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乞食豚回顧録  作者: 早漏軒 法渓珍法老師
11/13

その11 ~意味を失った誕生日

1月19日。

及川は死刑確定者になって初めて誕生日を迎えた。

しかし拘置所では誕生日を迎えても何も起こらない。これは至極当然の事である。


昭和の時代なら何かしらのアクションは有ったのだろう。しかし今の時代、死刑確定者は死ぬ為に生かされているのを徹底されてしまい面会目的で養子縁組しても面会が許可されなかったりするケースも出てきている。


ニート時代の及川は己の誕生日に「乞食行為」を動画配信で度々やっていたが得るものは罵倒しかなくその度に「男梅」のような表情をしたり泣き出したりしていたようだ。


朝の「願い事」の時間に及川は刑務官に今日は自分の誕生日だ、と言ってみたが刑務官は表情を変えずにあっそ、と言うと隣の房に歩いていく。

ここは拘置所、及川はいつ刑が執行されるか判らない死刑確定者。娑婆では無いので誕生日が来ようと歳が1つ増えるだけだ。

それと刑務官達から相当嫌われていて及川に関する事は懲役に任せている程であった。


房の中でブヒブヒ文句垂れている及川であるが、着々と死刑執行へ一歩一歩前進しているのである。

裁判資料の精査が終わりに近付いているのである。これで問題が無ければ「死刑執行起案書」が作成されて次々と担当官によるチェックと承認が始まるのである。


更に及川に対する風当たりが強くなる出来事が起きたのである。

地元のテレビ局が及川の起こした事件のドキュメンタリー番組を放送したのである。

殺害された3人の女の子に関する事も可能な限り詳細に放送された。

被害者は9歳から11歳迄の女の子達で「パティシエになりたい」「アイドルグループの一員になりたい」「ペットに関する職に就きたい」など夢を抱いていた事も遺族の今の心境も伝えられた。


もちろん及川に関する事もくまなく伝えられ、放送後に視聴者から法務省に「及川を吊るせ」みたいな苦情まで来たようだった。


法務省も全速力で裁判資料を精査して執行しても問題が無いのを確認するまで地裁で確定しても早くて1年はかかる。

「さっさと執行しろ」と自ら執行を煽った者ですら確定から執行まで1年半かかった程である。

及川の場合は最高裁まで争ったのでもう少しかかりそうだ。


再審請求していれば順番待ちから外されたりもしたが執行逃れなら話は別である。及川は学も無いので再審請求のやり方すら判っていないのが幸いか着々と執行にむけて準備が進んでいるようだ。

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