殻の中はふわふわ
中に入った感想……最高やん。なんやこれ……。
中はふかふかで、窮屈でも無い。逆に俺にフィットしている感じや。ニオイも全然臭くないし寧ろ何か枯れ草の中に寝転んだ様ないい香りがする。
《擬態成功》
《擬態成功により歩行可能になりました》
〘歩行の説明はいりますか?〙
はい
◇ いいえ
『流石に歩行説明は要らんわ、いいえ……っとほんなら歩いてみよ』
足を動かすイメージで足を前に出してみると……歩けた!!
人間的に……とは程遠いが歩けたことにじーんと感動が胸に広がった……いや、胸ないやんけ!と一人ツッコミしながらゆっくりと遺跡の中を進んだ。
✚✚✚✚
長く古い通路は光蘚のお陰で暗くはなく足元まで明るく照らされていた。だが、暫く進むとさっきまでうじゃうじゃいたリビングロッドが一匹も現れなくなっていることに気が付いた。
『え……これ俺……へんな場所に足ふみいれたんちゃうん……』
引返そうと踵を返したその時、ドスンッと何かが落ちるような音と共に地面がぐらりと揺らめいた。
『で、でかっ!! なにあれ…』
通路いっぱいに黒い丸い物があった……というより落ちてきた?遺跡の天井に穴が空いているのが見える。
落ちた衝撃で光蘚が空中に舞い上がりキラキラと空気を煌かせていた。
《緊急事態発生!!玉蟲が現れました》
急にステータスボードの色が赤に変わり警告音が鳴り響いた。
『玉蟲!?』
ステータスボードの説明を見てみた。
〘【玉蟲】別名鐵蟲と言われとても硬い殻を持つ最古の蟲。殻は火や水にも強いため敵無しとも言われる。基本的に個体で生息する蟲。性格は温厚だが、一度怒らせると相手を殲滅するまで止まらない。主食はリビングロッド〙
『リビング……ロッドが主食……今俺の見た目は?』
リビングロッドやんけ!! やばいっと玉蟲からそっと離れようとした時だった。ん……? なんやあれ?
玉蟲のすぐ近くに何かが小さい毛玉が落ちていた。
ズームしてみてみると、何やら獣の子供のようだった。足を怪我しているのだろう血を流し震えていた。
あの玉蟲が動けばおそらくあそこにいる獣は押しつぶされてしまうだろう。
だがそれも仕方がないこと……っ
『っ……!!! くそぉ……見てもうたらむりや!』
勇太は獣の子供の所まで急いだ。みつからんといてくれ……
やっと玉蟲の横まで着くと怪我をした獣も見下ろした。恐怖で毛がさかだっている。そっと腕を伸ばしたらリビングロッドの手に当たる場所を噛みちぎられた。
『こわくない……っとかゆうかぼけぇ!!!』
獣の頭に拳を握りしめゲンコツを食らわせた。
まさか殴られると思っていなかったのかその獣はポカンと勇太を見上げた。
呆けてるそいつの首根っこをつかみ急いでその場からはなれようとしたが、運が悪いことに玉蟲が動き出した。
『やべぇ……この足じゃあ早く逃げれねぇ……』
『ぁ…あの…』
『!!!?』
自分以外の声が頭に響いた。