追分の親分
お蝶が知っていた親分さん。
追分の地に先ずは足を踏み入れると、お蝶が言った。
おれ、ここいら辺りを仕切ってる親分と知り合いだよ。追分の三五郎ってんだ。
へぇー。どんな親分?
良い親分だよ。会っていくか?
お前が良い親分さんだと言うなら俺は会いたいねぇ。と不動が言った。
清水の次郎長親分とこの系列の親分さんだよ。
そうなの?清水の次郎長親分さんかぁ。どんな親分なんだろなぁ。
知らねえけど、おれ、お蝶だし。
うわ、本当だなぁお前お蝶じゃないか。
そうなんだ。だからかなぁ。なんか優しいぞ。
それ、お前だからじゃねえの?
なんで?
だってお前、かわいいもん。
不動が言った言葉に、みんな、ザーッて血の気が引いていく。朝だったら倒れる勢い。
不動、男にかわいいは、ない。
そうか?かわいいけどなぁ。
また血の気がザーッと引いていく。
そんな事を話しながら歩いていると、大きなお屋敷の前に到着した。
お蝶が、おーい追分の親分ー!と呼んでいる。
なあなあ、なんで備前のお前が追分の親分を知ってんの?
いやぁ、聞かない方がいいよ。旅人さんも多いからね、曲輪ってところはね。
、、、。そうだった。こいつは、曲輪から逃げてきたんだった!捕まったら死罪とかか。
いや、たぶん、生きてる。曲輪に戻されるだけだろ。祐海が教えてくれた。
そうか。鎌ちゃん達は、急に大人しくなった。
そしたら立派な屋敷から爺さんが1人で現れた。
あー、お蝶じゃねーか。
三五郎親分!久しぶりです。
息子の三五郎が殺されて、この屋敷を守って行かなくちゃなんねぇと1人頑張ってはいたが、この屋敷だけが残って、あとはどこの奴かわからねえ奴らに全部取られちまった。
そうなんか?
お前ら、取り返してくれねえか?で、良かったらこの屋敷、もらってくれねえか?
え?
辰五郎親分とこの若い衆たちだろ?話はほれ、こうしてもらっているよ?
辰五郎親分は三五郎親分に手紙を書いて送ってくれていた。いつも思うことだが、渡世の道は、こんなに甘くはないと聞く。しかし、1人では何もできないが、こうして人数が集まるとお互いの悪いところを庇い合う事を、教えられなくても、どこかで知っている。
三五郎は、後はお前達に任せた!と言うと、杖を持って屋敷を出ると言う。
役人な祐海が、1人じゃいけねえと、付いていくことに。2人じゃ心配だと、春太郎も付いていくことになった。
早速、それを鎌ちゃんは辰五郎親分に手紙を書いて出した。
そしてふと思った。そういやあ、妹や、夕霧さんは元気にしているだろうか。。。
元気に決まってるわな!
と、思い直すと飛脚に手紙を渡した。
三五郎親分は清水の次郎長親分のところへ行くという。
もう帰っちゃこねえからよ。
そう言ってニッコリ笑ったその顔が、いつまでも忘れられなかった鎌ちゃん達だった。
しかし、
この屋敷、建物は立派だけど、食べ物もなければ、金もねぇ。ただ雨風しのげるだけじゃんか。
偉く困った鎌ちゃん達は、みんなで近くの土場へ行くことにした。
さ、どんなイカサマが待っている事やら。。
また、どんな人がいる事やら。
屋敷もらっちゃった。