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手ぶらの魔法使い  作者: 手ぶらの魔法使い
9/22

王子のお仕事 その3

チーロは朝まで起きていてくれた。

気遣ってくれたんだろう、お陰で疲れは全然残っていない。

お礼に何かしようと思ったけど、お金くらいしかなかったので断られた。

王都に来たときに酒を奢ると約束した。移動の途中、実はオウルズを掃討するのが目的だと告げると、奪還ではなくて掃討なのか?と驚かれた。

奪還なら手伝ってもいいが、戦闘は厳しいと正直に断られた。

前に一度パーティを組んで奪還をしにいったが収穫なしだったという。



そのときの話を一通り聞くと確実にオレより格上なのは3人。

全員剣術は極上、魔法は炎でごり押ししてくるやつが2人。

あと1人はオールマイティなやつでそいつがボスのオウル。オウルは西の果ての国ニージャの魔導士。小国とは言え、ランク7までいったマジでヤバいやつらしい。


この3人は仕事がないときはアジトに必ずいるらしい。

その他は大体オレと互角のやつが10人くらい、あとは雑魚が多分30人前後の合計50人ってところだ。


聞く限り非常にマズい。


まあ雑魚は余裕やろ、数は多いけど大したことない。


互角のやつも10人くらいならいける、裏技仕込んでるし、一発勝負なら負けはない。


で、問題は格上の3人か。


炎の2人?ランク6か7ってところかな?タイマンなら勝てる、はず。そもそもランク6相手にタイマンで勝てなきゃ話にならん。いや、オレはまずユー以外に一対一で負けた事ないし。



で、問題はランク7確定のオウルか。


7って…剣術はマキロイくらいか?魔法でいうと未体験ゾーンだな、いや、ユーがいるから威力は分かる。

魔法使い一歩手前か。


あれ? 7? おかしくない?

この仕事ランク6だろ?で、出てくるのはランク7のエリートか。小国だからってなめてんのか?


もうやめてくれよ…。




お昼を過ぎる頃、チーロと別れることになった。ありがとう、王都に来たらトンデモ屋で夜に会おうと言って別れた。




しばらくアジトに向かって走ったところで立ち止まり、ユーに話しかけ食事をとる。


時間に余裕があるから、まずは空の宝物庫に寄って封印式を確認することを伝えた。


ユーは適当に相槌をうつ。


とことん手伝わないつもりだな。




二時間走って宝物庫に着く。


パッと見ても分からない。ただの岩場にみえる。

ユーは夜な夜な出かけてこれを探してきたのか…いや、誰かに聞いたのかれないな。


封印式を確認してみる。


おお、複雑だ。


明らかに3人がかりの仕業だな。


対象式が一対、それをぶった切る形で一式。


ふむふむ、これをみる限りランク7ってのは本当っぽいな。でもオレは秘密基地の住人、超天才魔法使いとの研究成果を持ってきている。


いや、これ解けるわ。


オレも大したもんだな。カンニングなしでもいける、これをこうしてこうすれば、はい、おしまい、だな。


封印はかけるより解く方が簡単だからね、しょうがないね。


試しに開けてやろうかと思ったけど、宝物庫どうしが繋がってるみたいでやめた。解いたらバレるね、間違いない。




アジトに向かおう、殲滅してその後お宝をゲットして帰ろう。


ここから二時間くらいの距離にアジトはある。チーロさんの話によると広域警戒線が張られていて、隠密行動で各個撃破は難しいらしい。その範囲はおよそ半径300メートルで、中心にオウル達3人が固まっている。そして結界の端に宝物庫の封印が納まっている。


うーん、どうもいい案が浮かばない。


ユーなら正面突破でものの3分で終わるだろう。デビュー戦で実質ランク8の過誤持ちキメラを秒殺したらしいし。


馬鹿じゃないの。


酔ったタカさんから何度も聞いた。


嘘だろ!?いや、本当なのはユーを見てれば分かるんだけど、初実戦でそれ?

初めて聞いてから3年経つけど、今だにユー以外で魔法陣の打ち消しとか乗っ取りとか言ってる人見たことないしね。暴発なら実験で何度か起こしたけど。


ああ、ダメだ。作戦考えないと。


正面からは無理。


雑魚を倒してヒット&アウェイならどうか?


数は減らせる。宝物庫があるなら必然的にオウルの動ける範囲は限られる。これならいずれもは三人だけを残せる?


ダメか?警戒魔法の範囲のマックスが伸びたらボスがいきなり出てくるかもしれない。あと、部下に宝物庫を守らせてのボス突進もヤバい。いや、ボスが単身で突っ込んでくるのは逆にいいのか。


悩むなあ、もっと力があればシンプルなのに。

ユーならもう昨日の時点で終ってて、朝には帰ってきてる可能性すらある。


うーむ…逆に宝物庫から先に開けちゃうのはどうか?回りの敵を蹴散らす、で、速攻で封印を解く。

すると?

300メートルだから10秒くらいでやってくるな。

ダメだ。

これ無理だろ。


基本は夜襲だろう。いや、魔法で警戒されているなら暗くても同じか。最初の感知を遅らせたい、明るいうちに一撃かまして逆にバリバリ警戒させて、警戒魔法を広げさせるのもいいかもしれない。


まずいなあ、考えがまとまらないうちに着いてしまいそうだ…。

ユーは面白がってるんだろうか。悔しい、腹立つな。


決めた。夜襲で仕留める。

陽動でバラけさせて多少の数の不利は力押しだな。最悪の場合最速で逃げる、全力で逃げればオウル以外には追いつかれないだろ、追い付かれてやられたらそれまでだ。


「ユーなら警戒にかからずにオレの近くにいられるか?敵から見たら一人に感じられるようにさ」


「うん、出来るよ。こないだ一回やってみたからね、ヒントあげようか?」


「いいよ、じゃあさ基本はさ、適当についてきてよ」


さぁ、仕込みを始めるか。









スターチは落ち着いてる。うんうん、とりあえず敵の数を把握しないといけないよね。アジトまであと2キロ弱くらいの所でゴソゴソし始めた。

ガリガリと魔法剣のさやで魔法陣を地面に描き始める、索敵の陣だな、丁寧にやってる。

場所を変えてまた同じ陣を描く。

6回同じ事を繰返して終わった。


うん、なかなかいい発想だな。相手の索敵の外側から巨大な六角形の陣で全体をマーキングして把握してしまう。相手には感づかれるけど、こちらの居場所はバレない。まあ相手の索敵範囲が半径2キロまで伸びたらマズいけど、多分ないでしょ。


それで?ああ、宝物庫の方に移動した。よしよし、悪くない。見回りがいるけどまあ見つからなさそうだな。警戒の魔法も範囲外だ。爆発のトラップやら何やらを沢山ばら撒く。

次は宝物庫の反対側に仕掛ける。



そして暗くなるまで待つ。



「ユー、行くぞ。二時間で終わらせる、それを過ぎたら逃げるからよろしく」


オレは丘の上に作った索敵の魔法陣の1つを突っつく。

各所の陣が反応し、見えないドームがアジトがあるであろう範囲を包み込み、目の前に範囲内の人間が映し出される。


沢山いるけど、思ったより少ない。ひとつ、ふたつ、みっつ…


33人か。残りはどこだ?チーム組んでどっか行ってんのか?ラッキーかな?昨日も四人倒したから、そういうのが何組か出てるのかもしれない。いや、オレ全然敵の事知らないな。


で、真ん中のこいつらがボス格か?2人しかいなないぞ?お、気付いたな。移動を始めた、宝物庫の方か。よし、よし予想通りだ。


あ、3人で固まった。


警戒範囲が伸びた。マックスか?直径で1キロくらいか?一安心だ。


もう少し宝物庫の方に片寄ったらスタートだ。


トラップはバレてないな、ランク7が近づいたら消されるはずだ。

よし、ボスどもが宝物庫についた。




ズドーーーン!

ドカーーン!ドカッ、キーン!




「敵襲だ!!!!宝物庫周辺!数は不明!こっちの数は知れてるぞ!スリーマンセルで固まれ!!」


「オーーーーッ!!」


「オウルさん、どうしますか?」


「オレ達は宝物庫を守る、三人で固まればどこぞの軍隊かランク7が何人かで来ない限り破られることは無いだろう。最近でそんな大きな動きは聞いていないし、問題はない。地の利もあるし、守りを固める。もっとも、魔法使い級が単独で乗り込んできた場合は逃げるしかないが」


「よーーし!野郎ども!守り中心に手堅くいけ!!」


「今のところ近くに敵の気配はない。トラップももうこの辺には無いな。こちらは超広域で捕捉されていると見て間違いない」


「来るならこちらと反対側からですかね?」


「セオリー通りならそうだろうな、手薄な方から数を減らす。来たぞ、まず一人だ。試しにランク5の組を一組向かわせろ。多分やられるが」









ーオレは宝物庫の方のトラップを全部炸裂させた、そこからは展開が速い。

敵陣を片寄らせ、逆から攻め入る。

相手はそれに対応し守りを固めるが、三人がこちらに向かってくる。


これは?ボス三人か?


流石に違うか?こちらの数はまだ知られていない、宝物庫を離れることはない、だろう。


よし、手始めに数を減らそう。


ぶつかる!

見た感じボスじゃない!雑魚二人と強そうなのが一人!

魔力は温存したい、剣で応戦だ。来る、雑魚が挟撃?強いのは魔法を構えた。速い!


ヤバい、食らうか?


挟撃をかわし、カウンターで二人を切り捨てる。雷の魔法が飛んでくるぞ!?

かわせない、レグガードを起動する!

危ないっっ!いや、余裕はある、追撃だ!ここでこいつに引かれるとオレの動きが知れる。


やる!


キン!


ガッ!

ドガッ!


二度三度と剣をぶつける。いける、急所を一突き、終わりだー






「おお、早い。あっさりやられたみたいですね、かなり強い。放っておけば単身でもここまで来るかもしれない、どうします?オウルさん」


「確かに、こいつが主攻でこちらの数を減らし、残りがここを囲む。ってところか。なるほど、戦力によっては分が悪いが、コイツを発動すればここでオレ達が負けることはない。待とう。

とりあえず2組を敵に向かわせ、1人は様子を見て引かせろ。残りの組はこいつを持って索敵だ」





ー2組がこちらに来る、やる気だな。ここはいったん引く。

気配をあえて探らせ、後を追わせてトラップにかける。

先行する3人、一歩下がって1人、その後ろに1人、最後に1人。


炎のトラップが作動し、先行の1人が離脱する。残りは空振りで後続に潰される。


やるしかないな、1人ずつ。おそらく最後のやつは逃げるつもりだろうが、そうはさせない。


最初の2人は弱かった、攻撃をかわし一太刀、返す刀で2人目。魔法が連続で飛んでくるものの、剣で何とか弾く。

ん?後方の一人が離脱する、もう逃げたるのか?早い判断だ。

目前には二人の魔導士が魔法を連発し距離が詰められない。動きも素早いな、ダラダラやるのは分が悪い。

よし、圧倒させてもらう。


剣を鞘に収める


魔力に反応し避けようとする敵二人だが


「遅い!ソングオブウインド!」


森の木々と敵を切り刻む一撃。


よし、いける、オレもそこそこやれるな。範囲の調節も上手くできてる、疲れもないし、魔力も節約できてる。


一人には逃げられたが流石にあのタイミングで引かれるとお手上げだ。追い付く頃には本陣とご対面してしまう。




ーおお、スターチ、やるね。ひとまず8人を倒したから、あと25人か。まだまだいるなあ。

あ、マズイ。索敵されようとしてる。

単身で来てるのがバレるか?いや、主攻が深入りしてると判断されるか?

さっきのソングオブウインドを見て相手がどう思うか、だな。

ここは待つのかな?いや、索敵の妨害に向かうのか、いい判断だ。

結局のところ、数を減らさなきゃ話にならないしね。

索敵でバラけた所を狙うのはいい。




「ガキが一匹か…。そして高速のソングオブウインド。何にせよ攻撃力は相当なもんだな」


ーまあ単独で主攻をやってるんだから当然か。索敵も妨害されてる。あ、一組やられた。やるな、手際がいい、優秀なやつだ。手ぶらの魔法使いってガキだったよな?いや、あいつが来たらそれこそ終わりだ。


ん?でも嫌に真面目に索敵を潰すな?


これは?凄いな、周りに全然仲間の気配がない。こんだけ深く入り込んでると殆ど単独潜行だ。馬鹿なのか?いや、単独で来るなんて魔法使いじゃないとありえない。そして魔法使いならもう潰されてるな。

これを知られたく無かったのか?ほぼ単独だと知れると一気に叩かれるからな、だから真面目に索敵を潰した、と。

で、この魔方陣。バランス的に言って六角形のやつか…直接オレ達の誰かがいけば潰せるが…それは良くないな。


ああ、また一組やられたな。


ただ、すぐさま援軍に囲まれる心配はなさそうだ。放っておくと仲間がいなくなってしまうな、一気に叩いてけりをつける。



「おい、散った奴らを呼び戻してこい、数は減らすなよ」






ーガンガン敵を削っていく。残りは13人。持ってた物からして広範囲で探られただろうから、単独かそれに近い状況ってことはバレてるな。

スターチはどんどん手際が良くなっていく、見ていて楽しい。

あ、引いていくぞ?判断が遅いな。いけ、そいつらだけは仕留めとけ!よし!

あと9人!

流石に少し疲れたか?

敵は宝物庫に固まってしまった、もう打つ手は無いかもしれない。

僕なら面倒だから土砂降り一発で薙ぎ払って終わりだな。


ーどうしよう、後9人だ。ボスは宝物庫にいるな。終局が近い、のか?少し近付いた感じでは正攻法では勝てない感がかなり伝わってくる。ただ、攻めてくる感じもない。多分、えげつないトラップがあるような気もする。これ守りを固められたら手が出ないな。周りをウロチョロしてみようかな、飛び出してきたらそいつを叩く。





「オウルさん、こいつ寄って来ませんね」


「まあ当然だな。かなりの実力者だろうが規格外って程ではないな。突っ込んでくるレベルのやつならもう終わってる」


「どうしますか?こっちは後9人ですよ、かなりやられました」


「攻める。ジン、ドウ、行くぞ」


宝物庫を空ける味方は今こいつにはいない、ならばこいつを倒せば終わりだ。









「スターチ!来たぞ!」


「分かってる!黙って見てろ!」


急襲だ、まあ妥当なところだろう。周りに援軍がないと分かればスターチを潰せばゲームセットだ。

部下達は宝物庫から動かない。

三人だけが固まって迫ってくる。

相手がランク7ならもう射程圏だぞ?分かってるか?

お、構えた。相手のスピードはそこそこ、全力でレグガードを発動させれば1対3でもいい勝負が出来そうだ。

スターチは六角形の魔法陣を解除した。

いい判断だ、もうこうなっては大した意味がない。



ー凄いプレッシャーだ。

オウルは一目で分かった。確実にオレより強い。あとの二人はどうだ?オレと大差ないくらいか?森が開けた所で待ち構える。

一発光の魔法を発動させる。辺りが強烈な光につつまれ、昼間のような明るさになる。逃げも隠れもしないぜ?


明るくなったことで多少警戒されるも、向こうの出方は決まっている。攻めてくる。


来る!三人が魔法を構えた!


なんだ!?あの魔法?攻撃じゃない?

ん?何か半球が迫ってくる!

速いぞ!?これは!?かわせない!!喰らった!


ん?何ともない…?いや、ヤバい、体が重い。重力場か?

いや、違う。重力場じゃない!風魔法だユーがたまに使ってるやつ!

うーん、遅い。レグガードをオーバーヒートさせればワンチャンスってところだな。


冷静になれ。すぐ来るぞ!二人は炎の魔法か、オウルは何か力を溜めてる。


まず基本に帰る、魔法の盾だ!魔法障壁G6!指輪から光を纏う。ユーに習った裏技だ、そこらの魔法は完封できる、はず。体は少し軽くなったが、指輪の魔力は空っぽになった。剣術はもう無理だ、このスピードじゃ間合いに入った瞬間殺される。

後は?仕込みの氷魔法か?撃ってダメなら終わりだ、まだ早い。




「ジン、ドウ、やはりただ者じゃないぞ。あの身に纏った光、見たことないが魔法障壁だろう。ただ、動きは封じた。それ、とりあえずぶつけてみろ」



ー炎の球体が向かってくる、ランク5だ。これなら何発くらっても問題ない。スターチはかわす、横に。スピード的にはギリギリだ。うん、かわした方がいいな。魔法障壁の強度を悟られるからね、みる限りランク7一発くらったらヤバいくらいで、6なら5,6発は耐えられる。

やはりスターチは凄い。僕の裏技とはいえ上出来だ。

二人が再び魔法を構える、ランク6だ。



「かわした、あれだけの障壁、ランク5が防げないってことはないだろ。次は6でいけ」



ーなんとかかわした、多分当たっても問題ない、でもかわした方がよかった。もう二発くるか?こいつら強いな、魔法が速い。一人倒せばこの風の結界がとけるのかな?剣術が使えればなんとかなるか?

ヤバい!きた、炎ランク6だ!広いやつと狭くて強いやつだ!かわせない!どうくらう!?もう、やるしかねえ!



ズドーーン!!

ドカーーン!

バーーン!



爆発が起こる!スターチの姿が消える


「き、消えた!?」


「ジン!!避けろ!!!」

ドウが叫ぶが間に合わない。



ジンに右前方から歪んだ空間が高速で迫る!!


「速いっ!」


ザクッ


スターチの剣が突き刺さり、ジンは一瞬で凍りつき、崩れ去る。


風の結界は消えた。


ドウはスターチに斬りかかるが間一髪で受ける。その瞬間剣が爆発し、それに乗じて両者は間合いをとる。




ーよっしゃーーー!!!成功!完璧だろ、これ!ランク6の爆発に乗じて迷彩マントで身を隠す、レグガードは壊れたけど斬り込んでやってやった!体も軽くなったし、まだ戦える!


「大したもんだな、ランク6なんて物ともしないのか、しかもカウンターでジンを切り捨てる」


「オウルさん、ヤバくないですか?」


「ヤバいな。もう出し惜しみはなしでいこう、どう考えてもそこいらのガキじゃない。逃げるのもしまらないし、流石にオレのが上だ」


「じゃあ後は頼みますよ、オレは出し尽くしますから」


ースターチは上手く戦ってる。あと一押しだ。もう全力でくるのは分かってるから力比べするのが早い。オウルはランク8の雷魔法か、手下の男は…お、ランク7使えるのか。炎が得意なのは本当だったか。

え?ランク8?凄いな、こいつ。魔法使い一歩手前ってのは伊達じゃないな。

スターチ死んじゃうね。

氷の指輪でも防げないな。全力でなんとかしても、オウルには少し余裕あるし、負けるな。

僕ならどうしようか。打ち消してもいいけど、どうせ倒すなら跳ね返すのが早いな。

あとは、なんか超絶強い魔法で全部飲み込めば勝てるけど、そんな用意あるんかね?



ーよしよし、想定内だ。どうせ強い魔法が来るんだろ、やる事は決まってる。

死ぬ気でぶちかまして、全てを飲み込む。これが出来るなら最初から正面突破でいけたかもしれないな、と今になって思った。オレかなり強いじゃん。いや、勝てれば、の話か。

って、アレ?ランク8と7か?ヤバい。見たことあるな。ミスったら死ぬな。ユーは近くにいるか?まだ何もしてこないってことは、可能性あるってことだろ。


「ドウ!やれ!」


炎のランク7!


ドウっていうのかこいつ?

《ピーキーエッジ》の魔法陣!


速い、すぐ来るぞ!?


炎刃が広範囲に飛ぶやつ!

魔法障壁G6じゃ防げない!知ってる。


ドウにワンテンポ遅らせてオウルが魔法を放つ


《ジ アップセット》


オウルの目の前に魔法陣が出現する。

ランク8の雷魔法、範囲が狭い分威力が凄い。ユーのやつを見たことあるけど、炭を残して死ぬ。


勝負は一瞬だ、懐から銀の杖を取り出す。裏技中の裏技だぜ、ほれ、かかってこい



ーおお、やっと出した!随分前に加護持ちの目玉を使って作ったやつ!僕は邪魔だからってスターチに持たした、スターチも剣があるからってあんまり使ってなかった。

ただ張り切って作ったから、剣よりも圧倒的に魔力は強い。

最初からそれ使えば良かったのに。


ーこの杖、使いこなせればオレは明日にも魔法使いになれる。

それは無理だけど、一点豪華主義なら話は別!!

オレは杖を小さく振る。


「ブレイクレスト」




「なんだこりゃ!?魔法が発動しねえ!ヤバい!いけっ!押し負ける!?出ろ!ピーキーエッジ!!」


ズドン


ドウの前の魔法陣、ピーキーエッジが弾け飛ぶ!



ーマズい、暴発か!?銀の杖、なんだあれ?押されてるのか?出力を上げる!?大丈夫か?《ジ アップセット》発動をキャンセル!?出来るわけない、そこまで使いこなせたらオレは魔法使いの道を諦めることもなかった!

ならば!押し切るしかない!!!


ーおお!凄い、暴発させてる!割り込みとか打ち消しじゃないけど、ひたすら爆発させるやつ!実験で何回かやってたな!あとは押し合い!ブレイクレストっていうの?かっこいい名前だ!


ーいける!?炎の方は潰した!!あとはアップセットの方!押し負けるか!?杖はまだ余裕ある!

あ、オレの魔力がまずい。調子に乗りすぎたか?いや、よくやってる方だ、ランク8の魔法と互角だ!!

気合いでいけっ!剣から魔力を引き出せ!後は?何かあるか?


ない!


くそ!やっぱ強い!ダメだ!!ー








「はい、おしまい!」


いきなり目の前に一人の男が現れた。


「何だ!?」


若い、こいつら仲間か!?


両手を挙げて手のひらをこちらに見せる。


「貴様!?《手ぶらの》!?」


「そうだよ、バイバイ」


左手で手を振り、右手でパチンっと指を鳴らす


ガキと押し合っている魔法陣が膨らみ、オレを包む



ーああ!ダメだと思ったら一瞬で全部終わった!ユーだ!!この野郎!!くそっ!

いや、助けられなかったら死んでた!


パチパチパチパチ


「凄いよ!スターチ!あとちょっとだった!!」


収まり切らなかった…


次は王子のお仕事のエピローグと繋ぎ回にします

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