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04.巨大ネズミ現る

 研究所のカプセル以外で目覚めるのは久しぶりだ。

 お粗末な手作りの寝床ではあるが、人間らしさを感じる。

 おはようホープ。

 調子はどうだろうか?


――おはようございますマスター。お休みの間に体内研究所の解析を行っていました。できることは増えましたが、習得するにはモンスターを倒してスキルポイントを貯めてくださいね――


 解析も順調のようだな。

 ところでお前は休まなくても大丈夫なのか?


――そうですね。必要かどうかはわかりませんが少し休んでみようかと思います。よろしいでしょうか?――


 もちろんだ。

 人工知能といえども、休みつつのメンテが必要となるだろう。

 お前の調子が悪くなると俺は困るからな。

 ぜひ休んでくれ。


――ありがとうございます。しかし緊急時には呼んでいただければすぐ目覚めるようにしておきます。それではおやすみなさい――


 ああ、おやすみホープ。

 起きた時に驚くような成果を見せてやるよ。

 まずは朝食だな。

 昨日と同じようにリンゴ煮とジュースを作る。

 食事のレパートリーも増やしたいところだ。


 食事はあっさりと終了だ。

 なんとなく種だけ回収しておく。

 後々育てることもできるかもしれない。


 さて、今日やろうとしていることは簡易工作の能力確認だ。

 そして可能であれば高台を作って遠くを見渡す。

 生き延びるのも大事だが、人を探したいからな。



 30分後……。

 俺は自分の能力に惚れぼれしていた。

 ホープが拡張してくれた機能、簡易工作はかなり万能だ。

 例えば大木に手をかざして念じれば、あっという間に加工された木材になる。

 それらをツタと一緒にして念じれば簡易な足場もできる。

 もし俺に寄木細工の知識でもあれば、職人並みの建築もできるかもしれないな。


 さらには俺の体を倉庫にする機能もかなりものだ。

 木材など、俺の身長より長いものでもおかまいなしに入る。

 気分は某ポケット付きロボットだ。


 ひとつ問題があるとすれば、これらの能力を酷使すると疲労がたまると言ったところか。

 いや、疲労と言うより体から何かが抜けていく感じだ。

 ホープの言っていた時粒子エネルギーを消費しているんだろうか。

 なお、食事をするとエネルギー補給されるのか回復するようだ。

 今度ホープに頼んだら数値化してくれるかもしれないな。

 ゲーム風にするのが好きなんだから、データ化も好きだろう。


 そんなこんなで2時間後、俺は高いところに見晴らし台を作ることに成功していた。

 高さ10メートルほどではしごもついている。

 さあ、登って景色を堪能するかな。

 なお作っている最中も上には登ったが、もったいないので遠くは見ていない。


 なんともいい景色だな……。

 遠くまで緑が続き、その先には海が見えている。

 この大自然を沙耶にも見せてやりたかった。

 あいつは俺の体内研究所の医務室でちゃんと眠っているのだろうか?

 いつか助け出せればいいが……。


 さて、南方面は海があるということで次は東だ。

 おや、こちらも先に海が見えるな。

 そして北方面……こちらも海が見えている。

 まさかなと思いながら西方面に顔を向ける。

 遠くには海が見えていた……。

 ここは……島なのか?


 弱ったな……。

 ここが島なら無人島の可能性が高い。

 海の向こうはどの方向を見ても何も見えない。

 俺は船を作ってここから出なければならないのだろうか?

 せめて島になにかないものか探してみよう……。


 おや? 遠くの方に人影が見える気がするな。

 ネズミに追いかけられている?

 このチャンスを逃したくはない。

 俺は地形を目に焼き付けて高台を降りる。


 移動しているであろう方向へダッシュだ。

 ホープを起こして手伝ってもらう方が良かったかもしれないな。

 ネズミに倒されていないといいが……。

 

 予測地点に接近すると、幸いなことに戦っているであろう音が聞こえてきた。

 そちらに向けて移動しようとすると、同じ目的であろうネズミにも出会った。

 俺は慌てずそいつらをレーザーガンで倒していく。

 

 そして広いところに出ると……ネズミに囲まれて攻撃を避けている人間がいた。

 フード付きの服で顔を隠しているため、見た目はわからない。

 とりあえずネズミを倒して話をするかな。

 1匹にレーザーガンで狙いをつけて、あっさりと倒す。

 それに気がついた人間がこちらに声をかけてきた。


「ちょっと! むやみに倒しちゃだめだよ!」


 若い女性の声のようだ。

 倒してはだめとはどういうことだ?

 意味がわからず言葉に詰まっていると、女性はなにかをネズミに放り投げた。

 網? ネズミはそれに囚われて動けなくなった。

 ふと周りを見ると、同じように囚われたネズミが他にもいた。

 捕獲しようとしているのか?


『ギシャアアアアアアァァッ!』

「きたわね。って……大きすぎるっ!? やばっ」


 耳をつんざくような方向の方に顔を向けると、巨大ネズミよりさらに大きなネズミがいた。

 馬ほどのサイズがあるだろうか。

 これはネズミのボス?

 女性はいつの間にか弓を手に持ち、遠くへ離れていく。


「あなたも離れないとかみ殺されるわよっ!」

「わ、わかった……」


 あんなのに襲われたらひとたまりもないだろう。

 ひとまず距離を取ろう。

 幸いと言うか、ボスネズミは女性を追いかけている。

 女性は素早い動きで木に登っていく。

 距離を開けて弓を撃ち込むのだろうか。

 俺もそれにならって登りやすそうな木に登ってみる。


 ボスネズミは女性の登った木に体当たりをしている。

 木が揺れるせいか、女性は弓を構えることが出来ないようだ。

 ここからレーザーガンで撃ってみるか。

 小さいほうのネズミは一撃だったが、こいつにはどのくらい効くだろうか。


 3発ほど撃った結果……ほとんど効いていない?

 ネズミの灰色の毛が少し黒くなった程度だ。

 しかし不快だったのか、ボスネズミは俺の方を睨みつけ……こちらに走ってきた。

 あっという間に俺の登った木の下にたどり着き、体当たりを始める。


 やばいな……。

 そうだ、ホープを起こそう。

 すっかり忘れていた。


――おはようございますマスター。なにか緊急事態のようですね――


 そうだ、かなり巨大なネズミが現れた。


――了解しました。過去ログを確認いたしますので少々お待ちを――


 過去ログって何だ?


――マスターの見たもの聞いたもの、すべては記録に残っています。確認完了です。解析を開始しますので、なんとかしのいでくださいね――


 俺の行動が記録されているとは……説明要らずで便利だけどなんか恥ずかしいな。

 さて、どうやってしのぐべきか。

 レーザーガンが効かない相手をどうこうできるとも思えない。

 確かこの銃って厚さ1センチの鉄板も余裕で貫けたはずだぞ。

 それをくらって平気なネズミってありえるのか?


 ヒュィンッ!

『ギイャァァァアッ!」


 お? 女性が弓矢でネズミを攻撃したようだ。

 巨大な体がびくんっと震えて苦しんでいる。

 あの矢はレーザーガンより強いとでも?

 とりあえずこの隙に俺も何かしよう。

 銃以外で出来ることは、簡易工作しかないな……。


 ボスネズミは弓矢で狙われないよう、木の反対側にじわじわと回り込んできた。

 ネズミのくせして頭がいい。

 とりあえず登った木の上部分を切断してネズミに落としてみよう。

 頭でもぶつけてくれれば多少は効くだろう。


 ゴスンッ!

『キュエエエエエエッ!』


 なかなか爽快な音と共にボスネズミが苦しむ。

 レーザーは効かないのに、鈍器は効くってことか?


――マスター、試しに再度レーザーガンで撃ってみてください――


 わかった。

 たぶん効かないんだろうが、解析に役立ててくれ。

 ボスネズミに先ほどより近い距離でレーザーガンを撃ちこむ。

 しかし苦しむ様子は全くない。


――どうやら時空粒子エネルギーによるバリアのようなものが守っているようですね――


 バリアだって?

 あのレーザーガンを防ぐようなバリアだと、他の攻撃も効くとは思えないが……。


――不思議なことに、レーザーガンの時だけバリアが展開しています。矢や先ほどの木の塊が当たった際には何も起きていません――


 レーザーガンだけに効果のあるバリア?

 まったくもって意味がわからん。

 とりあえずそれ以外で倒せってことだな。

 なにかいい手はあるか?


――体内倉庫に木材とツタがあるようですね。これでボウガンを作って撃ちこむとしましょう――


 ボウガンの作り方なんて俺は知らないぞ。


――私がイメージサポートをいたします――


 ほほう、そんな便利なこともできるのか。

 ではやってみよう。

 材料を取り出して念じる……。

 頭の中に設計図のようなものが浮かんでくる。

 これがホープのイメージサポートか。

 そしてすぐにボウガンと矢が出来た。

 しかしやけに重いな……。


――素材を圧縮して密度を増しています。木材とツタですが、鉄製の本体とワイヤー並みの硬度になっているはずです――


 そういったこともできるのか。

 なんだかホープ先生とでも呼びたくなるな。


――ゲームマスターの方が私の好みですね。冗談はさておき、使用方法をマスターの頭にダウンロードします――


 そこは天の啓示を与えると言ってくれた方がそれらしいがな。

 使い方が頭の中に入ってくる……。

 矢をセットしようとしたところで、ボスネズミが立ち直って木に体当たりをしてきた。

 必死に木につかまり落ちないよう耐える。

 さらに周りを見ると、子分ネズミも集まっているようだ。

 あいつらは木に登れそうだよな……。

 さて、このピンチをどう乗り切るか。

 女性の助けを期待したいのだが、何故かネズミをむやみに倒すなと言っていたからなあ。


――マスター、非科学的な推測ですが、子分ネズミはレーザーガンで倒しましょう。詳細は後で説明します――


 うん? よくわからないがそうしようか。

 ボウガンはボスネズミに取っておくか。

 ホープ、照準の補助を頼む。


――了解です。木の振動とボスネズミの行動予測値の補正をいたします――

 

 片手で木につかまったまま、銃を構える。

 そしてホープの力を借りて子分ネズミを倒していく。

 木が揺れているのに命中率は9割以上となっている。

 ホープ先生、いや……ゲームマスターはさすがだ。


『グィヤアアアァァツ!』


 お? いつの間にか移動していた女性が矢を放ってくれたようだ。

 木の揺れが止まる。

 両手が使えるこの隙にボウガンを撃ち込んでみるか。

 矢をセットして狙いを付ける。

 

 ビュインッ! ビシンッ!

「グッギャアアアアアアアンンッ!」


 矢はボスネズミの眉間を貫いた。

 断末魔の悲鳴をあげて倒れる超巨大ネズミ。

 その巨体が光に包まれ消滅していく。

 そこから大量の青い光が俺の中に入ってきた。


――お見事ですマスター。巨大な敵は時空粒子エネルギー……もとい経験値が豊富のようです――


 お前の解析と、作ってくれたボウガンのおかげだよ。

 それにしてもこんな巨大なネズミがいるとはな……。

 レーザーを防ぐバリアまで展開できる生物って何なんだろうな。


――それよりマスター、先ほどの女性が子分ネズミを倒しているようです。手伝いましょう――


 おや本当だ。

 ボスを倒したら子分を倒していいってことなのか?

 とりあえずレーザーガンで敵を倒していこう……。

 話はその後だ。

 この世界で初めて出会った人間……どんな話が出来るんだろうな。

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