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06.初めての魔法

「やっほーーーーーっ!」


 フィリーは高台に登ってなんだか楽しそうだ。

 あの言葉を聞くと、ここは地球で日本なのかなと考えてしまう。

 さて、そろそろ魔法石の解析が終わるだろうか。


――マスター、ちょうど完了しました。予想通り時空粒子の結晶と呼べるものです。しかし、その中にあるものが封じ込められていました。ライターです――


 ライター?

 それは、カチッとして火が付くあれか?


――そうです。先ほどフィリーさんが火の魔法が習得できると言われました。おそらくライター程度の火が出るのではないかと――


 それはまた地味な魔法だな……。

 まあ便利そうではある。

 習得してみようか。


 左手の人差し指に魔法石を押しあて念じると……なんと体の中に入って行った。

 なんだか感覚的に使い方がわかる。

 その感覚のまま念じると……指の前にライター程度の小さな炎が現れた。

 うん、ライターのように使えそうだな……。


――マスター、体内研究所の空きスペースにライターが現れました。これを内部で改造することも可能のようです――


 ほほう、そうするとこのライター程度の火をガスバーナーにもできるってことか。


――はい、時間とエネルギーがあれば火炎放射器にだってできそうです。マスター、ぜひいろんな魔法石を集めて魔法を覚えましょう――


 テンションが高いな。

 まあ、魔法と言われたら俺もなんだか嬉しくなるよ。

 しかも俺の場合はホープが改造までしてくれるって言うんだからな。


――そうです。魔法を解明すれば他の魔法だって生み出せるかもしれませんよ――


 そうだな。

 この世界を調べつつ、そういう楽しみ方もしよう。


 さて、フィリーを待つだけも退屈だな。

 調査を手伝えるような拡張機能、もといスキルはないか?


――では、例のスキル習得をしますか。先ほどのボスネズミのおかげでエネルギー……ではなく経験値ことスキルポイントがたまっていますよ――


 そして俺の頭に浮かんでくる、ゲームマスターホープのお言葉。


 マスターのスキルポイントは635Pです。

 割り振るスキルを選んでください。

・解析能力Lv1……100P 左手で触れたものを解析する

・光銃強化Lv1……050P レーザーガンの威力を上げる

・俯瞰視点Lv1……200P 頭上に小型カメラを打ち上げ、50m四方を見渡せる

・時空錬金Lv1……500P 時粒子を活用した工作が可能

・倉庫拡張Lv2……500P 倉庫内に時間停止スペースを作る

・簡易工作Lv2……300P 工作物をイメージする際、データベースにアクセス可能となる

・火力強化Lv1……050P 火炎魔法ライターの火力を10倍にする


 ほほう、いろいろ増えたな。

 超巨大ネズミのおかげでいろいろ覚えることができそうだ。


――本来ならば怪我をした時に治せる機能を追加しておきたいのですが、まだ医療室が見つかっておりません。つまりそこで寝ていた沙耶様も見つかっていないのです――


 そうか……。

 スキルリストを見てテンションが上がっていたが、沙耶が見つかっていないのが気になる。

 いると信じたいが……。

 とりあえず捜索を優先してくれ。

 ただ、調査の手伝いに便利そうな解析能力と俯瞰視点の機能を頼む。


――了解しました。捜索と拡張を並行いたします――


 頼むぞ。

 沙耶さえいれば、俺たち3人はこの世界でのんびり暮らせるんだ。


 さらに少し待つとフィリーが降りてきた。

 なんとも興奮気味だ。


「この高台すごいね。あんな高いのに安定してるしさ。いろいろ見れたから調査が早めに終わりそうだよ」

「それはなによりだ。次はどうする? なんでも手伝うから言ってくれ」

「あとは植物の調査と、他にモンスターがいないか捜索するんだ。ここそんなに広くなさそうだし、高台のおかげで簡単な地図も作れたから早めに終わりそうだよ」

「そうか、今のところモンスターはネズミしか見ていないな。植物はこんな果物を見つけて食事にしている」


 俺はリンゴを取り出してフィリーに見せた。


「わあ、リンゴだね。これおいしいから好きなんだ。わたしもあとで見つけたら食べようっと」

「ああ、たくさんあるから食べていいぞ」

「そっか、じゃあいただきます」


 名前はリンゴでいいようだ。

 俺もリンゴを取り出して頬張りつつ、フィリーと一緒に歩く。

 今のところ手伝えることがないのが残念だな。

 移動しながらいろいろ聞こうか。


「ダンジョンの調査ってのは1人でやるものなのか?」

「そうだね、パーティを組んだりもするけどわたしは今ひとり旅だから。もし危険があれば逃げ帰っても構わないしね。どんな危険があるか報告すれば少しだけど報酬も出るんだよ」

「なるほどな……」


 先ほどネズミも倒したし、1人でも調査できそうだから続けるってわけか。

 

――きっと定番の冒険者ギルドもあるのでしょうね。それよりマスター、先ほどあなたがリンゴやボウガンを体から取りだしたのに違和感を持たれませんでしたね――


 ああ、そう言えばそうだな。

 無意識のうちに体内倉庫使ってたよ。

 この世界ではあんなことが出来ても不思議じゃないってことか?


――そうかもしれません。フィリーさんは先ほど使っていた大きな弓を持っていません。これを聞いてみてください――


 そうだな。

 いろいろありすぎてそういったことに気づいていなかった。

 

「なあフィリー、さっきの弓はどこにしまってあるんだ?」

「え? 魔法石の状態で体内にあるんだよ。さっきの魔法みたいなものだね。あなたのボウガンもそうでしょ?」

「ああ……そうなのかな。無意識のうちにいろいろやっているものでな」

「ふふっ、記憶をなくしても体は覚えてるってやつだね」


 俺の場合は体内の倉庫に納めているだけだ。

 フィリーの弓矢は魔法石の小さなサイズとなって体内に埋まっているらしい。

 さらにはかばんも体内に入れておけるようだ。

 まあ……俺のと似たようなものか。


「その魔法石もモンスターが落とすのか?」

「いや、これは人工的なものだよ。錬金術師さんが弓矢を魔法石化してくれるんだ。こうすると持ち運びも便利だし、劣化しても少しずつ元の状態の戻してくれるんだよ」


 ふむ、まるで時粒子を使って時を戻しているかのようだな。

 いや、きっとそうなんだろうな。


「もし新しい弓を手に入れた場合は? その魔法石は取りだせるのか?」

「うん、錬金術師さんにお願いして魔法石化解除もしてもらえるんだ」


 なるほど、錬金術師は何でもありだな。

 時空粒子という名の魔法を使った工作をしているようなものか。


――マスター、大変興味深いお話です。落ち着いたらぜひ錬金術について調査しましょう。私にも魔法が作れそうです――


 そうだな。

 沙耶を見つけたら3人でお店でもやるか。

 錬金術でホープの体も作れるかもしれないぞ。


――それは夢が広がりますね。ではマスター、たった今俯瞰視点の能力を習得しました。これを調査に役立ててください――


 そうか、後で使ってみるとしよう。

 俺とフィリーはちょうど砂浜までやって来ていた。


「青くて綺麗な海だな」

「わあ……わたし海って初めて見たんだ。まさかダンジョンで初めて見ることになるなんてなあ。あなたはあるの?」

「ああ、子供のころにな」


 目の前の景色は、戦争前の綺麗な青空と海そのままだ。

 戦争後に生まれた沙耶はこの景色を知らないことを思い出す。

 いつかきっと見せてやるからな……。


「なあ、ここはダンジョンなんだろう? この海の向こうはどうなっているんだろうか」

「たぶんだけど、ある程度進んだら見えない壁に阻まれるはずだよ」

「そうか」


 これまたゲームのようだな。

 おそらくこれも時空粒子で説明がつくんだろうが……。


「この砂浜はモンスターもいないし、特に何にもないんだね」

「そうだな」


 よし、ここで俯瞰視点を試してみるか。

 目を閉じて意識を集中すると……。

 俺が自分を見下ろすような景色が脳に映りこみ、それが上昇していく。

 上空から自分を見下ろす感じだな。

 迷子の時には便利だろう。


――俯瞰視点の際には私も気になった点をお伝えすることにしますね。北東の方角にネズミがいるようです――


 そう言われれば灰色のなにかが動いている気がする。

 このサイズだと、ホープに頼らないと俺だけではよく見えないな。


「なあフィリー、ネズミが他にいたら倒すべきなのか?」

「そうだね、放っておくと進化してボスネズミがまた現れるかもしれないからなるべく減らした方がいいんだよ」

「そうか、向こうの方にいるようだ」

「えっ? あなたってわたしより耳とかいいのかな?」


 先ほど確認した場所に行くとネズミが2匹のんびり過ごしていた。

 なんとなく凶悪さがない。

 ボスネズミを倒した影響だろうか。

 でも倒しておかないとな……。


「わあ、ほんとにいたね。じゃあ可哀想だけど倒そうか。ボスがいないときは可愛くなっちゃうからやりにくいんだけどね」

「なるほど、そうやってボスの有無が判別できるんだな」

「そうだよ、じゃあ1匹ずつ倒そうか」


 そしてフィリーは弓矢を放ち、俺はレーザーガンでネズミを倒した。

 あっさりとしたものだ。


「その魔法すごいね。すごいレアな魔法石だったんじゃない?」

「そう……なのかもな」

「そんなすごいの持ってるんだったら、街に行けばあなたのこと知ってる人いると思うなあ」


 このレーザーガンは魔法に見えるのか。

 さっき手に入れた魔法石はライターが封じ込められていた。

 そうするとこういった銃火器が封じ込められた魔法石もあるってことだろうか?


「こんな魔法使うやつを見たことあるか?」

「うん、大活躍してる人はそういう魔法使えるらしいよ。いや、そういう魔法があるから大活躍なのかな」

「そうか……」


 何気に危険な世界かもしれないな。

 核ミサイルとか封じられてる魔法石なんてあったらえらいことだぞ。


――もし見つけたら、無効化する方法を研究しつつ封印ですね――


 そうだな、あんな忌々しいものはこの世にあってはならない。


――はい、それとたった今解析能力のスキルを取得完了です。左手で触れたものについて瞬時に解析できるはずです。異世界へ行く物語では、最初にこういった鑑定スキルを習得するのが定番だそうですよ――


 よし、それもいろいろと役立ちそうだな。

 では沙耶の捜索を頼む。


――了解しました。今あるスキルポイントをすべて捜索用のエネルギーに使用してよろしいでしょうか――


 そうしてくれ。

 急ぎで必要なスキルは他にない。

 俺は手を伸ばして解析能力を発動させてみた。


――地球上とほぼ同成分の大気。差異として時空粒子が含まれる――


 ここはきっと間違いなく地球だ。

 沙耶……お前にこの海と空を見せたいんだ。

 頼んだぞホープ。

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