26.ホープ、はっちゃける
縦穴を登り、出口への道を探す俺たち4人。
なんとなくだが、出口に近づいているような気はする。
――マスター、ひとつ仮説を考えてみたのですが――
なんだ? 言ってみてくれ。
――モンスターが持つ魔力は本来であれば、倒された時に散ってしまいダンジョンに還るのだと思います。しかし、それを奪う者がいたとしたらどうでしょう――
ダンジョンの魔力が不足し……ダンジョンが崩壊する?
つまり今の状況になったのは、俺が魔力を回収しすぎたため……という可能性があるわけか。
――はい。仮説ではありますが、ここからはアリをなるべく倒さぬようにしておきましょう。周囲から魔力を吸収する機能もオフにしておきます――
そうだな……用心に越したことはない。
「なあみんな、今から出てくるアリたちは倒さないようにしたいんだ。フィリーの魔法でなるべく眠らせるようにしてくれないか?」
「え? いいけど……どうしてなの? たくさん現れたら倒さないと危険だよ」
「そうだな。説明しておこうか……」
俺がモンスターから魔力を回収できるって話もさっきしたしな。
隠し事無しで話してしまおう。
その方がこれからの道中も気が楽になるはずだ。
3人は俺の話を黙って聞いてくれた……。
「……というわけなんだ。今の状況は俺のせいかもしれない」
「ふむふむ……。でもね、その説があってたとしてもトーヤのせいじゃないよ」
「そうです。そんな申し訳なさそうな顔をしないでください」
「リズの言うとおりです。ここを無事脱出できれば何も問題ないんですから」
「そうか……ありがとうみんな」
なんだかみんな優しくて少しほろっときてしまった。
まだつきあいは短いのだが、これが仲間なのかなと思ってしまう。
――そうですね。マスター、私もその輪に参加したくなりましたよ――
ああそうだな。
仲間に俺の一番の親友を紹介しないといけない。
どこかで落ち着いたら紹介するぞ。
――よろしくお願いします。あと……いえ、これは脱出してからにしましょうか――
なんだか気になることを言うなホープ。
お前がそんな言い方をする時はなにか嬉しいことがあるときだろう?
深刻な話はすぐに教えてくれるものな。
――さすが私の大親友です。よくわかっておられますね――
もちろんだ。じゃあ楽しみにしてるからな。
それでは行こうか。
「トーヤ、何ぼーっとしてるの? はやくいこっ」
「ああ、すまないな。時々ぼーっとしてる理由も近いうちに話すよ」
「そっかー、えへへー」
なんだかフィリーがやけに上機嫌だな。
緊張する場面のはずだが、俺を元気づけようととしてくれているのか?
――フィリーさんは可愛いですね。私惚れてしまいそうです――
ん? よくわからないんだが……まあいいか。
楽しく冒険するのはいいことだ。
楽しそうなフィリーを見て笑顔になっているリズとディルを見てそう思った。
それからしばらく歩くと、アリがちらほら出てきたのでフィリーの麻酔銃で眠らせながら進んだ。
「フィリー、すまないな。戦闘を任せる形になってしまって」
「いいのいいの。それより魔力補充してほしいなあ」
「ああ、任せとけ」
俺が差し出した手を嬉しそうに両手で握ってくるフィリー。
猫耳はぴくぴく、しっぽはぴょこぴょこ動いている。
確かに可愛いのだが……なんで急にこうなった?
こんないちゃつくようなことをしているとホープに怒られるのだが……。
――フィリーさんが可愛いので見逃すとしましょう――
いやいや……なんだかお前もおかしくないか?
――私は恋も理解できる高性能AIですよ――
初耳だが……まあいいか。
なんだか照れくさい状態でフィリーへの魔力供給は終わった。
「トーヤ、ありがとね」
「ああ、いつでも言ってくれ」
「じゃあこのまま手つないで歩こっ」
「え? ああ……」
「ふふっ、フィリーったら積極的だね」
ほんとその通りだよ。
なんとも照れ臭いが、ホープも文句を言ってこないのでこのまま行くか。
そして……ついに出口に至る道を発見した。
これ以上おかしなことが起こる前に急いで出よう。
「ふー、無事出られたね。トーヤのおかげだよ」
「俺のせいで脱出できなくなったかもしれないんだから、そんな褒めないでくれ」
「だってトーヤのおかげだもん。ね、リズ」
「ふふっ、そうだね」
「と、とりあえず休憩にするか。ちょっと紹介したい奴がいるんだ」
不思議そうな顔をするみんなを座らせ、俺は食事の準備をした。
ではホープ、みんなに自己紹介だ。
俺の体内にあるトランシーバーを使えるよな。
――皆さま、初めまして。私人工知能のホープと申します――
「え? トーヤ……じゃないよね? だれこれ?」
「俺の中にもう1人いるんだよ。俺が時々ぼーっとしていたのは、こいつ……ホープと会話していたからだ」
「ええ? トーヤの中に?」
「ああ、詳しく説明すのも難しいんだが……要は俺の一番の親友なんだ。みんなに紹介したい。ホープもみんなと話をしたがってな」
――そうです。私もみなさんのお仲間に加えていただけますか?――
「う、うん……。ちょっとびっくりしたけど、トーヤのお友達ならもちろん大歓迎だよ」
「わたしもです。頭の中に声が響いてくるって不思議ですね。トーヤさんはいつもこうやってホープさんと会話していたんですか?」
「ああ、そうなんだ。物知りで頼りになるんだぞ」
「なんだかまるで、リポーズの街を作った発明家のようですね。彼も頭の中に声が聞こえてきたとか」
――ええ、私のお仲間かもしれませんね――
「わああ……じゃあやっぱりトーヤはすごいことをやらかすんだねきっと」
「ふふっ、フィリーってば嬉しそう。トーヤさんのことをさらに好きになった?」
「うん!」
「ええ!?」
「トーヤさん、フィリーのことをどう思っているんですか?」
なんだこの流れは……。
仲良くなった女子2名がそろうとこんな会話になってしまうのか。
ここは正直に言おう……。
「フィリーとは仲良くしていきたいが、俺には心に決めた人がいるんだ」
「知ってるよ。リポーズの街の女神でしょ。別にわたしはいいの。勝手にトーヤのこと好きになっただけだから」
「おお、フィリーってば言うねえ」
――フィリーさん、私も応援しますよ――
「わーい、ありがとうホープ。じゃあホープも大好きっ」
――ありがとうございます。嬉しいですよ――
ホープ……お前やっぱりおかしいぞ。
俺に浮気はさせないと言ってたのになんでそんなことを……。
――そのうち教えますよ。私は正常ですからね――
ふむ……まあいい。
正常であればいいんだ。
「よかったねフィリー」
「うん!」
「それにしてもトーヤさん、結構大きな秘密だと思うんですが……僕達に話してしまっていいんですか?」
「ああ、構わない。俺はある目的を果たしたら、フィリーの故郷復興の手助けをするつもりなんだ。だからフィリーと同じ出身の友達も仲間みたいなものだ」
「トーヤ……嬉しいなあ」
フィリーがいなければ、俺はこの世界で路頭に迷っていた可能性が高いからな。
恩を返したいんだ。
「じゃあわたしもフィリーと同じようにトーヤさんを仲間だと思いますね」
「僕もです。ではその目的を僕たちにも手伝わせてください。何をするんですか?」
「わたしはわかってるよ。リポーズの街の女神様を救い出すんだよね、トーヤ」
「ああ、そうだ」
――あの女神様の名前は沙耶様と言います。私にとっても大事な人なのです――
「そっか、じゃあ絶対に助けなきゃね」
「フィリーってば、恋敵を助けることになるのにやる気満々だね」
「もちろん。勝負を挑むには相手が元気になってからじゃないとね」
この世界の人間にとっては、女神様を助けるなどおかしなことを言っているように思うはずだ。
でも……深くは聞かずに俺に協力しようとしてくれている。
嬉しいな……ホープ。
沙耶、お前を助ける日も近い気がするよ。
この後、5人でしばらく会話を楽しむのだった。
夜はあっという間に来て、今夜はここで野宿することになった。
あ、ホープが脱出したらなにか言おうとしていたことを忘れけかていた。
なんだったんだ?
――実は例のダンジョンで見つけた謎の魔法石ですが、私のボディーが封印されていました――
なに!?
それは研究所にあったお前のロボットの体か?
――いえ、全く同じものではありません。正確には同タイプのボディーです。今はまだ無理ですが、そのうち外に出ることもできるようになりそうです――
そうかそうか、それはいいニュースだったな。
お前と一緒に歩いて冒険するのも楽しそうだ。
――はい、私もです――
では寝るとしようか。
綺麗な星空だな……沙耶とホープと……3人でこの星空を見れる日も近いはずだ。




