3 異世界へと転生した俺は~with変態なメイド達~
と、いうわけで転生した後のお話第一話目です。
この作品、割と変態的なキャラが出てくるので十分注意してお読みいただくようお願いいたします。
筆者の好み的にはやはりリリアですね。リアル妹がいる身としては妹キャラに萌えるのは中々難しく・・・きっと同じくリアル妹がいる人にはそれなりに分かる感覚なのではないかと勝手に思ったりもしています。
また、後々本文をいじるかもしれませんがご了承くださいますようお願いいたします。
「お前らッ!!そこへ正座しろ!」
俺は、手を腰に当て「威圧」を込めたセリフと共にそう言った。
俺のその一言で、騒がしかった音がピタッと止み俺の存在に気付いたのだろう何かを言い合っていたメイド達が揃ってこちらを見る。
一斉に向いた視線に内心少したじろぐが、それを表情には一切出さずに睨み続けた。
いや、だってこのメイド達すげぇ美少女ばっかなんだもん。
そんな美少女たちに一斉に見られたら多少動揺するだろう?これでも多々ある事なので最近は慣れてきた方だが。
「それで?何を騒いでいたんだ?」
兎にも角にも何を騒いでいたのかを聞き出さなくては話にならない。
こちとら、ようやくさっき寝れそうな感じだったのにこのまま近くの部屋でギャアギャア騒がれたらいつまで経っても寝られないからな。
『いえ、そのぉ・・・』
俺の言う通り横一列に正座したメイド達は俺の質問に対して何か後ろめたい事があるのか視線を逸らしながら声を揃えて口を濁した。
視線で問いかけるも、そこから誰も彼も一向に喋る気配がない。
あまり沈黙が続くと気まずくなるだけだろうと思い時折「黙ってちゃ分からないぞ?」と声を掛けてみるのだが皆冷や汗を垂らすだけでやはり何もしゃべらない。
もしかして、怒りすぎたかな。
こいつ等にもやましい事があるのだろうが、「威圧」を込めたのはちょっとやり過ぎだったかもしれない。
と、少し自分のした事に反省をした俺だったが何はともあれ事情を聴かない事には怒ることもできなければ、フォローしてやることも出来ないのでどうしたもんかと溜息を吐く。
・・・このままじゃ、埒が明かないな。仕方ないか。
「なあ、リリア。一体、何があったんだ?」
「い、いえ、別にナニモアリマセンヨ?」
このまま問答していても埒が明かないと踏んだ俺は、正座している七人のメイド達の内一人を名指しで呼び質問した。
このリリアと呼ばれるメイドは普段、俺の世話役をしているメイドの内の一人である銀髪美少女だ。
見た目は十二、三歳に見えるものの俺の住む屋敷のメイド達を統括するメイド長の立場でもある。
ちなみに見た目だけでなく、スタイルもよろしい。透き通るような白い肌と美しい銀髪が汚れを知らない純白を想像させる。
更に人形のように整った容姿、そしてスタイルとおよそ外的容姿としてその全てが完璧といっても過言ではないレベルだ。
まるで妖精や聖女と呼ばれても違和感がない程である。まぁ、その実真逆の魔族なんだけど。
そんな超が付くほどの美少女であるリリアを指名して聞いたのにも勿論理由があった。
やはり集団での諍い事はまずリーダーの立場の人間に経緯を聞いてみるのが早いだろうと思ったのだ。
好き勝手に喋られては話がまとまらないからな。
・・・まぁ、今は誰も喋らなくて困ってるんだけど。
そうした思惑がありリリアに話を振った俺だったのだが、しかし、他のメイド同様リリアも目を逸らしながら語ろうとはしなかった。
普段は俺の言う事に忠実なこのリリア。
その事を踏まえて考えるとどうやら、よっぽど話したくない事らしい。
うーん・・・これはどうしたものか。
気は進まないけど・・・奥の手で釣ってみるか。効果があるかは分からないけど。
「・・・あーあ、ちゃんと話してくれたらハグしてあげようかと「実はですね」ってはやッ!?」
どうやら効果は抜群だったようだ!!
俺からすればなんでハグ程度とは思うけど、君達いっつも物凄い喜ぶもんねッ!
でもそれにしても返答早いよッ!俺、まだ喋ってた途中なんだけど!
あれだけ頑なに喋ろうとしなかったのが嘘のようだ。
思わずツッコんでしまった俺だが、ビックリしたのは恐らく俺だけではないだろう。
あまりの呆気なさに、周りのメイドも「え!?」みたいな顔して―――
「なんて・・・羨ましい!!」
「私!私が喋ります!!」
「チッ、私がメイド長になっておけば・・・!!」
全然違った!!!
「そこにいるシアナが私達メイドの間で決めていた鉄の掟を破ったのです」
動揺している俺に構わずリリアはそう続けた。
同時に一番端に座っていたシアナと呼ばれるメイドの事を指指す。
「ち、違うんです・・・ちょっと魔が差してしまい・・・!その、申し訳ありませんでしたッ」
リリアに名指しで名前を言われたメイド、シアナはあからさまにビクついた。
確かにメイド長の立場であるリリアから言われれば下の立場であるシアナはそれなりに怖いのだろう。
というか、少し涙目だ。
・・・うーん。可愛い!
俺は怒ることも忘れて反射的にそう思ってしまった。
シアナ以外も皆美少女なのだが、俺は一際シアナには甘いのだ。
実はそれにも幾つか理由がある。
まずは何回も言うようであるがこのシアナも、美しい金髪の見た目が十二、三歳程に見える美少女であるという事。
うちの屋敷にいるメイド達は皆美少女だからこのシアナも例にもれず可愛いのだ。
可愛いは正義ってね。
そしてもう一つの理由。恐らく、これがシアナに甘い一番大きな理由だろう。
それが、このシアナはどこか妹っぽい雰囲気だという事だ。
リリアが精霊や聖女のような雰囲気だとすれば、このシアナという少女は守りたくなるような妹系の顔立ちと雰囲気なのだ。
身体的にもスタイルの良いリリアとは違い、このシアナは貧乳。
そんな幼さを感じさせるような所も「IMOUTO」を感じるポイントなのかもしれない。
俺には前の世界で可愛がっていた妹がいたので、同じような扱いになってしまいシアナに関しては結構甘いところもあったのだが・・・どうやらこの騒ぎの原因はシアナみたいだし、理由によっては俺も心を鬼にして厳しい態度で叱らなければなるまい。
・・・泣きながら謝られたらすぐ許しちゃいそうだが。
「それで、鉄の掟を破ったって、何をしたんだ?」
「それは・・・」
先程までスラスラと摘発していたリリアが再び言い淀む。
やはりあまり言いたくはない事らしいが、ここまできたんだ、何が何でも話してもらうぞ。
引く気はない、と言わんばかりにリリアを見つめ続ける。
するとそんな俺の雰囲気を察したのか、リリアは意を決するように一度目を閉じると、口を開いた。
「・・・・我が主様であります、アルス様のパンツを洗う前に被ったのであります」
「・・・うん?」
ついにその理由を話したリリアであったが、自分の耳を疑った俺は思わず聞き返す。
え、だって、え?
俺のパンツを被ったって・・・聞き間違いだよな。何かの間違いに違いない。
と、混乱している俺に何を思ったのか、リリアは「分かります!」と言わんばかりにうんうん、と頷くとシアナを責めるように強い口調へ切り替え話を続ける。
「えぇ、えぇ。アルス様のお怒りも尤もです!あろうことか、彼女は洗濯の済んでいないパンツを被ったのですから。そんなの、他の皆もしたいに決まっています!ですが!それで争いにならないよう、私達の間で『洗濯前のアルス様脱ぎたてパンツには手を出さない』という掟を作ったのにッ!私利私欲のためそんな事をするなんて困ったのものです。全く、とんだ変態ですよ、シアナは」
「ひぅ・・・すいませぇん・・・・」
そうしてついに泣き出すシアナ。
やはり、妹のように思っている子が泣くのはかなり心が痛む。同時に可愛いとも思うが。
当然普段であれば泣き出す前にフォローしているのだが、今はとてもそんな気になれなかった。
だってこの子、俺のパンツ、被ったんだZE?
しかも洗濯する前の・・・。
ん?いや待て。
確かに大事件だ。それはもう間違いない。
だけど何か引っかかる。
リリアは「洗濯する前の」って言った。
じゃあ洗濯後は・・・?
・・・まさか。
「もしかしてお前ら、洗濯した後のパンツには似たようなことをしてる・・・とかないよな?」
もはや怒りで勝手威圧が出てしまっている俺に、リリアは「しまった!喋り過ぎた!」みたいな顔をする。
他のメイド達も「あちゃー・・・」と言いたげな顔だ。シアナは変わらず泣いてるけど。
誰も、否定はしない。
まぁつまりそういう事なんだな。
こいつ等が変態なのはある程度知ってたことではあるけど。
それでもパンツを被るってさ・・・。
オーケー分かった。ならば戦争だ。
怒りと呆れで無表情となった俺はメイド達の方へと一歩歩みを進める。
するとリリアが慌てて弁明するように捲し立てた。
「お、落ち着いてくださいアルス様!シアナへはこれからはきちんと洗濯後のパンツでそういう事をするよう私からちゃんと教育致しますので!!魔王としての度量を以て、今回の事はどうか・・・どうか!」
そうして、慌てて頭を下げるリリア。
その姿に感銘を受けたらしいシアナは「そんな・・・!リリア先輩、私のためにそんな!」とか言っているが放っておく。
今はそんな漫才に構っている場合ではないのだ。
コイツ、さっきの失言をなかったことにしてシアナに罪を全て擦り付けようとしてやがる。
それも俺のパンツは被ること前提で。
それでいいのかメイド長。
それでいいのか?他のメイド諸君ッッ!!!
「・・・・・」
何も言わない俺に痺れを切らしたのか、恐る恐る顔を上げてこちらを見てきたリリアの肩にポンッ。
俺はそっと手を置いた。
それを許しだと勘違いしたのか、リリアがパッと顔を明るくする。
周りのメイド達もわぁ、と明るい声を上げた。
そんな明るいムードの中、俺は息をめいっぱい吸い込む。
・・・怒鳴るために。
「俺のパンツで何やってんだぁああああああ!!この変態共ぉおおおおおおおお!!!」
『す、すいませんーーーーーッッ!!!』
俺の怒号で頭を下げるメイド達とは裏腹に天を仰ぐ俺。
拝啓、父さん母さん。そして親愛なる我が妹の咲。
俺が元の世界からこっちの世界へと転生してしばらく経ちましたがそちらは変わりなくお元気でしょうか?
俺は、元気です。少なくとも体は。
毎日毎日、見た目麗しい美少女なメイド達にパンツを被られたり服の匂いを嗅がれたり呆れ果てて蔑んだ目で見ようものなら何故か恍惚とされたりと、そんなパワフルでアブノーマルな日常を送っていますが元気といったら元気なのです。
思えば咲も「お兄ちゃんの匂い好き!」とかいってよく抱き着いてきましたよね。
当時は喜んでいいのか兄離れ出来ない妹に厳しく接すればいいのか…何とも言えない微妙な気分になりましたが今ではただただ可愛らしかったなと思える程には達観して物事を見られるようになりました。
全ては日頃から受けているセクハラのおかげですね!
………もうヤダ本当に。
俺、あいつら(メイド達)のせいでお婿にいけない…ッ
しゅん、と落ち込んだ様子のメイド達と共に、こんな日常に慣れきってしまった自分に改めて気が付いた俺も一緒に落ち込んだ。
結局この日、騒音で目が覚めた俺だったが最終的に一番五月蠅かったのは、俺の怒鳴り声であったのだった―――。
―――――――――――――――――
女神を助けて死んだあの日、俺は不思議な空間で当人である女神と対談した。
実は、俺が助けたのは無駄だった、とか。目の前のこやつが実は神様だった、とか。
それなりに色々な話をしたと思う。
実際問題、世界を創造したらしい女神とやらと話すという中々現実離れした状況であったが、実際に体験しているのだ。
半信半疑ではあるものの、一先ず女神の言っている事を信じる事にした俺は目の前にいる幼女が本当に神様だ、ということを前提にあるお願いをしてみた。
俺を蘇らせてくれないか?と。
死んでしまったらしい俺の魂を連れてこうして不思議空間で会話が出来るくらいなのだ。
そのくらいできるんじゃないか、と。
しかし俺の期待を裏切るように、女神から告げられた返答はNOだった。
それは出来ないとはっきり言われてしまったのだ。
より正確に言うなら俺と同じような存在を創り直す事は出来るらしい。しかし、それは俺とは違う存在になってしまうとのこと。
例え俺と同じ容姿。俺と同じ声。俺と同じ記憶を持っていても、だ。
魂が違う者を同じ存在とは言わない。つまりはそういう事らしい。
その言葉で消沈した俺だったが、そんな俺の様子を見た女神は慌てて言葉を付け足した。
この世界じゃ無理だけど、他の世界でなら俺という魂、記憶を残したまま転生させてやれる、と。
その言葉に、どうしようかと暫く悩んだ俺だったが最終的に女神の提案に乗ることにした。
こんな不思議体験があるくらいなんだから、転生先の世界で世界を渡る方法くらいあっても不思議じゃないだろうと考えたから。
もし、この提案を断って俺としての記憶がなくなってしまえばそれこそ俺という人生が終わってしまう。
ならば、別の世界だろうと可能性があったほうがいいのではないかと思ったのだ。
そうして、提案に乗った俺なのだが何を思ったのかあのアホ女神は俺の返答を聞き次第、俺に転生先の世界の事を何も説明せず送り出しやがった。
本当にアホアホだ。
そうしてアホ女神の力により俺が転生した世界。
それはよくアニメとかにあるようなファンタジー世界といっても過言ではない世界だった。
剣があり、魔法があり、日本であったような現代文明のようなものが一切ない世界。
その世界で俺は、村人Aとして・・・・・ではなく、何と魔王の息子として転生してしまう。
最初は俺も普通の村人として生まれたのかと思ったさ。
けどそれにしては普通にメイドとかいるし、なんか家が凄いでっかいしでどうやら普通の村人として生まれたわけじゃなさそうだぞと、そこにきて「おや?」となった。
それでも貴族か何かの家に生まれたのかな、っていう認識しかなかったのだがメイド達の他にも普通に家に化け物みたいなのが出入りしているのだ。そこでもまだこの世界じゃそれが普通なのかなと思う事で「おやおや?」と思うくらいであったのだが、月日が経つにつれてこちらの言語を理解し始めると飛び交会話の中で決定的な単語をよく耳にするようになってしまったのだ。
「今は亡き魔王様の息子様」という。
そこで俺は改めて自分が普通の存在として転生しなかったことに気付いた。
気付いてしまった。
おれ、魔王の息子なのかぁ、と。
まぁ俺が生まれた時には父親である魔王は、どうやら勇者と相打ちになって消滅してしまっていたらしいので魔王という存在そのものの姿を見たことはなかったが。
ちなみに俺の母親は俺を生んですぐに亡くなったらしいので転生した矢先から孤児状態である。
その代わりといってはなんだが勇者と魔王が相打ちになった事で一時停戦状態となった事により、魔界へと戻ってきた魔王軍の将軍やら元々父である魔王に仕えていたメイド達やら、俺のために集められていたらしい新規のメイド達やらが生まれたばかりの俺の世話をしてくれたので、普通の孤児なんかとは比べられない程には満たされた生活だとは思うけどね。
と、それは置いといて。
普通異世界の魔王の息子に転生させるか?あのアホ女神。
まぁ異世界については干渉できないとか言っていたのでたまたまだとは思うけどさぁ。
それでも、ねぇ?文句の一つや二つは言ってもいいだろう。
最初はなんだそりゃ、と思ったものだが魔王の息子という特殊すぎる立場も、むしろこの世界の事を学ぶにはいい立場かもしれないなとポジティブに思う事で無理やり納得する事にした。
せざるを、得なかった。
だって生まれちゃったんだもの、仕方ないじゃない。
実際早くに自分の立場を受け入れられたのも魔王というものが、この世界でどれだけの存在なのかを全く知らなかったというのが大きな理由だとは思うが。
外の世界を知らない俺からすると凄いお金持ちで色々な種族がいるお家に生まれたんだなぁくらいにしか思わなかったからな。
むしろ魔法だとか何だとか、不思議な力があるのであれば元の世界へと帰る方法もあるかもしれない。
そう思った俺はならばと「帰るため」そんな下心と共に自分の立場を利用する事にした。
周りに優秀な先生となる者達が揃っていたのをいい事に、魔界の層々たるメンバーに稽古をつけてもらえる事にしたのだ。
俺に教える側も、実際魔王となる人物が弱いままじゃ困るのだろう。
「色々と教えてほしい」と願い出た俺の申し出をそれは喜んで受け入れてくれた。
というか、その日はパーティになった。大袈裟だ。
こうして様々な事を経験出来る事になった俺だが、特にしんどかったのは魔法だ。
魔法は幼い頃より使っていれば勝手に魔力容量が増えるらしい。
もちろん個人個人による限界などはあるみたいだが、基本的には魔力容量を増やすのならば魔法を使い続ける、というのが一番オーソドックスなのである。
なので、ひたすら魔法を使わされた。一つ魔法を覚えればその魔法をひたすら気絶寸前まで使い続ける。
そして、魔力容量が増えたところで違う魔法を教わり、それが使えるようになればまたその魔法をひたすら使い続ける、というように。
いずれ世界を渡る魔法を見つけた時に、発動させようにも魔力が足りません!などという情けない事にはなりたくなかったので魔力容量を増やすことに異論はなかったのだが、如何せん魔力切れを起こすとかなり体がダルくなってしまう。
それはもう、滅茶苦茶運動した次の日みたいに。
筋肉痛みたいな地味な痛みも伴うのだ。
それが嫌だった俺は考えた。
どうにかして手っ取り早く魔力容量が増えないかと。
だって元は普通の高校生でしかなかった俺だ。
毎日毎日来る日も気絶寸前まで疲れるような事を、終点が見えない状態でし続けるというのはかなりメンタルにくるものがあった。
端的に言えば、そこまで心が強くなかったのである。
出来れば、早くこんなことは辞めたい。
あの頃はその一心だった。
何かもっと効率的なトレーニングがあるのではないかと。
いつも魔法を使うトレーニングをしつつそればかり考えていた。
そしてある時、極論ではあるが一つ思いついたのだ。
一つの魔法を使いつつ違う魔法を平行して使えば負荷も増えて容量が増えるための時間短縮になるんじゃないかと。
それはズバリ、理論的には間違いではなかった。
しかし、当時の俺はそれが正しい行為だという自信がなかったので隠れてコソコソとトレーニングをしていたのだが実はこのトレーニングを始めてからの方が毎日がきつかった。それはもう本当に。
楽をしたいがためにしているトレーニングなのに、余計きつくなったのだ。
本末転倒である。
まぁ今考えてみれば当たり前の事だが、負荷を増やすトレーニングをした上でいつものトレーニングもこなさなければいけないのだ。
そりゃしんどいに決まっている。
しかし当時必死だった俺はそんな事にも気付かなかった。
でもまぁ最終的な目標のためか、そんな事を考える暇もないくらい必死だったお陰か、兎にも角にも二重苦のトレーニングを何とか根性で乗り切った俺の魔力容量はもはやトレーニングをしなくてもいいくらいまで増えていた。
それでも一応、習慣として毎日自主トレはしているけど。
そんなこんなで魔法の習得を順調にこなしていた俺だったのだが、次に待っていたのは剣の鍛錬であった。
しかし、この剣の鍛錬に関しては魔法程キツイ思いをしているのかと言われれば否だ。
むしろ、魔法の鍛錬より俺は好きである。
本来魔法を使うより体を鍛えたり体力づくりをしたりと直接的なきつさがあるはずの剣の鍛錬だが、日本で普通に高校生をしていた時には考えられない程軽いこの身体は、動体視力や筋力なども半端ではなく基礎トレーニングをすればする程目に見えて成長したのだ。
元の世界にいた時はそこまでアウトドアな方ではなく、別段体を鍛える事もしていたなかった俺だが魔法とはまた違った形で毎日体感できる成長に、見事にハマってしまった俺は毎日嬉々として鍛錬を行った。
だって、やればやるだけ強くなるのが分かるのだ。
男としてこんなに楽しいことがあるだろうか。
いやない(反語)
そのハードワークとも言える鍛錬のおかげで、かなり早い内から人々に魔将軍と恐れられていたギルスからもお墨付きを貰えるほど剣や体術に関する実力が身に付いていた。
いやぁ、まさしくこの身体様様だ。もちろん、努力を怠ったつもりはないけどね。
ちなみにこのギルス。
人々からは恐れられていたようだが俺には甘々だった。
何せ俺が「ちょっと待って、キツイ、タンマ」と言うと、周りにいた俺の相手をしてくれている兵達に「お前らぁあああ!!アルス様はお疲れだぁあ!休憩ぃいいいいい!!」と積極的に怠惰を許してくれちゃうのだ。
これが甘々だと言わずして何というのだろうか。
おまけに、無論アドバイスという形で俺に指導する事はあるのだがそれ以外では一切怒らない。
どころか、何をしても褒めちぎられる。
いやぁ、きっと人間族の方々はギルスの事を勘違いしてるだけなんだろうね。
こんなに優しくていいやつなのに。見た目は黒甲冑で怖いけど。
そうして剣に魔法に教養と、中々に密度の濃い時間を過ごしていた俺は今現在七歳となっていた。
そろそろ考えていた計画を始動し始める時かな、と思い始めていた俺は夜な夜な遅い時間まで考え事する日々が続いていたのだが・・・・。
そんな中での今日の出来事であった。
今日もまた例に漏れず、色々と考え事をして夜更かししていた俺だったのだが、そろそろ寝るかとベッドへ横になった時・・・不意に部屋の外から騒音が聞こえたのだ。
何人かのメイド達が言い争っているような声。
俺の世話役である七人の美少女メイド達は、とても有能揃いなのだが同時にとても変態揃いでもあった。
俺の事に関してだけ。
なので、今日もまた俺関連での言い争いかもしれないとうるさい上に気になって寝れなかった俺は、まったくあいつらは・・・そう思いながら現場へと向かったのだが―――――
その後の事は、改めて語る必要はないだろうと思う。
騒がしい毎日はとても充実しているし、悪くはないんだけど・・・パンツはないだろうパンツは。
本当に残念な美少女共だ。ハァ・・・・。
読んでくださった方々に、感謝を
よろしければ感想アドバイス、評価ブクマなどよろしくお願いいたします。
何人か、ブクマしていただいた方がいるようで・・・ありがとうございます、ありがとうございます・・・。
ちなみにまだ、人間の住む街などには降りません。
後、二、三話後かな?(変更があるかもしれませんが)