか。


 交代で騎士団としての遠征業務を行うのだ。それも、全て街から数日離れるような行程だ。長いこと行軍した後で、殆ど休めずにまたも遠征となる。


 本当なら宿でちゃんとしたベッドで寝たいだろうが、そういった状態に慣れた第五騎士団の騎士達はテキパキと準備を終え、文句一つ言わずサンタムル周辺地域の遠征に向かった。


 勿論、街に残る者も街の中で騎士団として仕事をする。


 これなら確かに王都を拠点として動く騎士団の方が人気だろうと思った。


 第三騎士団や第四騎士団も遠征はあるようだが、第五騎士団の手が足りない時くらいで殆どは王都周辺の見回りらしい。


 王都のある方角の空を眺めて羨望の念を送りながら、私は宿に入ったのだった。







 第五騎士団に配属されて色々と嘆いたものだが、サンタムル近辺で魔獣を退治したり、パトロールをしたり、一週間の遠征で森の調査をしたりしている内に、私は自らの考えが徐々に変わっていくのを感じていた。


 王都から遠く離れた地において、最も頼りになるのは第一騎士団でも第二騎士団でもなく、実際に助けにきてくれる第五騎士団なのだ。


 そして、第五騎士団もその期待に応えるように素晴らしい働きをする。


 僅か一ヶ月程度の滞在の間に、かなりの魔獣を討伐して近隣の村々の安全を確保した。


 そんなある日、今回の遠征先での最後の依頼が舞い込む。


「大規模な盗賊団が出たそうです。それも人数は数百人ほど。恐らく、前回第四騎士団が取り逃したという盗賊団達で間違いないでしょう」


 コベルテッドにそう言われて、私は緊張から自然と背筋を伸ばす。


 騎士になって初めての人間を相手にした実戦だ。魔獣を相手にするのとはまた違う緊張感である。


 コベルテッドは騎士達を見回し、苦笑混じりに話を続けた。


「第四騎士団が盗賊団を発見したのは森の探索中だったと聞きます。その際、盗賊団を追うために徒歩で森の奥深くまで探索に出向き、なんと、僅か数人の盗賊を討つために十数人の騎士が命を落としました」


 と、困ったようにコベルテッドが口にする。それだけ、盗賊団が手強いという意味だろうか。


 そう思っていた私だったが、コベルテッドは予想外の言葉を口にした。


「今回も、盗賊団は森の奥に逃げ込んだそうです。つまり、敵は有利な場所で罠を張り、準備万全といった状態で待ち構えていることでしょう。なので、今回はある程度まで牽制し盗賊団を奥に追いやったら、そこで作戦は終了とします」


 まるで、盗賊を見逃すような台詞に、私は眉根を寄せた。


 だが、古参の第五騎士団の騎士達は当然のように頷いている。


「……盗賊団を潰さなくて良いのですか?」


 誰かが声を発した。


 父だ。


「潰したいところですが、デメリットが大き過ぎます。その盗賊団を潰したところで、騎士団の遠征での討伐の一つにしかなりません。しかし、こちらは数十人。下手をしたら百人以上の騎士を失うでしょう」


 コベルテッドが残念そうにそう言って首を左右に振り、議論は終わりだと言う様に口を噤んだ。


 それに、父は鼻息も荒く自らの胸を叩いた。


「……団長。私に任せてもらえませんか。盗賊団を打ち倒してみせましょう」


物語の入り方や序章の進め方を失敗してしまった気がしております…

ちょっと一から練り直したいので、休載とさせていただきます。本当に申し訳ありません……


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