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2  ダメダメ女神の転生理論

転生パート、最後です。

本当は一話にまとめようかと思ったんですが、長くなっちゃたので二話に分けての投稿となります。


この物語、最初に主人公がほぼ登場しないという中々に斬新な小説ですねッ(自傷

俺は、ごく平凡な高校生をしていた自信があった。


平凡とは何かと問われれば答え詰まるものの、少なくとも別段特別な人生を送っていたわけではないと思う。


小さい頃に母親を亡くして父母家庭となった俺だったが、小学校低学年の時に父が再婚。

相手にも俺より一つ下の女の子がいて、連れ子同士の結婚となったわけだがそれで問題が起きたわけでもなく・・・それどころか義妹となった咲は「お兄ちゃんお兄ちゃん」と良く慕ってくれた。

それは同居を始めて最初の頃はお互い人見知りしていたのかあまり話すことがなかった俺達だが、そういった隔壁も年を重ねるにつれて段々となくなり高校生となった今では咲の方からたまに同じベッドで寝たいと甘えてくる程には仲が良い。


俺もそうして甘えてくる妹が可愛く、ついつい許してしまうのだが友人曰く「お前、あんな可愛い子と一緒に寝てよく何もしないでいられるよな」とのこと。

しかしそんなことを言われても相手は妹だし・・・。


兎にも角にも俺の中で「普通」の生活をしていた俺だったのだが・・・。


今現在、何処かも分からない真っ白な空間で幼女に全力で土下座されていた。


「すまんかった!我の不注意で其方を死なせてしもうた」


「えっと、俺死んだんですか・・・?」


確かに、頼まれた買い物を終えて家に帰ろうとした道中に車に轢かれそうになっていた少女を助けた記憶はある。


しかし、助けたはずの少女からいきなり死んだと言われてもあまり実感がわかない。

何より、自分が死んでいるのなら目の前の少女は一体何なのか。


それが不思議でならなかった。


「おぉ、すまんかった。我は其方がいた世界を造った『神』であり、この場所は我が普段いる空間じゃ。本来死んでしまった者の魂はこの場所へ来んのじゃが、今回は我が連れてきた」


そう言ってパチンと指を鳴らす少女。


すると、俺が少女を助けた場所の映像が3D技術の立体スクリーンのように浮かび上がる。


そうして見えた光景には確かに俺がいた。血まみれになって倒れてる俺が。

そしてその周りを警察やら救急隊員やらが囲っていた。


えっと。


つまり俺は女神様を助けたってこと?

でもこの少女が本当に神様だっていうなら俺が助けなくても平気だったんじゃ・・・。


「あの、もしかし俺、助けなくてもよかったですか?」


そう思った俺は恐る恐る女神へと聞いてみたのだが、それを聞いた女神は気まずそうに視線を逸らすと、

「い、いやそんなことはないぞ?我、実際助かったし?ま、まぁあのようなものが当たったところで我の体はどうにもならないが」

と言った。


やっぱりそうかよッ!!

畜生ぉおおお、俺超無駄死にじゃん!!!


あれ、でもこの場にこの少女がいるってことはあの場所には・・・。


再び疑問が思い浮かぶが、それを口に出すまでもなく少女が口を開く。


「うむ。ちょっとな。あの場にいるとめんどうくさっ、いや、不味いことになりそうだったからこっそり抜けてきたわ」


「今面倒くさいって言いかけたよね!!しかもそれって俺は一体誰を助けたことになってんの!?ねぇッ!?」


少女の答えを聞いた俺は思わずツッコんでしまう。


だってそうだろう?


車道へ飛び出したはずの少女を救って命を落としたのに、その現場の何処にも肝心の少女がいない。

無論トラックを運転していたドライバーなんかも少女の姿を見ているはずなので証言はあるだろうが、この少女が本当に神様であるならば地球上の何処を探してもいるはずがない人物という事になるはずだ。


ともなれば、世間的には幽霊を助けようとして命を落とした少年とでも広まることになるだろう。


何だよ幽霊少女を助けようとして命を落としたって!ただのバカかキチ〇イじゃん!!


「・・・・まぁ、それは置いておくとして」


「置いておかないで!?神様なら死後の俺の尊厳くらいを守ってよ!?」


無理やり話しを変えようとしやがったこの女神ッ

だが言っていて気付いたことがあった。


「そういえば、本当に神様だっていうなら俺を蘇らせたリとかって出来るんじゃないの?」


最早、タメ口である。

もしかしたら世界で初めて神様にタメ口をきいた人間かもしれないな、俺。


そんなタメ口での質問に、全く気にした様子のない自称神様は腕を組んで難しそうな顔をする。


「うーむ。出来なくはないんじゃがの」

「え、本当に出来るんですか!?」


また、敬語に戻る俺。

タメ口を気にしている様子はなかったが、敬語で話しておいて損はないだろう。

生き返れるのなら例えダメそうな自称神様にゴマをするくらい何という事はない。


これでも高校生だ。

社会へ出るための経験だと思って一回死んでしまった事に対する溜飲を飲んでやろうじゃないかッ


そうしてテンションが変な方向へ上がっていた俺だったが、俺とは対照的にローテンションなままの女神。

彼女の言葉をそこで終わっていなかったのだ。


「出来るんじゃが、それはもはやお前という存在ではないぞ?」


「ん?どういうことですか?」


「お前の顔で、お前の声で、お前の記憶をもった人間を造る事は簡単なんじゃが、ソレにはお前の魂が入っとらん。それでも良いか?」


「と、いうと・・・」


今のところ、聞いてる限りは普通の生き返りだと思うんだけど・・・


「あー、んーつまりじゃな。おおそうじゃ!要はあれじゃ!そう人形!例えば持っていたある人形が壊れたとしよう。その壊れてしまった人形と同じモノを店で買い直すとするじゃろう?それは見た目は同じじゃがモノで見れば全くの別物じゃ。つまりはそういうことじゃな」


「ってことは俺と同じ存在だけど俺じゃない人間が俺として生きるってこと?」


うーん、自分で言ってて良く分からん!!


だが俺の言葉を聞いた女神は我が意を得たりを言わんばかりに頷いていた。


「そうじゃそうじゃ。まぁ単純に言えばお前と同じ人間を造ることはできるが、今こうして我と話しているお前を蘇らせることは不可能、ということじゃな」


うん、とっても分かりやすいね!最初からそう言ってよぉー。


「そうなんですか・・・」


しかしそうか。

となると俺、本当に死んじゃったんだな。


こうして話している内に奇妙な体験で麻痺していた頭が冷静になり、急に実感が湧いてきた。


あぁ、そうなると寂しいなぁ・・・もう咲と話せないし、一緒に寝てあげる事も出来ないのか。親父にも今までの感謝を伝えてないし、母さんにも・・・周りの友人らにも何も言わずに逝くことになっちゃったかぁ・・・。


あれ、ヤバい、なんかちょっと涙が出てきた。


そんな急にしんみりとした俺に少女は慌てて付け足す。


「ま、待て!泣くな!頼む!泣かれると我もやりきれんのだ!(ソフトクリームを食べて満足したことによる注意不足で事故に合いそうになったなんて言えないし・・・)確かに!あの世界でお主を蘇らせることは出来ん!だが、別の世界なら話は別じゃ!」


「別の世界・・・?」


ちょっと鼻声になってしまったが、それでもキチンと聞き返す。


「そ、そうじゃ!お前の魂をそのままに、別の世界へと転生させることなら可能じゃ!どうじゃ?それで手を打ってくれんかのう・・・」

「うっ」


そう言って申し訳なさそうにする少女。


この少女、なんか中身はとっても残念でダメダメそうだが見てくれば普通に美少女、いや美幼女だった。

そんな美幼女に上目遣いでお願いされてしまえば、妹という存在がいた俺には強く拒否する事が出来ない。


「えっと、魂をそのままにって・・・」


とりあえず、詳細を聞いてみる事にする。

何はともあれ話を聞かない事には分からないことだらけだしな。


「つまり、お主としての記憶を持ったまま異世界へと転生させるということじゃ。我が管理する世界とは別の世界じゃからあまり干渉する事はできんが・・・それでも人型として転生させることは約束する!どうじゃ?悪い話じゃないじゃろう?」


セールスマンも真っ青な程に早口で捲し立てるロリ女神。

その必死な様子から申し訳なさは伝わってきた俺は、一つ溜息をついた。


この女神、アホアホだけどやっぱり悪い奴じゃなさそうだ、と。


正直、日本にいた頃の生活は諦められない。

出来る事なら、あの世界で暮らしていたいとは思う。


だが、神の力を以てしてもそれは不可能だという。何が神様か、激おこだ。

そうなると俺の取れる選択肢としては、このままこの女神の提案にのっかり別の世界へと転生させてもらうか大人しく死を受け入れるかしかない。


と、なれば発想を変えてみよう。


大人しく死を受け入れてしまえば全てが終わりだ。ゲームで言えば、セーブデータを消してニューゲームを選択するという事。


しかし女神の提案を受け入れた場合。


俺は俺としての記憶を持ったまま生まれ変わることになるらしい。

ならば、転生した先の世界で別の世界へと行く方法を探す方が利口ではないだろうか?


こうして不思議体験をしていて、尚且つもしかしたら別の世界へと転生するかもしれないのだ。

別の世界へと行く方法がないことはないだろう。断定はできないが可能性がないわけじゃないはず。


だとすれば。


答えは決まり、かな。


自分の中で情報の整理をつけた俺は、緊張した面持ちでこちらを窺っていた女神に結論を告げる事にする。


「わかり、ました。俺を別の世界へと転生させてください」


「!!お、おお!そうか!それで手を打ってくれるか!ならば話は早い!早速転生させてやろう!」


「え?あ、ちょ!」


言うや否や、パァッと顔を明るくしたダメダメロリ女神は手から急に光を出すとその光を俺へと向けてきた。


まだ!その世界の詳細も!何も聞いてないんですけどッ

っていうか人型って何!?それ以外もあり得たのッ!??


一体俺、どんな世界に転生させられるんだよ!!

やっぱりこの女神はアホだったぁあああッッ!!!


そう、声無き声を残した俺の意識は光の奔流に流され急速に遠のいていくのだった。

読んでくれた方々、まずはありがとうございます。


駄作ではあると思いますが、よろしければ感想アドバイス、ブクマなどよろしくお願いいたします


ちなみに、蓮を転生させた後の女神はというと―――

「うぅむ、次は『お好み焼き』というのを食べてみたいのう」

まったく反省していない上に食道楽へ目覚めたという・・・

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