その13 ~その後始末
そして金曜日の執行当日。
いつも通りの朝を迎え、及川は出された朝食を文句言いながら貪る。
そして朝9時前。及川を房から引きずり出す為に複数の刑務官が廊下を歩き出す。
複数の足音。これに他の死刑確定者達は「今日はお迎えが来る、まさか自分では無いのか?」と恐怖で一杯になる。
心拍数が一気に跳ね上がり、中には嘔吐する者も居た。
そして刑務官達は及川の房の前に止まる。
ガチャ、と鍵が開けられた。
「及川、出ろ。」刑務官の1人が及川に房から出るように命じた。
及川は自分がこれから刑が執行されるとは思わなかったようで素直に房から出た。
乞食系YouTuber時代のファンが差し入れでも持ってきたのかと勘違いしていたようだ。
その割には刑務官の人数が多いがファンに対して格好がつく、とバカな考えで居るようだった。
何も疑いを感じないままエレベーターに乗せられて刑場が有るフロアへ下りていく。
そして刑場の有るフロアに到着し、前室と呼ばれる部屋へ。
中には拘置所の所長以下幹部職員と検察庁から担当官が待っていた。
「これはどう言う事だ?」「お別れだよ。」所長は及川にこれから刑の執行だ、と言うと執行指揮書を読み上げる。
普段ならこの後に親しんだ教誨師と最後の説法や遺書を書く時間にお供え物を食べたりする時間が与えられる。
及川は糞尿を垂れ流して激しく抵抗するが屈強な刑務官達に押さえ付けられて後ろ手錠をされ、ゴミ袋を頭に被せられて執行室に引きずられる。
執行室では絞首ロープを持ってスタンバイしていた刑務官が手際よく首にロープをかけ、別の刑務官が足を縛る。
ジタバタしている及川だが更に別の刑務官が口に猿轡を噛ませる。
準備が出来ると合図をする刑務官が手を下に下ろす。
その合図を見てボタン係の刑務官達がまるでビートマニアで遊ぶかの様にボタンを連打してしまう程の勢いでボタンを押す。
プシューっと音と共に床が抜けて及川は勢い良く落下し、ゴキッと言う音と共に首の骨をへし折られた。
そのタイミングで足を掴んで押さえ付ける役の刑務官が出てきて、待機していた医務官が胸に聴診器を当て始める。
15分後に死亡が確認されるとロープを下ろして目隠し代わりのゴミ袋を外し、手錠や猿轡を外して死骸を洗浄して24時間放置。
所長は「執行始末書」を作成し、刑の完了を報告した後に千種区へ死亡届を提出する旨の書類を作る。死因は「刑死」と記載して。
執行に関わった刑務官や検察官は手当てを現金で貰ってこの日の仕事は終わり。
いつもなら寺に全額寄進して供養するのだが、この日は皆で盛大に飲み会をやってしまったのだ。
そして午前11時。法務大臣から及川の執行についての会見が行われる。
更にはいつもなら「何故執行しやがった!?」と抗議する日弁連やアムネスティも及川の執行には何一つ苦情を言わなかったとか。
「やっと片付いた。」「そうっすね。マジであいつウザかったっすよ。」へべれけに酔っ払った刑務官達は及川に対する愚痴をアテにもう一軒寄る事にしたのだ。
乞食系YouTuberによる連続女子小学生強制性交殺害事件はこうして刑の執行によって一区切りはついた。
だが遺族は未来永劫この事を忘れる事は出来なかった。大切な愛娘を乞食によって奪われた怒りと悲しみは決して癒える事はない。
そして及川の家族も「被害者」である事も知っておく必要がある。
「やっと…くたばってくれたか…。」及川の妹はこう呟くと予約の客が待つホテルへと向かったのである。
このお話は
漂白旦那氏の「犯罪の世界を漂う」(かなり詳しいサイト)
http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/climb.html
インパクト出版会の著書複数(図書館で借りて読んだw)
人間交差点 -HUMAN SCRAMBLE-』(ヒューマンスクランブル)矢島正雄(原作)弘兼憲史(作画)
「モリのアサガオ」郷田マモラ
あとリアルで拘置所に居た経験のある人から聞いた話
を参考にして背脂抜きな醤油ラーメンのようにあっさりと書きました。




