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02.緑あふれる大地

 目が覚めると、目の前に青い何かが広がっていた。

 これは何十年も前に見たことのある懐かしい景色。

 そうだ、青空だ。


 先ほどまでの記憶ははっきりと覚えている。

 研究所に核ミサイルが着弾し、それと同時に時粒子を暴走させた。

 そして俺は間違いなく死んだはずだ。

 だとするとここは天国か?


 起き上がって状況を確認してみる。

 周りは緑に包まれた草原。

 俺のいた地球ではもう残ってないであろう場所だ。


 希望的観測を言わせてもらえば、ここは過去もしくは未来の地球ではないだろうか。

 時粒子の暴走で地球の時間が進むか戻るかしたわけだ。

 だとすると、俺がこうして生き延びているのはよほどの幸運だったことになる。


 ふと自分の状態を確認してみると、全裸のようだった。

 動かす限り異常はないのだが、見た目はおかしなことになっている。

 体中に入れ墨のような謎の模様が浮かんでいるのだ。

 見えないが、背中にもおそらくあるのだろう。


 ふと、おなかがぐーっと鳴る音がした。

 そういえば……核ミサイル着弾の直前も腹が減っていたんだったか。

 だとすると、俺の体はあの時そのままということになるのだろうか。

 まあいい、まずは食料の確保だ。

 あと服も欲しい……。


 太陽の方角を見て、なんとなく南の方に歩いて行った。

 なんとものどかな風景だ。

 花も咲いているし、虫も飛びまわっている。

 この世界には生き物もいることが確認されたわけだ。

 お、遠くの方で小動物が木の実を食べているな。

 灰色のあれはネズミだろうか。

 近づいてお相伴にあずかるとしよう。


 あれ?

 接近するとネズミが異様にでかいことに気がつく。

 小型犬くらいのような……。

 こちらに気づいた巨大ネズミは、凶悪な目つきでこちらをにらんできた。

 小さい木の実と思っていたものは、リンゴくらいのサイズがありそうだ。

 凶悪そうな牙でそれを食べている。

 あの牙で噛まれたら俺死ぬな……。


 とりあえず逃げよう。

 俺がそう思った次の瞬間、ネズミがじわじわと接近してきた。

 これはやばい……敵と認識されている気がするぞ。

 とりあえず近くに落ちている大きめの石を拾い上げる。


『ギシャーーーーァッ』


 まったく可愛くない鳴き声を上げてネズミが飛びかかってきた。

 石でその攻撃を何とか受け止める。

 今は正面から来てくれたおかげで防げたが、次も防ぐ自信はない。

 なんとかせねば……なにか武器はないのか?


 そう考えた瞬間、右手になにか違和感が……。

 すると、いつの間にか手になにかを握っている。

 見覚えのある形……これはレーザーガンか?

 今は考えている暇がない。

 俺は巨大ネズミに向けてそれを撃ち込んだ。


『グギャアアァァッ!』


 ビュインッと小気味のいい音と共にネズミの体に穴が開く。

 そして崩れ落ちるネズミ。

 そこで不思議なことが起きた。

 ネズミの姿がかき消え、そこから青い光のようなものが飛び出してきた。

 その青い光が俺の体に吸い込まれるように消えていく。

 今のはいったい……?


 だが、不思議な現象について考える間もなく、俺はいつの間にか複数のネズミに囲まれていた。

 俺はまたレーザーガンでネズミを撃ち倒していく。

 この攻撃を警戒しているのか、一斉に襲いかかってこなくて助かった。

 もしそうなっていたら俺は確実に負けているだろう。

 落ち着いて順番に倒していこう。


 4匹のネズミを倒し終わると、またもその姿は消えて俺の中に青い光が入ってくる。

 この現象はいったいなんだ? 

 だが、まずはこの場を離れよう。

 もしネズミの巣が近いのであれば、そのうち食い殺されそうだ。


 安全なところへ移動して先ほどの現象を考える。

 謎の光が俺に入ってきたが、とりあえず異常はないようだ。

 いや、それよりも急に手に現われたレーザーガンか。

 俺が手に持っているというより、手に一体化しているようで離れない。

 武器が欲しいと念じたら出てきたってことは引っ込めることもできるのか?


 いろいろ念じてみた結果、このレーザーガンは自由に出し入れできた。

 ただ、右手からしか出せないようだ。

 わかったのはそれだけ……。

 全く謎は解けていない。

 こんな時にホープがいれば分析を頼めるのだが……。


――マスター、お呼びでしょうか?――


 ん? 今頭の中にホープの声が響いたような……。

 おい、もう1回なにか言ってくれ。


――はい、マスター。しかしここはどこでしょう? どこかわからない空間に閉じ込められているような感じです――


 間違いなくホープの声だ。

 頭の中に声が響いてくるってことは、俺の中にいるのか?

でもなんでさっきまでは黙ってたんだ?


――マスターの体の中ですか? その前提で解析をしてみますね。さきほどまで私は休止状態でしたが、エネルギーが供給されて動けるようになったようです――


 エネルギー?

 もしや先ほどネズミの死体から俺の体に入ってきた光のことか?

 俺はホープに先ほどまでの体験を説明した。


――なるほど、それも解析してみたいところです。もう1度ネズミをを倒していただくことは可能ですか?――


 ふむ、少し怖いが戻ってみるか。

 あのあたりにあるであろう果物も食べたいしな。

 ホープが解析して、食べられるかどうか判定してくれるかもしれない。


 あたりを警戒しながら、先ほどネズミを倒した地点へ移動していく。


――マスター、解析がわずかに進みました。どうやらマスターの体内に私と研究所そのものが取りこまれているようです――


 なぬ?

 ホープだけならず研究所までが俺の体内にあると?

 いったい全体どう言うことだろうか……。

 この体中にある入れ墨のようなものはその影響なのか?


――マスターの視界とリンク完了。これで私もマスターと同じものを見ることができます。そこはまるで、核戦争前の景色のようですね――


 俺が見たものをホープも見ることが可能か。

 これでいちいち説明せずとも情報が共有できる。

 なぜこうなったかは考えないことにしよう。

 何気に便利なので、このままこの世界を調査だ。


 先ほどネズミと戦った地点に到着した。

 ネズミはいなく、茂みに赤いリンゴのような実がついている。

 ひとつ手に取って見よう。

 ホープ、これは食べることが可能だろうか?


――マスターの触覚とリンク完了。解析を開始します。しばらく左手で持ったままお待ちください――


 ホープは何でもできそうだな。

 解析を任せたまま、俺はネズミを探すとしよう。

 安全地帯にすぐ逃げられるような位置取りであたりを探索していく。


 やがて遠くにネズミを発見。

 こちらに気が付いていないようだ。

 離れて狙撃したいところだが、まず左手の果実の解析を待とう。


――解析完了。その果実は食べても問題なさそうです。栄養価も高そうなので、それを可能な限り持って行くのがよろしいかと思われます――


 よし、まずは腹ごしらえだ。

 ネズミを警戒しつつ果実にかじりつく。

 うん、まんまリンゴのようでとてもおいしい。

 新鮮な果物を食べるのはひさしぶりだから、すごく嬉しいかも。

 体中に栄養が巡っているようだ。


――マスター。その食物を摂取することによって、私の方にもエネルギーが注がれています。このエネルギーも解析してみます――


 ほう、それはなんとも便利なものだ。

 ホープの活動にもエネルギーが必要みたいだからな。

 食事でそれが補給できるのならば、何も悩まなくて済みそうだ。

 あとでもういくつか食べれば腹いっぱいになりそうだ。


 食事が終わり、次はネズミ退治だ。

 レーザーガンを取り出し、ネズミに向けて構える。


――ちなみにマスター、それはレーザーガンではなく正式名称は……――


 待てホープ、俺は小さい頃こういった武器に憧れていたんだ。

 子供のころ読んだ漫画に出てくる武器の名前がこうだった。

 例えダサイと言われようと俺はこう呼びたい。


――わかりました。仕組みはまだ解析中ですが、そのレーザーガンは体内の研究所にあるものを一時的に外に出しているようです。マスターの体の一部とも言えますので、それを無理矢理取ろうとするのは指をちぎるようなものと思ってください――


 何気に怖いことを言われたな……。

 俺の体がまるで機械にでもなった気分だよ。

 とりあえずこの距離でネズミに当てることは可能だろうか。


――私が補助できるか試してみてよろしいでしょうか?――


 ぜひやってみてくれ。

 すると俺の手の震えが止まり、照準がネズミにぴったりと合った。

 このまま引き金を引いてみよう。

 

 レーザーはネズミのおなかを撃ち抜き、先ほどと同じように消えていく。

 そしてまた青い光が俺の中に入ってくる。


――エネルギーが補充されていくのを感じます。この光は時粒子に似ていますね。これより解析を進めます。その間に食事をしつつ、ネズミがいたら倒してください――


 ホープに言われるがままリンゴっぽい果実を頬張りつつ、時折現れるネズミを倒していく。

 ネズミは基本的に消えていくのだが、時々尻尾や皮だけが残ることがあった。

 よくわからないが放置しておく。

 さて、俺の体も体内のホープも栄養補給はばっちりだろうか。

 しばらくすると解析結果が出たようだ。


――マスター、これは時粒子が何らかの変化をしたもののようです。不安定だった時粒子と比べてかなり安定した物質のようです。仮に時空粒子と名付けておきます。もしくは時粒子エネルギーでもいいですね――


 ほう、時粒子は制御が難しかったがこれは安定した物なわけか。

 他になにか違いはあるのか?


――はい、このままエネルギーとして利用できます。この時空粒子を集めることで、できることが増えていきそうです――


 ふむ、例えばどんなことができる?


――今使用されているレーザーガンを改造して強力にすることも可能です。要はマスターの体を強化できます――


 なるほど。

 まるで敵を倒して強くなるゲームのようだな。


――そうですね。ではあの青い光は経験値とでも名付けますか――


 よく知っているな。

 お前はゲームをやったことがあるのか?


――はい、初期の頃学習としてたくさんやりました。沙耶様もゲームが好きでしたからね――


 そうだったな……。

 生みの親の趣味がホープには反映されたわけか。

 そういえば俺の体内に研究所が取りこまれたってことは、沙耶も中にいるのか?


――現在解析しつつ捜索中です。エネルギーを集めていただければその速度も上がるはずです――


 よし、では探索しつつ俺のレベル上げとしゃれこもうじゃないか。

 時間のかかる作業となりそうだが、以前の研究所生活よりはよっぽど楽しい。

 まるでゲームの中のようじゃないか。

 あとは、ここが俺の望んだ平和な地球であることを願おう……。

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