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村人Bは勇者になる夢を見るか  作者: Y・Y
第一章 村人編
8/201

第7話  待合

かなり長くなってしまいました。

普段の二倍ほどです。

時間があるときに読むことを推奨します

では、第七話始まります。

 


 僕の名前は村人A、その実績から付いたあだ名はムラビー!

 ハハッハハハハハッ!

 僕は今、村権サイドシティ支部に来ている!

 どこかって? 僕が住んでる町の、村権支部じゃあないか!


 ……って僕がどこに住んでるか行ってなかったけ? キャピタルシティの回りにある町は大抵サイドシティ系列だから、サイドAだとか言われるんだ。で、僕が住んでいるのはサイドBだ。

 またBか……

 なんて思った?まあなにかとBに縁があるんじゃない? 或いは手抜き。まあ気にしても意味ないよ。どうせ制作者は深く考えてないだろうし。

 兎に角、そうとにかくだ、町がどこなんてどうでもいいし、あんまり興味も無いだろうからこのまま知らんぷりで進めてやろうそうしよう。


 さあ、意味もない尺稼ぎをしたところで、僕は仕事を探さないといけないってのも思い出したかい?

 これで思い出せというのも酷なので要約して伝えると、


 そう、確かあれは三十六日、いや一、四日前だったか………まあいい。僕にとっては……昨日の出来事だ(事実である)。

 君にとっては五分前或いは一日前ぐらいか? まあ良いだろう。

 母さんが 働かないと 許さない って言っていた 是非も無しです。

 これで分かったかな? むしろ分かりづらい? 知るか、こんなのどうだって良いんだよ!



 ――ほら、もうロビーに着いたよ。それでロビーのお姉さんに、


「どうも、『村人A』です」


 なんてイケボっぽく言ったらどうなったと思う?


「そうですか! でご用件は?」


 苦笑いされるでもなく、特筆すべき反応があったわけでもなく、ただ淡々と、それでいて愛想を忘れないその態度、そこにシビれる、あこがれるゥ!


「で、ご用件は?」


 少し圧力の掛かったその声に、僕は物怖じもせずこう言うのさ!


「仕事を探しているんです」


「分かりました。ではあちらで写真を撮ってから、お待ちください」


 意外なほど呆気なく、少しの停車も許されないまま、当たり前のように通り過ぎて、僕の貴重な女性との会話ルートは終着した。


 ……で、沈んだ心を紛らわすため、一応解説すると、この世界では写真こそ唯一個人を見分ける手段なのだ。だから撮る必要がある、というわけさ。

 毎回写真を撮るのも、その人の『今の顔』に合った役柄を当てるためだ。どうせデータなので簡単に顔が変えられてしまうから、というのもある。

 顔を変えられれたら犯罪が……なんて思う人もいるかもしれないが、一応一人一人に番号が振り分けられていて、区別されているらしいよ。まあどうせデータですし。だから顔を変えるのもほとんど意味無かったり? 治安もバッチリさ(衛兵の存在意義……)!

 なんて解説しながら写真を撮っていたんだけど、こういう写真って真顔になるから少し面白いよね? ね?


「アナタノバンゴウハ、ジュウヨンバンデス」


 いかにもな機械音声だな!

 僕は番号を印刷された紙を受け取って、待合室的役割の場所に向かった。



 ――そしたらベンチらしき椅子に座るんだけど、ここでなぜか待っている人を観察し始める奴がいるだろ? でも現実でそんな事するかい? しないだろう?

 だからどんな美少女が居たとしてとしても僕は敢えて言わない!


 と思っていた時期が僕にもありました。まぁこれは無視できないと本気で思いますよ。

 何があるかって、何気無く座った席の前に、物凄く勇者らしき豪華装備を着た人がいたんです。その人の装備をよく見ると、

『聖鎧アルカディア (レプリカ)三千円』ってタグが付いていた。

 レプリカ……

 デスヨネー! でも聖鎧って大袈裟だよね。最近流行ったアニメの装備かなんかかな? 全く記憶にございませんがね。それとも 『私は聖騎士○○だ!』なんて言っちゃうお年頃?

 痛いねえ~(ズキッ)。

 自分で自分の黒歴史を脚立を使ってまで棚に上げたところで、『他人の振り見て我が振り直せ』とは本当によく言ったものだと改めて感心しました。

 ブルッ、なんだかエアコン効きすぎてないか?


 ……その時、隣に座った超絶美少女……ではなく、少々感じ悪そうな(あくまで主観。嫉妬が入ってる)イケメンが声をかけてきた。


「なあお前、役職は?」


 必要ないのに他人に声をかける、その圧倒的なまでのコミュ力を僕に分けてくれ~! なんて冗談、心の内に止めて返答しなければ。


「僕は村人Aです。君は?」


「俺もそうだぜ。で今日は何の用だよ?」


 そんなにグイグイ聞いて来られると困るんだけど、まぁ隠す理由も、隠せるとも思わないしな。

 ――彼は村人とは思えない程の魔力量を有していた。きっと心を読むことぐらい出来るのだろう。


「そうだぜ隠さなくとも、というか俺が聞くまでも無いんだがな。一応の礼儀ってやつだ」


 ……! しかもこれは……完全に心を読める魔法か。凄いなぁ。


「勝手に心を読むのは違うんじゃないですか?」


「それもそうだ。まぁ読んでも意味はないし見たくも無いのだがな。人の本音なんて醜すぎる。建前だけ聞いてる方がずっと幸せだ」


 ならなぜ使うのか


「って思ったか? まぁ、癖みたいなもんだ。すまないな。これ以上は読まないでおいてやるよ」


 彼の霊圧が消えた……?

 直感で分かるぐらい決定的に何かが変わった気がする。一体いつからこの魔法を掛けていたんだろう?


「確かに何か軽くなった気がしますね」


 その瞬間、彼の顔が不信感を示した。理由は……分からないな。


「……ああ、悪い。考え事をしてた」


 何だ? また悪寒の様なものが迫ってくる気がする。これ以上心を読まれたくないので仕方無い。


『プロテクション』


 母が貸してくれた魔道具の一つ、『宝石箱』を持ちながら僕は心の中でそう呟いた。


 一応の解説をすると、魔道具とは大小様々な形をしていて、持っていると魔法を知らなくても発動させる事が出来るようになる、そんな道具だ。

 今回使ったのは防御系の魔法なら大抵何でも使えるようになる、『宝石箱』と呼ばれる魔道具だ。因みに母さんのオリジナルだよ。   


 てなわけで、精神干渉系を完全に防ぐ魔法を使ったんだけど、彼の反応は?


「ッ! なぜその魔法を!?」


 声を荒らげ始めたようで、また面倒な行動を取るな~。


「落ち着いて、ほら魔道具ですよ。これ以上読まれるのは嫌なので」


「そうじゃ無いッ! なぜ、一体なぜそれが分かるッ!」


「何の事ですか? 何が分かるっていうんです? 僕はただの村人ですよ? あなたとは違って」


「またッ……もういい。分からないなら、というか自覚がないならそれでいい」


 ん? ほんとに何の事だ? 何が分かる分からないって? まあいいや。


「ごめんなさい、何か気分を害することをしてしまったようですね」


 丁寧な対応が出来る俺は大人だね!


「いいさ、こっちこそ変に疑ってすまなかったな」


「いえいえ、お気になさらず」


「そんなに敬語で喋るのは疲れないか?よく喋れるな」


「仕事柄ってヤツですかね」


 そう、僕は小さい頃(ここ重要! テストに出ないよ!)名子役だったので演技力には自信があるのだ!


「まあいいや、仲良くしようぜ。お互いに」


「ええ、勿論です」


 そう言って僕は前を見直した。

 フッフフッ、やっぱり面白い服装だな。でも昔を思い出すと懐かしい気もする。こんな時期が僕にもあったんだな。もう脚立は破壊したので、取ろうと思っても取れない記憶にしたんだけどね。ハーッハッハー!

 そう思っていた…………


 ――そんな時である。隣の彼が僕の前のかれに、


「なあお前、本当にそんなのがかっこいいとでも思ってんのか? 一体何を勘違いしてるんだ? 似合わないものを着るんじゃねぇ! ダサい、ダサい、ダサすぎる! 勇者の格好だけ真似しても、お前になれるわけ無いッ!」


 彼のその痛烈な罵りは、この場所中に木霊した。その一言は前にいるかれの心を抉るには十分過ぎた。

 そのせいか、かれは何もできず、ただ俯いていただけだった。反論すら……しなかった。

 僕にはかれの心中をよく理解することができた。ただでさえ英雄と呼ばれる職業が目の前に、なれそうな場所に在るんだ、憧れるのも無理はない。

 その夢が笑われたのだ。否定されたのだ。


「お前もそう思うだろ?」


 僕の方を見て彼はそう言った。僕に振るのか? 止めてくれよ。


「言ってやれよ、夢を見るなんて無駄だって」


 …………君がそれを言うのか。

 君だって勇者を目指してるんじゃないのか?


「夢を見るのがそんなにいけないことかい?」


 口に出ていた。考えはしていない。後先を考えず無責任にかれを肯定し、彼を否定した。

 いつもなら流されていただろうか、ただ、彼の言葉が無性に許せなくて、やるせなくなった。


「なんだ、君も夢を笑うななんて綺麗事を言うのか? 全く、ヘドが出る」


 そうなのか? 確かに綺麗事かもしれない。けれど、


「僕だって綺麗事なんて大ッ嫌いだ。夢を見ろ何て言う大人もだ。けれども、君は何を目指しているんだ? 勇者じゃないのか? 勇者は他人に夢を、希望を与える者じゃないのか?」


 言葉に、形になった僕の思いは、彼には届かないかもしれない。彼には戯言でしか無いかもしれない。


「だったら何だって言うんだ? なれないものを夢を見ているやつに、夢を見続けろ何て言うのはッ……無責任だ! 無意味なんだッ……」


 彼の声は弱々しくなっていく、

 彼にも何かがあったのだろうか?でも僕には彼の過去なんて分からない、彼の思いも分からない。ただ、彼の意見はもっともだ。

 確かに、確かにそうかもしれない。


 確かに? 誰がかれには可能性が『無い』なんて言いきれる? 誰だって、勇者に成りたいのはきっと、


「君だって、勇者に…夢を与える勇者にッ……憧れたんじゃ無いのかッ! 叶うから夢を見るんじゃない、叶えたいから夢を見るんだッ! 叶えられるかなんてどうでもいい! 誰だって」


 そう……誰だって!


「夢を見ていられるなら、何にだってなれる! どんな人だろうと、憧れから始まるんだッ! だから……無意味なんてものは存在させないッ!」


 僕の思いは、言葉になった思いは、


「やっぱり綺麗事じゃねぇか! それ以上言うんじゃねェッ!」


 意味が無いかもしれない、届かないかもしれない。でも、僕は君を知らない。だからこそ分かった。君の本意に。


「君だって……勇者が好きなんだろ? だから、勇者の格好を安易にされるのが許せなかった、違うかい?」


 随分と子供じみた理由。だけど、正しい理由。

 憧れは目指すものだ。真似るものじゃない。

 僕もそれを知っている。だからいつまでも届かない。


「ッ! 黙れ、だまれェッ!」


 拒絶されてはどうしようもない。だけど、どうにかしたい。



「そこまでだ、少年たちよ!」


 いきなり、そんな声が響いたので、大層びっくりしたのだが、その声の主は……ってうわっ!


「いいかい? ここは公共の場だよ、ここでの喧嘩は感心できないよ?」


 本物だ……ホンモノだッ~~!


「でも二人とも、面白い会話だったね、興味深くて止めるのが少し遅れてしまったよ。いや~申し訳無い」


 本物の聖騎士アーチーだッ!言わずと知れた、あの有名な!


?『いや、知らねぇよ』


 そうだね、新キャラだもんね!


 この世界では、各世界に派遣し、大成功を納めた者だけが、自分で自分の呼び名を決めることが出来る。まぁ、この世界でのみだから、君たちは知らないだろうけど。

 その人達のことを、いつしかレジェンドブレイバーと呼ぶようになっていったんだけど、その内の一人であり筆頭格の勇者、それが彼なんだ。因みに画風が変わったりはしない。

 今思い出したけど、そういや聖鎧アルカディアって、アーチーの代表装備だった!

 僕としたことが、忘れていたなんて……、このバカが!


?『自分で自分を罵るなんて新手のMかな?』


 もういいよ!お前、本当に誰なんだよ!(ここまで僅か三秒『ご都合設定』)


「こんな場所で言い争いをしてしまい、申し訳ありませんでした」


「すみません」


 彼と二人で頭を下げて謝ったんだけど、

 いや落ち着くの早くね? やっぱり僕の言い方が悪かったかな?


「もっと、謝るべき相手がいるんじゃないか?」


 そうだ、ここに居たのはアーチーだけな筈がない。

 ここは人が集まっている場所だ。


「皆さん、申し訳ありませんでした!」


「すみませんでした!」


 僕たちは大きな声で謝った。


「うんうん、それでいいんだ。でもね、さっきの会話から考えると、もう一人謝るべきなんじゃないか?」


 隣の彼を見て、アーチーはそう言った。

 そして彼は、前の方を見て、


「悪かったな。少し言い過ぎちまった」


 かれに謝っていた。

 またしても、かれは何も言えず……うん? まさか泣いてる?


「だ、大丈夫?」


 思わず心配しちまったよ、チクショウめ!


「ハッハッハ、泣くなよ少年! 悔し涙はそこまでだ!」


 さすがはアーチー、慰め方もカッコいい(気がする)。


「いいえ」


 喋ったッ! 良いの? 初台詞が否定の言葉で良いの?


「違うんです、確かにバカにされるのは悔しかったです。でもそれ以上にあなたに会えて光栄ですし、会話を聞いている中である事に気付きました」


「誰もがこの格好を見て、変なやつとは思えど、直接指摘して、諭そうとはしませんでした。なのでこれは彼なりの優しさだと僕は思うんです」


 いや、それはおかしいと思うんだけど。


「ちがっ、別にお前なんかのためじゃ」


 はぁ? えっ、マジでなの?


「罵られて、怒られて、こんなこと言うの何ですけど、ありがとうございました。その優しさに気づき、僕は涙が出てきました。よってこれは嬉し涙です!」


「ああもう、勝手にしろ!」


 …………僕は何を見せられているのだろうか? 感動のシーンの筈だが、どうにも腑に落ちないぜ。


「ハッハッハ、良い話じゃないか少年たちよ! その若さは眩しいぞ!」


 やっぱり腑に落ちない! なぜだ?

 分かった! あまりに俺がアウトオブ眼中だからだ! これじゃあまるで、ああまで反論した僕が馬鹿みたいじゃないか!

 ますます主人公らしくないじゃないか。こんなんじゃダメなんだ。

 ……? そういや何か重要なことを……?


「とにかくだ、仲直りも済んだことだし、君達は一つ忘れてる事がないかい? 何か目的があってここに来たのだろう?」


 忘 れ て た 。


「十四番の人どうぞ」


 ハッ、急がなければ!


「あっ、あの。本当にありがとうございました!」


「何てこと無いさ!励めよ少年!」


「ハイッ!」


 そうして僕は走り出した。


「ダメだよ、建物内で走っちゃ」


「ハイッ! 申し訳ありません!」


 締まらないなぁ~~!

 それが僕らしさってか? まあ、どうでもいい。とにかく急げ、僕。

 この時の早歩きは過去新記録だと、まだ誰も知らない(どうでもいい)。


 


 ――僕が去ったあの場所で、一人考え事をする男がいた。


 (行っちまったなアイツ、一体なんだったんだ? 変なやつではあったが、面白いことを言うやつだったな。それにしても、俺の『ヴィジョン』は、歴代最高と呼ばれるぐらいの完成度で、誰にも感知できないハズ……なんだがな)


 不穏が迫っていることは、まだ誰も知らない。


 To be continued……?

 徐々に奇妙な物語へと……。


 

ここまで見て下さった方に感謝です。

しかし、この話は違和感だらけだったと思います。すみませんでした。

あそこまで反論したのに、実は良いやつだった。ありふれてますが変なやつです。

補足しますが、最後のは『彼』の心境です。




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