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1.

1.


 『世界統一したお(>_<)』




 『数百年もの永きに渡る我らが魔族と人間族との戦争が終焉を迎えた。栄華を誇る闘争の行方は皆も知るとおり、我が率いる魔王軍の勝利と終えた。

 万雷の拍手をもってこの勝利を皆で讃えようではないか。

 皆の者、我の元へ集まれ。    魔王より』




 『早春の折、如何お過ごしでしょうか。

 肌寒い冬の時期は戦争の終結と共に去り、気持ちの良い新時代の幕開けが感じられるようになりました。

 終戦業務で多忙なこととは存じあげますが、四天王より以下地方統括の幹部までの皆様を新魔王城(旧・人間軍本拠)に招待し、ささやかながら祝宴の儀を催します。ふるってご参加ください。

 終戦まで頑張った魔王より』




 『新緑が眩い光を放つようになり、王都(旧・人間軍王都)からの景色は絶景を極めています。戦場で兵士の皆々様にご愛読いただきました魔王軍ランキング(隔週発行)が終戦後も存続していれば、この観望が一位を獲得したでしょう。

 出席率の関係で延期を重ねている祝勝会のお話となりますが、魔王軍の慰安も兼ねています。魔王軍ランキング一番おいしい地方飯で十年間トップを譲らなかったシェフの悪魔を北方より呼び、魔王軍ランキング一番按摩が上手いで不動の一位を獲得した整体師のスライムにおこしいただき、皆様の長年の疲労をとり除きたいと考えております。

 王都では人間軍の幹部も首に首輪を繋げて首を長くして待っております(笑)。是非ご参加ください。

 春の無断欠席のことはもう怒ってないよ! 魔王より』

 




 『再三の鷲便で申し訳ありません。シェフの悪魔ではなく悪魔のシェフでした。料理に悪魔族が育てるハーブが入っておりますが、整体師のスライムによると半分ほどの確立で除去できるだろうとのお話でした。不安な方は此度の祝勝会、王城で行われる皆様のための慰労会、美味しいご飯がたくさん揃えてある祝宴会! に、蘇生薬をお持ちになってご参加ください。

 部下を心配できる有能上司 魔王より』





2.

「なぜだ……なぜだ!」


 さざめ雪のように割れたシャンデリアの破片が降った。

百メートルにも及ぶ長テーブルが三組置かれた王城(旧・人間軍王城)ホール。調理された料理さえも自らの映えさ加減に震えている。アイアンクマのヒヅメ丸焼き、ホロドラゴンの霞スープ、どれも素材からして一級品だ。

 しかし、それらは料理人が一目して涙するほど手がつけられていなかった。


「なぜ!」


 長テーブルから少し離れたお誕生日席に堂々と座るのは。いまやこの世界で名を知らぬ者などいない魔王――アラジール。数百年前に突如として繋がってしまった人間界と魔界のあらそいに終止符を打った時の人。


 人間や部下に暗殺される可能性を考慮して、戦時下は仮面をはずすことはなかったが、魔界の幹部だけが集う場所にそんなものは不要だと、いまは紫色の素肌を晒している。


「美味なる馳走に快楽のための同士も呼んだ。餓死寸前だと言うあやつらのために用意した。それなのにだ」


 その紫色の肌は、ルビーが埋め込まれた赤い瞳よりも赤い。それはアラジールが感じている羞恥と憤怒のあらわれだった。


「なぜ誰も来ないのだ!」


 祝勝会には誰も来なかった。


 王城ホールには冷めた料理だけがずらりと並んでいる。ドタキャンならまだしもその連絡すらない。まさか人間軍の反乱がおきて幹部が取り押さえられたのかとも考えたが、丸腰の総本山がここにいるのだから、そんな回りくどいことをするだろうか。


 既に世界は平和になり、戦争は終わったのに。


「む、この城には遠見の鏡があったはずだ。ええい、幹部のやつらめ、側近なのに何を考えている。なにをしているのか覗いてやる」


 ホールの料理をひとりでたらふく食い上げた後、残りは人間の乞食たちに分け与え、王城の地下へと階段を降りた。


 掃除が行き届いた地下廊下を抜けると巨人族が拵えた大きな地下室に出た。

 たったひとつしつらえられた鏡。人など喰ってしまうと圧倒するほど大きいが、魔力のカケラも感じられない。魔力を喰わせて空腹で眠っている鏡へと語りかける。


「我は魔王・アラジール。遠見の鏡よ、魔王軍四天王どもの居場所を写せ」


 しわがれた魔族の声が鏡から聞こえる。


『魔王軍四天王の誰じゃ』


 鏡は食んだ魔力を力に変えた。その周囲には魔力の線がこれでもかと見えている。


「先ずはシルゴーンだ」


 四天王は三人いる。零落のヒャダストロは終戦間際に生き急いだ。慰霊をしろと部下には言われたが戦って死ぬなら本望だ。我は魂に捧げる宴会を開いてやったが地獄であいつは笑っているだろうか。


『……誰だそれは』

「不平等のシルゴーンだ。……ほら、人間界の議会にわいろを送る役だった」

『知らん』


 役に立たない鏡め。人間に使われて怠け癖がついたか。


「それでは略奪のグレールは。才能を発揮できずにいた人間をさらっては勝手に学校に通わせていた」

『知らん』

「ええい、お前は遠見の鏡だろう。なんでそんなこともしらないんだ」

『四天王はゾイヤ、ワンコ、マイク、ペタの四人だろう』

「いつの時代の四天王だ! それは先先先代の四天王だ」

『なんと。人間の王との年一野球に負けると審判に駄々をこねていたマイクは元気か?』

「我が知るか! 遠見の鏡だろう自分で確認しろ!」


 遠見の鏡がぼおっと輝きを放つと、どこかの騒がしい歓声が聞こえた。遠見の鏡は遠い場所の音声までも拾えるらしい。なんて高等技術なんだ。その技術の結晶はいま、競赤狼でお金をすった老人を映し出していた。


「我の命令を前に確認するとはいい度胸だ。しかし、その力はしかと目に見せてもらった。さあ、今代の四天王たちの姿を見せてもらおうか」


『わかった。四天王ともなれば濃度の濃い魔力が流れていることだろう。ふむむっ!』


 しわがれた声が個室で踏ん張るような声を出すと、再び鏡が光を放った。


「こ、これはなんと……」


 鏡には驚きの光景が映し出されていた。

 鏡からはその場の音声が流れてきた。


『九千四百ロイスです』

『小銭ねえなあ。一万だ。釣りはとっときな』


 鏡に映し出されたのはサキュバス娼館の入口で料金を支払っていた零落のヒャダストロだった。


「え、生きてんじゃん」


 思わず素の声が出てしまった。魔王としての威厳がないからと矯正されたのも百年ほど前だったか。


『我は遠見の鏡である。遠くの景色を写す鏡である。過去や未来を写すことはできん。どうやら察するにこの男、人間界に亡命しておったようだな』

「マジか」


 これは指名手配案件なのでは。とりあえず魔界と人間界の娼館全てに出入り禁止を通達しよう。くそっ、宴会で長々とお前のいいところを演説しちまったじゃねえか。


『今代の魔王よ』

「なんだ遠見の鏡よ。さっさと他の四天王も写せ」

『悪いが魔力切れだ』

「なんだと! まだ一人しか見ていないではないか!」

『久しぶりだから燃費が悪いのだ。それと視たのは二人だ』

「ギャンブルに負けた爺を見たのは貴様の勝手だろうが! さっさとやるのだ」

『悪いな』


 鏡がそういうと、光が消え、魔力の線は微塵も見えなくなり、地下の部屋は暗闇に包まれた。


「どいつもこいつも虚仮にしやがって!」


 一度ホールに戻って手のつけられていない冷めきった料理をバクバクと食ってから、再び部屋に戻って遠見の鏡に魔力を喰わせる。


「げぷっ、ほら魔力だ。さっさと続きを写せ」

『この男、どこかまた店に入るようだぞ』


 零落のヒャダストロが再びどこかの店に入っていく。


「ヒャダストロの性事情など知るか! 戦争を嫁にできないあんなインポ野郎より他の四天王を写せ!」


 そう怒鳴ったが、しわがれた声は落ち着いて、またどこか諭すような声音で『その必要はなさそうだ』と言った。


「なんだと?」

『この男の入った店、相当に濃密な魔力が溜まっている。結果は……その目で見るがよい』


 遠見の鏡が映した光景。それは――。


「なん……だと……っ!」



あとがきその1

 1話しかアップできなくてごめんなさい。か、書くから! 大丈夫だから! ちゃんと年末までにはあげるんで今はこれで勘弁してくだせえ! クリスマスとか彼女いないから暇だしだいじょう……仕事じゃん(絶望)

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