おばあちゃんがいるよ
私が小学生の時の話です。
私の母方の祖母が亡くなり、遺品整理の為に両親と実家へ帰った時の事だ。
実家は良く言えば自然が豊かで、悪く言えば田舎……というところにある。
田舎ではよくある古民家が母の実家で、4年前に祖父が亡くなってからは母の妹である叔母一家と祖母がこの家で暮らしていた。
叔母一家と一緒になり、両親達は祖母の部屋を片付け始めた。
窓が開け放たれて、湿った熱風が襖を取り払われたすぐ横の居間まで入ってくるのが分かる。
当の私はというと、叔母の息子で従兄弟の面倒を頼まれて居間で一緒に遊んでいる。
最初のうちは居間でテレビを観たりして大人しかったが、3歳になる男の子が居間でじっとしてられる筈もなく、ドタバタと部屋中を駆け回り、隣の部屋で走り回るようになるまでそう時間は掛からなかった。
「向こうで結花ねーねと遊んでなさい!」と、叔母に叱られるとその時は反省して居間に戻るのだが、しばらくするとまた隣の部屋へ行ってしまう。
その都度私が連れ戻しに行くのだが、母からも「たっくんの事ちゃんと見ててよ」と、半ばイライラした様子で注意された。
そんな事を繰り返していた時、従兄弟が隣の部屋へ向かって行ったので連れ戻し行ったのだが、隣の部屋にいた従兄弟は棒立ちして窓の外を見つめていた。
「おばあちゃんがいるよ」
指を指して言うので大人達も私もその方向を見たが勿論誰もいない。
「おばあちゃん、いるの?」大人達は顔を見合わせながらもう一度従兄弟に訊く。
「うん、おばあちゃん、そこにいる」従兄弟は答えた。
しかし従兄弟が指差す先にはただ広い庭があるだけだった。
「もしかして、私達の様子が気になって見に来たのかしらね?」母がそう言うと、「おばあちゃん心配性だったからねぇ」とか、口々に祖母の思い出話をしながら大人達は笑っていたが、私には何かが引っかかっていた。
2人で居間に戻ると、先程祖母が撮りためた私と従兄弟のアルバムを借りてきたので、一緒に見る事にした。
私が産まれた時に撮られたものは勿論、お風呂に入っている写真まで出てきた。
「これ、結花ねーね?」
「そうだよ。で、こっちはおじいちゃん。たっくんは見たことないと思うけど……」
「知ってるよ。チーンのとこにお写真あるもん。」
仏壇の中に遺影として使った写真があり、その事を指しているようだ。
「じーじは優しかった?」
「うん、おじいちゃんも優しかったよ。よく『すず屋』に連れてってくれたよ。たっくんもおばあちゃんと行ったことあるでしょ?」
すず屋とは歩いて数分のところにある駄菓子屋で、実家に帰省するとよく祖父母に連れて行ってもらっていた。
祖父母との思い出話をしながらアルバムをめくっていくと、従兄弟の生まれた時に撮られた写真が出てきた。
祖母が生後1週間程の従兄弟を抱き、笑顔で写真に写っている。
「これはたっくんが産まれてから初めておばあちゃんに会った時の写真だって」
「ばーば、笑ってるね」従兄弟がそう言った。
私は“引っかかっていた何か”が解った気がして、その瞬間背筋に悪寒が走り脂汗が全身から噴き出した。
私は恐る恐る従兄弟に訊いた。
「ねぇ、さっきたっくんが見た“おばあちゃん”って、死んじゃったばーばの事?」
従兄弟は首を横に振ってこう答えた。
「ううん、違うよ。ばーばじゃない。知らないおばあちゃんだった。」
閲覧ありがとうございます。
「子どもは視える」という話はよく聞きますが、今回はそういった話を書いてみました。
今回は珍しく一人称視点での作品になりましたが、勿論フィクションです。
書き溜めがあるのに発想が急に降りてきたので勢いで投稿しました。(笑)
夏に向けて色々執筆出来たらなぁと思いますが、また気が向いたら色々投稿しようと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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