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乞食豚回顧録  作者: 早漏軒 法渓珍法老師
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その6 ~悪臭テロ

8月上旬のある日の事だった。

及川と同じ階に収容されていた別の死刑確定者の刑が執行されたのだ。


その者は三河地区で連続して強盗殺人や強盗、脅迫などの凶悪な事件を起こして6年前に刑が確定していたのだ。

確定してから今日までひたすら贖罪と相手への冥福を祈り続け、出房と言われた時はある意味悟りを開いたかのような態度だったようだ。


2人の刑務官に両脇を囲まれ、執行設備が有ると思われる地下へエレベーターに乗せられて降りて行った。


及川は相変わらず大量の汗を垂れ流しながらトドのように寝そべっていた。

この日に刑が執行された者のような贖罪の気持ちは及川には微塵も無かった。


そして娑婆ではテレビではテロップ、ラジオでは割り込みのニュースで刑が執行されたと速報で伝える。

そこからSNSや掲示板では誰が執行されたかを予測する書き込みなどがチラホラ見かけ、午前11時頃に法務大臣が被執行者の名前や経緯等を伝える会見が行われるのが最近の習わしである。


拘置所に入った時はどうしようも無いワルが執行時には別人のようになっていたのは希にあるようだ。そんな人を刑の執行をする立場になる刑務官達も辛いのだ。

中には涙してしまい、執行に関わった職員に手渡される手当を全額寺に持ち込んで供養してもらう職員も居る程だ。


だが及川は職員からの印象は最悪だ。口癖のように文句は言う、嘘デタラメは言う、風呂や運動を拒否り続けて悪臭で房内に入ると懲役の人も嘔吐してしまう程のバイオテロ等々、反省の色すら見せないからだ。


懲役の人が刑務官に「あの死刑囚の房には入りたくない。入れ言うならガスマスク用意してくれ」と泣き付く程に及川の悪臭はもはやテロの領域に達していた。

死刑が確定した後は下着を替えた事すら無いレベルなのだ。


「そんなに酷いのか?」刑務官も懲役の人が言いたい事は判っていた。

これに懲役の人は「一度あの房に入れば判る」と答えた。


刑務官は及川の房に入ってみた。

入った瞬間、腐った生ゴミのようなとてつもない悪臭に嘔吐してしまった。


同僚の刑務官が介抱し、防護服を着用した刑務官数人により及川は運動場に出された。

そして高圧ホースを用いて強制的に身体を「洗浄」し、別動隊が房内を消毒する作業にあたった。

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