朝比奈かぼすの挑戦
「弱くてニューゲーム。それが君の第2の人生だ。」
神さまはなんでも出来るんだなぁ。全知全能の彼女も神さまの発言には少しばかり驚いた。
「神さま、つまりわたしは全知全能の力を無くしてもう一度ただの人間として人生をやり直したらいいの?」
神さまは答える。
「そういうことだね。やり直すといっても今の年齢から続けていいよ。レベル、いや年齢はそのまま引き継ごう。0歳からなんて退屈でしょ?」
朝比奈かぼすは頷く、そして質問を繰り返す。
「二週目はどうすればゲームクリアした事になるの?また、同じ事を繰り返せばいいの?また地球を真っ二つにしたらエンディング?」
「君は全知全能なのに何も知らないんだね(笑)
そうだね、とりあえず、地球規模内において、人類において、なんでもいいから何か一つの分野で神さまと呼ばれる存在になる事だね。なんならタコ焼き屋の神さまでもいいよ。」
朝比奈かぼすは神さまに小馬鹿にされた様な気がして、少し強めに返答した。
「え!そんな事でいいんだ。てゆうかさ、わたしは全知全能まで辿り着いたこの宇宙で唯一無二の知的生命体だよ。正直ねそんなの一瞬だと思う。」
実際間違いではなかった。今の朝比奈かぼすなら、一つの分野において人類の頂点に立つ事など、いまではもう火星で呼吸をする事と同じくらいの難易度なのだ。一日かからずどこかの国から表彰されるだろう。そして、朝比奈かぼすによりイノベーションが起こる。パラダイムシフトが起こる。世界は豊かにも貧困にも平和にも戦争にもなるだろう。
もっとも、地球が真っ二つの現在、その様な事など些細な事でしかないのだが。
「まあ、試してごらん。君が何かを初めてそして極めて一番を自他共に確信した時、私とまた会おう。」
朝比奈かぼすはたこ焼きを頬張りながら神さまの願いに答える。
「もぐもぐ•••わかった。まあ、、暇つぶしにはいいかも。神さまの仕事と関係する作業なのかは私には見当もつかないし、神さまの暇つぶしに付き合ってる可能性の方が高いとわたしは思ってるんだけどやってみるね。」
「行けばわかるさ。」
どこかで聞いたようなセリフを神さまは唱えた。
こうして神々の交渉は成立した。
朝比奈かぼすは少し微笑んだかと思うと、ハッとした表情で神さまに質問した。
「あ!そうだ。ねぇ神さま、ところで全知全能になったじゃん私。神さまの世界を一回クリアしたじゃん。そのご褒美は無いの?」
「なるほどそうだねぇ。その質問は私にも予期していなかったよ。予感はしていたけどね。だから、とりあえずになるけど、
君はたしかタコ焼きにマヨネーズをかける派だよね。そして、人類であり准神さまの君は火星ではマヨネーズを創生も物質転換も出来ない。だから、君はいつもより美味しくたこ焼きを食べられてないよね。」
その言葉と共に、神さまは朝比奈かぼすには不可能であった火星の大気をマヨネーズへ変身させた。
こうして朝比奈かぼす作、火星タコ焼きにマヨネーズがふりかけられ料理は完成した。
「!! まあ、、しょぼすぎるけど、これでいいや。神さまにしてはしょぼすぎるけど。」
朝比奈かぼすは一つ目のたこ焼きよりも大きな口を開きマヨネーズ付きたこ焼きを頬張った。
「今の君に叶えられない願いを叶えたんだ。十分だろ?それじゃあ、タコ焼きを食べたら第2ゲームもとい第2の人生スタートだ。」
「おーけー。」
「ああ、それと君の割った地球は、正しい使い方をすれば実は市販の木工用ボンドで治せるんだよ?あっそれは知ってるか、木工用ボンドが地球用にも使える万能ボンドだってことは。」
こうして、火星での食事を終えたわたしは木工用ボンドで一つにくっつけられ修復された地球へ還る事となった。