転生ってさぁ……
俺の名前は阪口勇太どこにでも居る様な平凡な容姿に特に頭が言いわけでもないスポーツもそこそこに出来るが飛び出て上手いわけでもない。そう……いたって平均的なザ・普通男子だ。
いつも通りに家を出て学校にいって、馬鹿な話をしながら友達と盛り上がり、いつも通りに家に家に帰る。いつものルーティーンのまま……そのまま俺は生きていくんだと思ってたんだ。
そう今日までは……。
放課後いつも通りに友達たちと学校をでて車通りの多い道に差し掛かったとこで、足を留めた佐久間をみんなが振り返った。
「あっ……やばいわぁ……どないしよ……」
佐久間は鞄を開けてゴソゴソと何かを探していた。
「どしたん? さっくん」
さっくんとは佐久間のあだ名である。勇太がそう問いかけると
「ちゃうねん……さっきさぁ、3組の担任のたぼーに呼ばて手伝いさせられたやろ? そん時にスマホを理科室に忘れたねん。あー、取りに帰ってくるわグッチら先帰っとって」
あーおけーとみんなが佐久間と別れ比較的大きな交差点に差し掛かった時だった。
ファ〜!! と大きな音が聞こえ、音の鳴る方向を見た瞬間……俺たちの身体は宙に浮いていた。俺たちは大きなトラックに跳ね飛ばされていたのだ。
周りで悲鳴が上がっていた気がする。気がするって言うのははっきりとした記憶では無いからだった。何故か痛みもなくただ眼の前の状況が嫌にゆっくりと見えた。
あー、おれ死んだ……。その言葉が心にストンとハマりしっくりと来た。
―――――そういや……皆は大丈夫だったんかなぁ……死んだの俺だけだったらえぇのになぁ……
勇太は考えていたがもう思考もハッキリとしなかった。意識がだんだんと真っ暗な空間に落ちていくのを勇太は感じ目を閉じた。
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はっ! 周りを見渡した……なんや……ここ。
俺生きてる……? いやこんなカラフルな所知らんし。
周りの景色は見たことのないカラフルな木が生えで空の色も目が痛くなるようなピンク色をしていた。
だれかおらへんの? と周りを見渡すと自分がいる場所の少し先にでっかい蟹がおる……にしてもでかい蟹やなぁ生きてんのか? と気になって近付いてちょんと触ってみた。
「私に許可なくさわるな!」
え? と声にキョロキョロしていると、
「私だ! 下を見ろ!」
さっきのでかい蟹が喋っとる? 夢? いや俺死んでるから、これ異世界転生てやつ?
「なぁ……おれにゆうてんやんな?」
と指を顔に向けると、
「お前に言ってるに決まってんだろ! ごほん……驚くなよ私は……神だ! 」
何故か蟹はジャーンと胸を張りポーズを決めてる…。
勇太はぽかんと口を開けていたが我に返り吹き出した。
「ぶっ……は?? えっ……神って……おまえ蟹やんっ!!」
か……かにが……神っ……とゲラゲラと腹を抱えて笑う勇太に、
「わーらーうーなぁ!!」
蟹もとい神はその体を真っ赤にして怒っている……。
「わ……わるっ……ぶふ……」
必死に蟹が地団駄踏んでいるのが面白くて、笑いが止まらない勇太に神は怒りが収まらず、
「私はおまえの転生先を司るものだ。だが私はもう怒った。おまえの転生先をランダム設定に変えた。運良くいい場所に転生できればいいのぉ。じゃあな」
神は淡々と無情な言葉を勇太に投げかけたのだった。
……!?
その言葉を聞き勇太は顔色を変えた。
「へっ? や……ちょっちょっと待って下さいぃ! 笑ってごめんなさい! そこはきちんと決めてぇ」
勇太の懇願の叫びも虚しくガラガラと足元が崩れ、その中に勇太は吸い込まれていったのだった。
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う……な……なんや? なんかめっちゃ体の自由が……真っ暗で何も見えへん。ここどこー!!?
勇太心の叫びはだれに聞こえることもなかった。何故なら……勇太は種に転生してしまったからだった。
〘え? 人ではない? 仕方ないんですよーランダムなんで。では、勇太にお返しします〙
ほんま何なんや! あっの蟹……次あったら絶対に茹で蟹にして食ったる。覚えとけよボケがぁ……
ってゆうてもなんか息苦しいわけでもないんよなぁ……何処かしっとりした場所に埋まってるような……。
あ、あれ? なんかお腹空いてるのにどうやったら飯食えんだろ……ちょっと身をよじってみよ……うっりゃ!
その瞬間に眼の前にある物が現れた。
ある。え? なにがって? ステータスボードだ。どう言う理屈かは分からないが……。異世界に転生したからか?
ステータスボードにはこう書かれていた。
【種族】 種《?》
【HP】 13
【吸収力】 4
【防御力】 50
【攻撃力】 0
【変化】 なし
【レベル】 1
【経験値】 2
【スキル】 吸引
《周りの状況を確認しますか?》
◇ はい
いいえ
とりあえず、はいにしてみると。
《根っこが周りの土の栄養をグイグイと吸い取っている》という状況がわかった。
『あ……ちょっ……おれにもそれ欲しいのに。どうやるんだ? 』
スキル吸引をつかえばいいのか?
とりあえず吸うイメージをしてみた。すると自分の体全体に何かが流れ混んできたのがわかった。
『なんやこれ……うっまー!』
染み込むように入ってきてる液体は俺にとって極上の搾りたてジュースの様に感じた。ゴクゴクと飲んでいるとステータスボードのアラートが鳴り響いた。
吸収が経験値になったのかレベルが1上がった。
レベルが上がった為なのかステータスボードにまた選択肢があらわれた。
《周りの状況を目視しますか?尚以後ON.OFFの切り替えが出来るようになりました》
◇ ON
OFF
迷わずONにした。おぉ! 周りが見えるやん……って土ばっかやんけっ!
まぁいま埋まってることが分かったからええか。
その時だった!
《緊急事態発生!!》
な、なんや……? ビーッビーッと警報音がなっている。
その時だった。俺の周りの圧迫感が無くなり陽の光に俺は照らされた。
『え? そと? 』
ガリガリガリっという音がきこえる。
《ツェルラット接近中!》
ツェルラット……? なんだそれ。説明のアイコンがステータスボードにあったので選択してみた。
【ツェルラット〈ラット属〉大きな耳に長細い口が特徴。黒毛で背中に一本白い線がある。身体に毒苔を共生させており、夜になれば苔が白色に発光するため別名ヒカリネズミとも言われる。性格は温厚。木の実を潰せる握力を持ち鋭い爪で木を登る。土の中にある種も好物】
種!? や……やばくないか?
ツェルラットの長い鼻が俺の表面の匂いを嗅ぐように近づいた。
ふっふっと息がかかりぺろりと舐められた。
その瞬間おれはもう既に奴の口の中に居た。
『うわぁ……もう……転生して何分? 俺エンドなん……? 』
ツェルラットに多分飲み込まれたのだろう。粘膜の中を通り過ぎ胃の中らしき場所に落ちた。
《酸性の液体に曝されています。酸を吸収しますか? 》
◇ はい
いいえ
とりあえず《はい》を選択してみた。
勇太はスキルを使い酸を吸収した……あっ……これサイダーやん。うまっ!
《表皮が酸により溶けました。修復は不可。吸収により酸性の液体生成可能になりました》
ステータスボードのスキルに追加の文言が現れた。
『酸性の液体生成って…俺種やしなぁ、あっ……でも敵から食べられたりはしなくなるかもしれへんな! 』
〘勇太はどこまでもポジティブのようだ〙
酸性の耐性はないらしく、表面はボロボロになっている。早いとここっから出ないとあかんよなぁ……と考えていると
勇太の上から何かが降ってきた。どうやらツェルラットが何か食べたみたいだ。
『なんや? これ……』
ステータスボードで調べてみた。
《モモチの実:ネバネバした果実。酸性に強い皮で覆われている》
!!?
この実の中に入ったらもしかしたらウンコとなって出れるんじゃ…
実の中に入る……吸収のスキルを上手く使えばもしかしたら……。
モモチの実を吸収してみた。その途中に吸収を解除し、実の中に入り込んでみた。上手く行った様で入った途端に皮が閉じて俺はモモチの実の中に入り込む事に成功した。モモチの実は異種植物が入ることで粘りが増して排出された後に種子を残しやすくなる特徴があった。
《モモチの実に共生》
『は? なんか出た……共生? なんやそれ……』
〘勇太は馬鹿なので説明しよう。共生とは異種の生物が相手の足りない点を補い合いながら生活する現象である〙【一部wiki参照】
『まぁ……いっか。とりあえず外に出るまで寝とこ』
ステータスボードを消し視界をオフにしてそのまま勇太は寝てしまったのだった。