春を探しに
正体のない蔑みや
縮こまった足跡や
空回りする善意たち
日常のほんの瑣末なささくれたちが
煩わしくて仕方なくなったら
わけのわからぬ泣き言を
叫び出してしまう前に
重く湿ったコートを脱ぎ捨て
春を探しに出かけよう
つくし
タンポポ
みつばちの羽音
きらめく水面を渡り
優しく頬を撫でる風
林檎とチーズのベーグルと
ほんのり甘いミルクティーを
自転車のかごに放り込み
白く緩んだ青空めざして
ぐんぐんペダルを漕いでいく
菜の花に埋もれて
あたたかな光の粒に溶け
幼子のように
ぐん と手を伸ばし
空の大きさに広がりながら
霞と一緒に立ち昇っていくのだ