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浪花駅伝少年  作者: 朝倉夕城
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6月6日(つづき2)

逢坂くんは、駅伝部に入るのか?

 放課後、アブリールは誰よりも先に駅伝部の部室に来ていた。学生会館と呼ばれる2階建ての建物は、1階に運動部、2階に文化部が入っている。長い年月、教師や学校当局の干渉を拒んできたため、いったい中がどうなってるのやら誰が何をしてるのやら不明の、トワイライトゾーンと化している。そんな中で駅伝部の部室は、こぎれいで秘密もなく健全なスペースを維持していた。

 アブリールは、ここへ来てやっと逢坂のことを思い出した。その逢坂は、咲也の掃除当番が終わるのを待って、一緒に部室に向かっていた。雨が一時的に止んでいたので、運動部がこぞって外に出ている。


 放課後のグランドは、どこの学校でも同じだが、運動部の百花繚乱で活気にあふれているものだ。ただ、共学校から来た逢坂には、女子のテニス部なんかの姿がないのが寂しく感じられる。女子だけの部活はバレーボールとチアリーディングだけで、他は男子と一緒だが、なにより女子の絶対数が少なすぎるのだ。見た目には、だいたい男ばかり。でも、逢坂にはそれも何だか微笑ましかった。

 女子少ないのがイヤってわけじゃない、と、逢坂は考える。小学生じゃあるまいに、転校ぐらいで動揺していてどうする?


「こっちが陸上部で、こっちが駅伝部。」

いきなり立ち止まって、くるりと体の向きを変え、比売咲也は逢坂の正面にその全姿を見せた。

「両方入ってもええんやで。」

肩につくほどの髪。逢坂より少し背が低く、細身だが鋼のようにシャープな肢体。自信たっぷりの笑顔が美しい。

「何だろう・・・?」

逢坂は、暗然とつぶやいた。

「何?」

「いや・・・。」

逢坂は、なぜか、横浜に残してきたガールフレンドを思い出していた。髪の長さが同じくらいなだけで、特に咲也と似ているわけでもないのに。

「どうぞ、入って。」

と、部室のドアを開けられて、逢坂は不覚にもドキドキしてしまった。

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