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21.土の迷路

 ダンジョンに入ると、その名の通り土で出来た迷路だった。

 崩れないかと心配したが、やはりここも時空粒子による謎障壁に覆われていた。

 ダンジョンはやはり謎に満ちている。


――なにか違和感を感じます。危険な感じではないのですが……なるべく左手で壁に触りながら進んでいただけますか。解析を進めます――


 よし、任せたぞ。


「トーヤさん、どの方向に向かいますか? 前回来た時の地図がこれです」

「ふむふむ……。あまり奥までは行ってないんだな」

「はい。敵はどんどんあふれてきますので、奥へ行く必要はないんです」

「なるほどな……。でも今回は人数が多いし、この地図を少しずつ埋めていこう」

「じゃあわたしが先導するね」


 というわけで勘の鋭いフィリーが先行、次に俺、ディル、リズと続くことにした。

 最後尾も近接戦闘が得意なリズだ。

 ここの通路は人が一人歩けるほどしかなく、くねくねしている。

 弓やブーメランは使えないだろうな。

 俺のレーザーガンも混戦時には味方に当たるかもしれないから使わない。

 基本は剣を使いつつ、パイルバンカーを試すとしよう。


「前から1匹来るよ。どうする?」

「フィリー、倒す手本を見せてくれるか」

「わかった」


 やがてアリが姿を現した。

 でかいな……体長50cmはあるだろうか。

 これが弱くて楽なの?


「はああっ!」


 フィリーがダッシュしてアリの脚を切断していく。

 なんとも華麗なナイフさばきだ。

 そしてバランスを崩したアリの首を切断してアリは動かなくなった。

 その体から青い光が出て俺の体に入りこむ。


「こんな感じ。弱いでしょ?」

「そ、そうか……。でも俺はフィリーほど素早く動けないからな」

「トーヤなら大丈夫だよ。あ、もう1匹来るから倒してみて」

「ああ……」


 なんか過大評価されてるよな。

 大丈夫だろうか?


――いざという時は私が動きをフォローしますので――


 そうか、ホープは俺の動きもサポートできるんだったな。


――はい。それとフィリーさんの戦いぶりを記録しておりますので、データが集まればモーションをマスターの体にダウンロードいたします――


 そうか、あの動きができるようになれば俺もかなり戦えるな。


――ただし、筋肉に負担をかける動きをすることになるので筋肉痛は免れませんが――


 俺も自分を鍛えることにするよ……。

 さて、アリが目の前まで迫ってきたな。

 パイルバンカーをぶち込んでみようか。

 俺は右手でアリの顔面を殴るように、それを発動させた。


 ドンッ!

 激しい音と共に、アリの顔がばらばらに吹っ飛んでいった。

 そして消えていく……。

 すごい威力だ。

 モンスターが倒したら消えるのはありがたいな……消えなかったらグロいぞ。


「トーヤさんすごいです……。わたしも格闘をしますけど、あんな強いパンチ初めて見ました。あれは魔法ですか?」

「まあそんなところだ」

「ね、トーヤってばすごく強いでしょ?」

「うん、フィリーが惚れこむだけはあるよ」

「ちょ、ちょっと何言ってんの……」


 惚れこむ……俺の強さにかな?


――マスター。鈍感な振りはやめましょう。恋愛経験のない私にもわかります。これまでの行動から見るに、フィリーさんはマスターに好意的感情を持っていますよ――


 やっぱそうか……。

 でも俺が沙耶……リポーズの女神に惚れこんでいることは知ってるし大丈夫だよな?


――あれだけでは不十分ですね。好きな男がアイドルに夢中になっているような感覚ではないでしょうか?――


 なんだか悲しい例えだな……。

 気をつけることにしよう。


――トーヤ、今のは何でもないから気にしないでね――


 フィリーからトランシーバーによるテレパシーが入ってきた。

 リズの冗談だろうから気にしてないぞ……と。


――そ、そうだよね……。じゃあ行こうか――


 なんだか残念そうに答えられた気がする。

 うーん、俺はこういうことに疎いんだがどうしたらよかったんだ? ホープ。


――私にもわかりかねますが、今の回答は不正解だったようですね。一緒に女心を学んでいきましょう――


 そ、そうだな……。

 いや、この場合あきらめてもらう必要があるから学んでもだめな気がする……。

 まあおいおい考えていこう。


「トーヤ、このあたりからどんどん増えていくと思うから気をつけてね」

「ああ、わかった」


 よし、今は戦いに集中だな。

 ところでここって巨大なアリの巣っぽいよな。


――そうですね。ダンジョンとは面白いところです――


 奥には巨大女王アリがいるんだろうな。

 そして今は横穴を進んでいるが、時折見える縦穴を登れば地上に出るのだろうか?


――どうでしょうね、見えない壁があるかもしれません。しかしアリたちが餌を探すには外へ出る必要があります。どうなっているか興味深いです――


 機会があれば調査したいが、今回は無理だろうな。

 まずは経験値稼ぎだ。

 少し進むと、大きめのスペースに出た。


「複数きてるっぽいからここで待ち伏せしよう。各個撃破ね」

「よし、なるべく俺が戦うからフィリーは周りを警戒しておいてくれ」

「わかった。後ろはリズとディルに任せたよ」

「うん」


 やがて姿を現すアリの群れ。

 俺は1匹ずつパイルバンカーを撃ち込んで打ち砕いていく。

 リズは華麗な蹴りや拳でアリをふっ飛ばしつつ倒している。

 ディルは大きめのブーメランを剣のように巧みに操りアリを倒していく。

 武器を無視すれば俺が一番弱そうだな……。


「まだまだ来そうだよ。ここ広いからしばらくここで戦おう」

「わかった。でもなんでここは広いんだろうな」

「アリがなにかを貯め込んでたらしいよ。入口から近いから冒険者に取りつくされたみたいだけど」


 食料かな?

 でも戦利品になるような食料ってどんなだろうな?

 さすがに虫の死骸ではないだろう。

 

 フィリーの言葉通り、アリがどんどんやってくる。

 急いで倒していこう。

 数が多いとありがたい。

 これはいい経験値稼ぎだ。


――そうですね、エネルギーをためてスキルを増やしていきましょう。あと余裕が出た時に戦利品を手に取っていただけますか?――


 そうだな、戦利品はたいしたことがないと言っていたが……。

 あたりにはアリの脚や触角、白い宝石? のようなものが落ちている。

 まず気になる白い宝石のようなものを手に取るか。

 解析っと……。


――巨大化した砂糖の結晶――


 砂糖なのか……。

 アリと言えばこの粒を集めるイメージがあるな。

 にしてもこんなでかい砂糖があるとはね。


――マスター、ここに来た時から感じていた違和感の正体がわかりました。アリが巨大なのではありません。マスターたちがダンジョンに入る際に小さくなっているようです――


 なんと……。

 アリや砂糖は普通サイズなのに、俺たちが小さいから巨大に見えているのか。

 でも……人間がこんなサイズになったらまともに生きていけないんじゃないか?

 砂埃にぶつかるだけで大けがしたりするんじゃないっけか?


――そのあたりは時空粒子による仕業なのではないかと……。時間だけでなく空間をも操れるエネルギーですし――


 便利だなあ、時空粒子。

 その曖昧な言い方だとホープにもよくわからないってことだな。


 なんだかアリ退治にも慣れてきて、のんびり会話しながら戦えるようになってきたな。

 こういう油断している時に何かしら起きるから注意しないとな。

 しばらく戦うと、アリ襲撃の波は終わりを告げた。

 いや……どちらかと言うと襲撃者は俺たちか。


「ふう、やっぱり4人もいると余裕だね」

「うん、トーヤさんすごく強いし。トーヤさんの使ってるその魔法いいですね」

「ああ、いいものを拾ったよ」

「うらやましいです。戦いに有効な魔法ってなかなか見つからないんですよね」


 そういうものか。

 戦いに有効な魔法となると、兵器の封じられた魔法石だよな。

 そういうものはあまりないほうがいいよなあ……。


「じゃあ戦利品集めようか」

「うん」


 そして大量のアリの脚や触角と砂糖の塊が集まった。


「この砂糖でトーヤにお菓子作ってほしいな」

「それは構わないが、これは売れるんじゃないのか?」

「それがね、ここで大量に取れるみたいで今すごい安くなってるんだよ。最初に来た人はこの部屋全体に集められてた砂糖を持って帰って大儲けしたんだってさ。うらやましいよね」

「ここは砂糖の保管場所だったんだな」


 リンゴがまだ倉庫に残ってたはずだな。

 新鮮な状態まで時間も戻せるし、あとで砂糖と一緒になにか作るか。

 パンにはさむのもいいなあ。


「それでこの脚と触角はどうなんだ? やはり大量にあるから安いのか」

「そうだね。脚は硬くていろいろ使えるらしいからまだいいけど、触角は使い道がわからないらしいんだよね」

「なるほどな……」

「あ、でもトーヤさんなら錬金術で使えるかも?」


 どうだろうな、ホープ。


――電気信号の伝達に使えそうですね。センサーやアンテナになるという感じでしょうか。今はまだ思いつきませんが、きっとなにかに使えます。いただいておきましょう――


「使えるかもしれない。もらっていいか?」

「うん、問題ないよ。いいものができたら見せてね。じゃあ他のを山分けと……」

「じゃあお礼というわけではないが、休憩用にお菓子でも作ろうか」

「わーい!」


 砂糖たっぷりの甘々リンゴジャムを作って、パンに塗って食べることとなった。

 ついでにたくさん回収できた時空粒子エネルギーも練りこんでみる。


「おいしい! これすごく甘いよー。おいしいなあ」

「それになんだか魔力がたくさん回復するような……。魔法はいざという時に温存してますけど、これならもっと奥まで行って戦えるかも」

「それはよかった。そういう効果もあるように作ったんだ」

「すごいです!」


 フィリーがいざという時にバリアを発動できるように魔力を回復させたが、他2人にも大好評だ。

 魔法は使わないのかと思っていたが、温存していたんだな。

 これでどんな魔法を使うのか見せてもらえそうだ。


――楽しみですね。いろいろ見ることで研究が進みそうです――


 ではアリの巣の奥へ行くとしようか。

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