とある元ニートの最後の日
名古屋拘置所のある単独房に一人の死刑確定者、早い話死刑囚が収容されている。
名は及川耀太。3年前、名古屋市千種区で起きた「連続女子小学生強制性交殺人事件」の犯人で半月前に刑が確定した。
半月前の夕方前。刑務官が及川の単独房にやってきた。
「及川、上告棄却だ。」刑務官は素っ気なく上告審が終わった事を伝える。
刑事事件としてはかなり早いペースで死刑が確定した及川。
まぁ、日本の裁判は長いと批判されているが今回の裁判は控訴審判決までは地裁の初公判から1年もかからなかった。
半月もすれば死刑確定者待遇となり、社会的には抹殺される事になる。
そして及川が死刑確定者待遇になった事を伝えられる。
「この栞を読んでおくように。」刑務官が死刑確定者用の栞を及川に手渡した。
栞にはご丁寧にフリガナが振ってある。聞けば及川は学力不足で高校を中退、その後は俗に言う「ニート」として10数年無駄に過ごしてきたのだ。
迷惑系YouTuberとして悪名も高かった上に不起訴になったが成人女性への昏睡強姦までやらかしている。
こんなヤツはさっさと絞首台に送ってやりたいが、判決が確定すると裁判資料が地裁レベルの検察庁に送られる。
担当の検事がその裁判資料を隅々までチェックをしてから起案書が作られ、10数人もの決裁を経て大臣の元に行く。
最低でも1年はかかる作業で「第4審」とも比喩される事もある。
まぁ、国が死刑確定者とは言え殺してしまうのだから慎重にならざるをえないのは致し方ない。
1年後か2年後か、もっと後になるか判らないが及川はその豚みたいな肥満体をてるてる坊主の様に吊るされる日が来るのである。
及川が「死刑囚」になったのは4月の半ば。娑婆では新しい生活に胸を踊らせる生徒児童、新社会人達が主役の季節でもある。
そんな中、及川は「死刑確定者」としての最後の経歴が始まったのは皮肉の他ならない。
朝7時。所内のスピーカーから起床の合図が鳴る。
収容者達は一斉に布団から出てルールに決められた通りに布団をたたみ、所定の場所に置いてから房内を掃除して点検を待つ。
点検とは刑務官が房内の収容者がキチンと居る事を確認する点呼のようなモノである。
それが済めば朝食。シャビシャビの粥に漬物だけな僧堂の「粥座」や「小食」に比べたらマシなのかどうかは判らないが麦飯に味噌汁、ちょっとしたおかずが供される。
及川は収容されて3年になるが相変わらず文句ばかりほざいている。「飯の量が」とか「野菜だらけ」だとか「マック食いたい」なんて抜かしたりしやがる。
殺された女の子達への謝罪や冥福を祈る供養の言葉は一度たりとも及川の口から出てはいない。




