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村人Bは勇者になる夢を見るか  作者: Y・Y
第一章 村人編
7/201

第6話  合否

何であろうと、合格発表って緊張しますよね。

では、第六話始まります。

 


 ついに、そうついに僕の時代が来たんだ。今まで長かったなぁ。もう一生来ないんじゃないかって疑い始めていたよ。だが来たからには温かく迎えてやろうじゃあないか!


 なぜ僕がこんなにテンションが高いかは五分前に遡る。(人によるが)



 ついに届いた、これが合否通知。村人B昇格試験の時は見ることが無かった(不貞腐れるので)、でももう僕も子供じゃない。立派な大人だ。誰がなんと言おうと大人なんだ。希望職種に平気で無職やニートと書けるくらいダメダメだが……大人なんだ。

 大事なことなので三回言いましたところで、僕は目の前の紙を開く。まあきっとあの感じなら合格だろうと、自主的にフラグを建築しながら通知に目を落とす。するとその紙にはこう記されてあった。


『今回の試験の結果について合否のほどを通達致します。

 おめでとうございます。

 不合格でした。パチパチ』


 ……ん? へ?

 OH MY GODNESS!

 新単語を華麗に生み出したところで、僕は醜くも言い訳を考えていた。

 だって言っちゃったよ、母さんにきっと合格だって。すげぇ喜んだ顔してたよ! どうする、どうする?

 どうしたらいいんだッ!


 その時僕は気付いた。封筒の中にもう一枚あることに。

 僕はその紙を、一枚目の時より遥かに震えた手で取り出して、恐る恐る目を落とした。その紙にはこう書かれていた。


『第六周期 第一回、村人A昇格試験

 今回の試験の結果、

 村人B(勿論あなたのことです)

 あなたは非常に良い作業をされました。よって本試験を合格されましたことを通達致します。

 第六周期 四月 十日

 村人覇権協会会長 シゲミ』


 色々ツッコミたいことがあるけどいいかな? 始めるからな。

 其の一、最初の紙は何だったんだ!

 改めて一枚目の紙を見る、おもむろに裏返す。そして驚愕した。何という事をしてくれたのでしょう。


 『やぁ。君が好きそうな事をしてやったよ。焦ったよな。でもこんな文面でおかしいと思いなよ。まぁこれで遅刻への意地悪は終わりだ。それでは個人名を貰えるまで今後とも励みたまえ』


 あんまりぃだぁぁぁ~~! 僕は大泣きする振りをした。


 ふぅ~スッとはしなかったぜ。

 あの人僕に恨みでもあるのか? 怒り通り越して呆れが浮かぶよ? しかもなんで、行動が読まれてるんだ? 僕そんなに分かりやすい?

 まぁ、これに懲りて二度と遅刻しないように心掛けよう。


 ……まだ終わって無いからな。



 其の二、シゲミさん会長だったの?

 普通、会長自ら試験監督なんてします? あり得ないよねぇ! でも、個人名がある時点で相当な地位ではあるのか……。あの人から溢れるあの異様な雰囲気はそのせいだったのか!


 僕は都合の良い解釈を手に入れた!


 ……まぁでもそんな偉い人に誉められたんだ。もっと自信持っても良いよね! 僕は頑張りますよ!



 其の三、シゲミって本名なの?

 ……ってあれ? なんかアクセス制限が掛けられてる? あ、ヤバイ。触れてはならない禁忌だったの忘れてた。

 あっ、


 村人Aはログアウトしました。

 ~村人Bは勇者になる夢を見るか~

        完 

 Y・Y先生の次回作にご期待ください。


 させるかぁッ! 僕がログアウトなんてしたらどこへ行くっていうんだ! 誰がこの物語の主人公の代わりを出来るっていうんだ!


?『私だ!』


 させるかァァァッ!


 ……取り敢えずここらでツッコミは終わらせておこう。これ以上は世界が(というか物語が)終わりかねん。



 ――というわけだ。

 五分遡ると言ったが、そちらではむしろ時間が過ぎているな。矛盾が発生するのは仕方無いだろう。良くあることだ気にするな!


 フッ、気付いていたかな? 僕の一人称が村人Aに変わったことに。……そう、僕は村人のトップの座を手に入れたのだ。勇者になる日も近いだろう!

 フッ、フハハハハハハッ!


 悪役っぽい笑い声を上げたところで、僕は近付いてくる足音に気付いた。何者かがここに来るッ! 僕の命を狙っているのかッ! もう間に合わない! ……仕方が無い、最終手段として、この部屋に封印をかけるしかない!

 この技の副作用で大変なことが起こるだろうが是非も無し。


 

 秘技、パーフェクトロック(物理)


 

 カチャッという音が響いた。


 どうだ鍵を閉めたぞ! これでもう入ってこれまい! ハハハハハハ、はぁ?

 僕は、ドアが存在意義を抹消される瞬間を目撃した。彼女は、まるでドアなんて無いかのように通り抜けて来た。

 彼女の名前はオカア=サン。

 アイエエエエ、ニンジャ? ニンジャナンデ?

 なんてボケかましている場合では無い。取り敢えず、今起こった事象の説明をしなければ。早い話が、これが魔法ってやつなんだ。あらゆる事象に干渉し、また干渉を拒絶することの出来る力、それが魔法だ。お母さんはその道でもかなり名の知れた魔法使いだったらしい。因みに結構美人ですよ。

 通り抜けは結構な高等魔法なんだけどな。だってダンジョンを自由に動き回れる(開発者泣かせだ)しな。

 えっ? あの一話の人誰かって? 彼女は共演者だよ、あの時の。本当のお母さんはこっちの人。ドラマで本当の親子が出ることは中々無いだろ? あれと一緒さ。

 とにかくだ、非常にまずい状況になってしまった。鍵を掛けたということは、言いたくないことでもあるのかと勘違いされて、地獄の質問祭りが開催されてしまう。いくら『合格通知』なんて切り札があったとしても、だ。

 なんとかここを乗りきるんだ。取り敢えずなにか言わなければ、


「お、お母さん、ど、どうしたの?」


 やっちまったぁ~ッ! 怪しさレベルが上限を振り切って、見ただけで引かれるレベルにまで到達してしまう! こんな不名誉なことあるか?

 あるんだなあ〜これが! それも今、ここに!

 すると母さんが予想通りの反応を返して来た訳だ。


「試験の結果はどうだった? わざわざ鍵を閉めたということは……まさか?」


 だが、僕にはこの切り札がある!


「いいや違うよ母さん。驚かないでね、なんと……合格したんだ!」


 これでどうだ! もう何も言えまい!


 誇らしげに合格通知を見せる僕に、母さんはこう言った。


「そう! なら仕事をしないとね!」


 えっ? あっ!

 確かにそうだ。忘れてた。


「そうだね、給料もアップして親会社に入るにも実績を残さないといけないしね」


「そうよ! 働かないと! しっかり働くならお小遣いもアップよ!」


 お小遣いアップ…だと……? 確かに良い条件ではある。でも暗に脱ニートを宣言されてるな。だ~か~ら、ニートじゃないとあれほど言ってるのに!

 でも、まだ働きたくないし(やっぱりニート)……、

 しかし、働くことを強いられているんだッ!

 そうだ! あの言葉だ!


「本当に働けばお小遣いが上がるのか?」


「ええ、モチロン!」


 今ッ! ここでッ! いってやるッ!


「だが断……」


「らせん」


「えっ?」


「次にあなたは、『台詞を遮らないで』と言う!」


「台詞を遮らないで……ハッ!」


 しまった。乗ってしまった! なんで決め台詞が否定されるんだ! 決め台詞を無視される主人公なんているのか? いや、いない。だからもう一度。


「だが断る」


「二度言わせないで、あなたは働くしかないの! しかも使い方間違ってるの分かってる? ただ働きたくないだけでしょ!」


 もうだめD☆A! おしまいだッ!

 また無視された。僕は主人公失格だ! どんな理不尽な物語でも無視されないと言うのに! 魔法の言葉じゃ無かったのかッ!?

 仕方が無い。働くしかない。


「分かりました。働かせて頂きます。だからニートって呼ばないで」


「言ってないじゃないの」


 ってニヤニヤ、ニコニコどちらとも取れる、なんとも言えない表情で答えるもんだから、疑いの目、向けずにはいられない!

 その時、今右手に持っている紙の裏にも、何か書いてあるのを見つけた。


『ついでに、あなたのあだ名を考えておいたわよ。ムラビーはどうかしら?』


 この世界では職業、階級が名前であり、個人に名前がある場合は少ない。そもそも頻繁に名前が変わるので意味が無いんだ。名付けることが出来るのも一部の人間だけ。例え正式でない、いわゆるあだ名だろうと、そうそうありはしないのだ。だからどんなあだ名だろうと、正直嬉しい。

 それでも、この名前は……そのままじゃないか! 申し訳無いがあまり使いにくいかな……?

 それに僕にはあの名前がある。だから正式な個人名には使えない。

 でも、あだ名になら使えるな。


 あまりに注視していたので、


「ん? その裏になにか書いてあるの? 見せて!」


 ばれてしまった。隠しても結局魔法で盗まれるので、出すのみだ。


?『STEALッ!』


 オイッ!

 お母さんが駄目って言うなら使わないようにしよう。そうしよう。

 

「どうぞ……」


 僕は手に持っていた紙を差し出した。裏側に、ものすごく達筆な字で、メッセージが書かれている紙を。


「どれどれ?」


 さあどうだ?


「プッ、フフっ」


 わ、笑ったッ! まだ俺ですら笑ったこと無いのに!


「ごめんなさい、でもあなた髄分と気に入られたのね。良かったじゃない。ムラビーか……いいんじゃない? 私も使っていいかしら?」


 あ、肯定するのね。なら認めましょうか。(口調が似てきていることに気付く五分前)


「僕もいいと思う。取り敢えず、家族間のあだ名にでもしようよ」


「そうね、そうしましょう。じゃあこれからも頑張りなさいよムラビー」


 なんか同じような台詞を聞いたような気がするが、まあいっか。


「とにかく、働かないとね!」


 そうです。頑張ります。だからここは元気良く、


「うん!」


 で締めようか。



 はたらけ村人君!


 


 ――お母さんが部屋を退出した後、封筒を片付けておこうと思い、それを手に取った。

 ……? 妙な違和感を感じた。まだ何か入っているのか?

 気になったので僕は中を調べてみた。確かにもう一枚あった。

 それには、


『ランクアップ試験の受験資格について』


 と書かれた紙が入っていた。取り敢えず、読んでみることにした。


 ……ッッ!!

 僕は驚愕した。それと同時に、納得した。

 そうか、だから彼はあの時……。


 なら、僕も挑戦しなければならないな。途方もなく、大きい壁に。



かなり悩んだ末、ムラビーの件を入れました。

当初の予定では少し違ったのですが、後に思い付いた展開と矛盾しかねないので、とりあえずあだ名として出すことにしました。

できるだけそうはならないようにするつもりですが、もしかすると、無かった事になるかもしれません。

追記:伏線の一部に昇格するかもです。


今回で分かったと思いますが、名前が無いのは手抜きではないのです。きっと、そのうち仮称ができて行くでしょう。


もうタイトル詐欺に突入……?

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