1 女神の気まぐれ
初投稿の、見切り発車です。
また後々文章を弄るかもしれませんがご了承下さい。
いやぁ~ロリっ子といえば、「~~じゃ」ですよね←偏見
神様の仕事というのは、一見してとても忙しいもののように思える。
全ての存在を管理する者と考えれば確かにそう思ってしまうのも仕方のない事だろう。
事実、自分の生み出した者の全てを管理しようと四苦八苦している神もいた。
全ては自分の思うがままに、と。
しかし、少なくとも「地球」という星を作った神には「管理」や「多忙」といったような言葉は当てはまらないようであった。
「あぁー・・・暇じゃのう。実に暇じゃ」
もはや何度目かになる呟きが、何もない白く無機質な空間に響く。
この空間は地球という星を、いやその根本となる世界を創造した神が日々を過ごす家のような場所である。
そんな場所で、ここ最近数十年程ずっと同じことを呟いている幼女がいた。
その容姿は地球でいう白人系の顔立ちで、髪は金髪と彼らが創造した天使のような姿をしている。
「暇じゃ暇じゃ暇じゃ。あー暇じゃ!」
傍から見れば儚げにも見えるだろうこの美幼女は今現在、余りの暇さに呟くだけでは留まらず、まるで「自分、将来の夢は綺麗なだし巻き卵になることッす!」といわんばかりにあっちへゴロゴロ、こっちへゴロゴロと転がっていた。
それはもう無様に。
実は彼女こそが地球という星を作った神その者なのだが彼女は今、下界でせっせと働いている者達が知れば恨み殺される程に退屈していたのだ。
神様の仕事は大変そう?管理?何それ美味しいの?
彼女から言わせればその言葉に尽きる。
考えてもみてほしい。
そう、例えば積み木というオモチャ。
この積み木というオモチャは言葉通り様々な形の木を発想のままに積み上げるものである。
このオモチャで楽しいのは、積み上げる前の「どういった形にしようか?」と考える時間、そして積み上げている間の作業だ。
一部のマニアックな人達を除けば完成後の作品をひたすら眺め続ける事に多忙感や楽しさを感じないだろう。
これは神のする世界創造にも同じことが言えた。
世界そのものを造ってしまえば後に待っているのは「退屈」だけなのだ。
もちろん、最初の内は自分の造った世界がどうなっていくのか見る、という楽しみもあったがそれが面白いと感じたのは最初の数千年の間だけだった。
たまに自分で世界へと干渉する神もいたが、彼女は自分の造った作品を汚すことはしたくなかったため今まで干渉することはしていなかったのだ。
また、神が世界へと干渉した場合その殆どがロクなことになっていないという事も理由の一つであるが。
そんな自ら科したルールによって傍観者の立場を貫いていた彼女であったが、ここ最近では余りの暇さに下界へ降りてみたいという欲が出てきていた。
そう、ちょっと降りるだけ。ほんの少し。先っちょだけ。これは決して干渉なんかじゃないんだからねッ、と。
「うむ。そうじゃ。我の力を使わなければ良いだけじゃ。これは決して干渉などではない。そう、点検じゃな。点検。ちゃんと我の造った世界が回っているかという実地点検じゃ」
そうして誰にしているのかも分からない言い訳を言いつつうんうんと頷く幼女。いや、女神。
「そうと決まれば行かねばならんな。これは仕事じゃしの。あー忙しい忙しい☆」
やれやれ、しょーがないんだからぁ。私がちょっと様子見てあげるわ☆と言いたげなポーズでそう言ったロリ女神は不意に指をパチンッと鳴らす。
するとどこから湧きだしたのか溢れんばかりの光がロリ女神を包み・・・その光が消えた後、白く無機質な空間から先ほどまでゴロゴロと転がっていたロリ女神の姿が消えていた――――
―――――――――――
「ほぉ、ここが島国の日本というところか」
いざ、下界へ降りたってみると新鮮なことばかりであった。
勿論仮にも神と名乗っているような存在なので、どこの国、どういった場所であろうと情報としてはその全てを網羅しているといっても過言ではない。
だが情報として知っているのと、実際に体験してみるのとでは感じ方に大きな差があった。
今回、降り立ったのは日本という国。
別に日本に降りたかったわけではなく適当に楽しめそうな国を選んで降り立ったらたまたま日本だっただけなのだが。
「お?あれは・・・?」
目新しいような光景にキョロキョロと辺りを見回していたロリ女神だったが、不意に一つの場所で視線が止まる。
それは道端に置かれていた一台の屋台。
そしてその近くにいた自分と同じくらいの背丈の女の子とその母親に。
カラフルな色で塗られた屋台は周りの光景から浮いており、自然と視線が止まってしまったのもある。
しかし、視線はすぐにその脇へと移されることになった。
存在を表す看板には、それはもう見事に「ソフトクリーム」と書かれていたからだ。
ソフトクリーム。
それは主に牛乳などを主原料に作られた柔らかいアイスクリームの事。
日本でいう昭和の最初の頃に登場したこの存在は、今現在でも多くの年齢層を対象に販売され続けている人気の食べ物だ。
そんな人気の食べ物を目の前にいた女の子が美味しそうに食べている。
是非、自分も口にしたい。
本来食事を必要としないこの身体であったが、そんな光景を見てしまったが最後自分も食べてみたくなるのは仕方のない事だろう。
どんな味なのか。どんな触感なのか。あんなに美味しそうに食べているんだからきっと美味しいんだろうなぁ。と。
だがそのソフトクリームを買うお金がない。
無論、神としての力を使えばお金を出すことなど造作もない。
それどころかソフトクリームを出す事すら簡単な事だったのだが干渉しないと決めて降り立った世界だ。
こんなことに力は使えない。
でもどうしても食べたい。
「うぐぅ・・・!やむを得んッ」
まさか自分で決めたルールにここまで苦しめられると思っていなかったロリ女神は、ならばせめてと自分の力を使い情報得る事にした。
この国に干渉することなく、直ぐにお金の集まる方法を。
「・・・こ、これじゃッ」
そうして数秒目を瞑っていた彼女は不意にカッと眼を見開く。
そう。
膨大な情報の中から、見つけてしまったのだ。
わざわざ神としての力を使わず、そしてこの世界へと干渉せずともお金を得る究極の方法を。
その究極の方法とは・・・・。
「ふむ、自動販売機、か…」
気のせいかキラン、と女神の両目が光った気がした。
彼女が能力で集めた情報を元に何を思い付いたのか。
それは敢えてここでは明言はしないでおこうと思う。
ただヒントだけを言うのならば、自動販売機+お金=ソフトクリームが買える
という事だ。
それは傍から見ればただの奇行であり、究極的に残念な方法でもあるとも言っておこう。
・・・・・
・・・
・・
「ありがとうございましたーっ」
笑顔でそう告げる店員から念願の「ソフトクリーム」を受け取った彼女はとてもやり遂げた顔をしていた。
自動販売機の下からお金を徴収するというこの大冒険。
当然、全ての自動販売機にお金が落ちている訳ではない。
なので一つ一つ確認していく必要があったのだが、冒険に試練というものは付き物だ。
それは女神とて逃れられない事だったらしい。
道中、覗いている途中に時には通りすがりの犬に吠えられ、時にはたまたま近くにいたおじいちゃんに「最近の若い者は」と説教をされ・・・時には折角見つけたお金が側溝の中にあったりと、様々な試練が彼女を襲ったのだ。
しかし、ソフトクリームが食べたい。
その事で頭が一杯だった彼女はこれらの試練には屈しなかった。
戦略的撤退をする事で回避し、安全が保障された聖なる自動販売機だけを選定する事で試練を跳ね除けたのだ。
そうしてパンツが丸出しになることも厭わず必死に覗く事で、大冒険の開始からおよそ二時間後に、こうしてようやくソフトクリームを買えるだけのお金が集まったのである。
勿論、買った瞬間にペロペロした。
それはもう愛する主人に甘える犬のように。
例え、ソフトクリームを笑顔で渡してくれた店員の顔が引きつっていたとしても。
そんな苦労の果てに食べた「北海道産チョコクリーム付き(店の人のおまけ)バニラソフトクリーム」はやはり格別な味だった。
後に引かない甘さのバニラに、これでもかと思うほど掛かっているチョコクリームの甘さが絶妙なバランスを確立しているのだ。
牛乳としての自然な風味も、北海道産という事で実に濃厚だ。
そのソフトクリーム本体を支えていたコーンもまた香ばしい。
食べ終わった後も自分の手に付いたコーンのカスを舐めてしまうくらいには美味しかった。
それもまた、道行く人に変な目で見られはしたが。
そうして念願のソフトクリームを食べる事が出来た彼女の心中は達成感と満足感で満たされた。
下界で初めての食事。
それも自分の力で勝ち取った金銭で買ったモノともなれば何とも言えない感情が彼女を支配していたのだ。
それはあの空間にいた頃には味わえなかった感覚。
もう私、下界を堪能し尽くしたかもしれんなぁ、一層の事、このまま下界に住んでみるか?と。
しかし、上機嫌に歩いていた彼女は、あまりの満足感にあるミスをしていた。
日本という国は、場所によれど比較的に交通量の多い国である。
交通量が多いという事はそれに比例して信号機なるものがあるという事だ。
だが、念願だったソフトクリームを食べたことでその辺りの事を全く気にしていなかったロリ女神はあろうことか、赤信号なのに横断歩道を渡ってしまったのである。
ブロロォ!!という音になんじゃ?と横を見た時にはもう遅かった。
まさか赤信号なのに堂々と渡ってくるとは思ってもみなかったのだろうトラックの運転手は慌ててブレーキを踏んだようだがそれでも勢いのついた車は止まらない。
まぁ腐っても女神だ。
トラック如き当たったところでどうともないのだが、その後が面倒くさい。非常に面倒くさい。
それでもまぁ何とでもなるだろう、と呑気に考えていた女神は次の瞬間、「危ない!!」という言葉と共に吹き飛ばされていた。
それは彼女にトラックが衝突したせいではない。
何者かが彼女を突き飛ばしたのだ。
「ほえ?」と思わず声を上げた女神だったが、そんな女神とは裏腹に時間は進んでいく。
突き飛ばされた事でトラックとの衝突を免れた彼女であったが、代わりに彼女を助けたのだろう一人の少年はトラックにぶつかり数メートル先へと吹き飛ばさていた。
血だまりに沈んでいる少年の姿と、騒がしくなる周りの様子に気付いた女神は改めてやっちまった・・・と、顔を真っ青にする。
このままじゃこの世界へ干渉する事になってしまうだろうと。
それは例え力を使う事ではなかったとしても、戸籍やら何やら色々と調べられた時点でこの世界へ干渉する事になってしまうのだ。
そうなれば、自分で決めたルールが、そしてその後処理が。何よりあんなに苦労して手に入れたソフトクリームが無駄になってしまう。
どうしてもそれはめんどくさっ・・・いや避けたかった女神は周りの目がまだ少年とトラックへ向いている間にそっと姿を消すのだった。
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