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手ぶらの魔法使い  作者: 手ぶらの魔法使い
8/22

王子のお仕事 その2

この四日間のユーはかなりのスパルタだった。

準備リストを書き上げて、これだけは絶対にやっておくように、と指示を出してくれた。

自分は研究室にこもって何かをやっている、かと思ったら外に夜な夜な外に出ていっていた。

オレはなるほどなるほど、と準備を通して今回の作戦を予想していくのはかなり楽しかった。


準備を指示されたのは


・迷彩マント(85%)

ー昼夜通して迷彩率72%が限界だった


・高速移動レグガード 三日分

ーうん、多分三日はもつっしょ


・光の指輪

ー閃光魔法、浄化魔法、光の盾が素早く発動出来るように、とのこと


・氷の指輪

ー超威力の範囲魔法を一発仕込んでおけ、とのこと そんな魔力余裕ないよ?下手したら死ぬよ?


・魔法剣への魔力の充填

ーいざとなったらこの魔力を吸収して復活しろ?あぁ、それで氷の魔法を使うのか…って、剣から魔力ってどう吸収するの?これが一番難しかったけど、なんとか使えるようになった。オレも捨てたもんじゃない。


・古今東西封印解除の魔法(お宝を奪還する!!)

ー宝物庫破らないといけないもんなあ。前に一緒に研究したことがあるし、その本を持っていって考えればいけるかな?復習しとこ


・野盗を出来るだけ殺さず捕らえる方法(最悪殺してもいいよ)

ーいや、それが難しいんでしょ。何人かは格上なんだからさ。格下のやつは縛ってしまえばいいんだけど、格上のやつはどうしよ。殺す方が簡単だよなあ。危なかったらユーが助けてくれる、でも多分出し惜しみしてたら助けてくれないな。絶対これ無理なら殺せって意味だし。ならアレを使うしかないな


・保存食 三日分

ーホットチョコの素を追加で用意しておいてやった。これで文句ねぇだろ





出発当日の放課後、台座を庭に出しておいた。これで僕の準備はオッケーだ。

スターチの方もざっと見たところ大丈夫そうだ、迷彩マントはアレだけど70%くらいあるしいけるだろう。

僕は夜な夜な調べたオウルズのアジトの地図をスターチに渡した


「オウルズはその8つの×印のどこかにいる。5つある△印はお宝の場所で、定期的に移動してて、強力な封印がされてる。後は任せるよ、僕は後ろをついていく。本当に危ない時は助ける。

君の命は僕の命をかけて守る、それ以外の君は君自信で守るんだ」


スターチは見たことが無いくらいに緊張している。さすがに頭がいい。

スターチの名前で仕事をする以上、結果が求められる。

同時に、やったことは全て世に知られることになる。王家の人間ということは隠されているが、それもいつかはバレるだろう、人を殺せばそれも伝わる、野盗から逃げればそれも伝わる。

王子のお目付け役としてついているマキロイがこの仕事を容認したことの意味も、スターチは理解している。

15歳、僕がいるとは言えランク6の仕事を独力でこなすことはとても難しい。でもスターチなら出来る、そしてもっと強くなってもらいたい。


「ああ、任せろ。ビスコナの王子として、手ぶらの魔法使いの右腕として、みっともない真似は出来ない」


気合いを入れる。今までだって危ないことはあった。ユーに助けられることもあったけど、自力でなんとかできたこともある。そして何よりも普段からオレはとんでもないヤツと一緒にいるわけで、こいつと比べれば野盗なんて屁みたいなもんっしょ。まあオレも屁みたいなもんだろうけど、やるだけやってやるよ。


「ユー、行こう」











決意を込めた出発から8時間後、可能性を感じていたとは言え、意外な形からスターチの戦いは始まる。


アジトが点在する国境付近までは半日以上の距離がある街道で一人の商人と合流する。


商人の名前はチーロ、ハンター上がりの商人で腕と逃げ足には覚えがあるらしく、貴金属専門の身軽な商いをしているらしい。

なるほど、これなら襲われても逃げれば被害は全くない。雰囲気や身のこなしもかなりのもので、ランク5というのも納得だ。


僕はずっと迷彩魔法でいないものとしてついてきていた。商人も気付かない感じなので、スターチがどうするか見ていた。


レビオサまで行く予定だということで、二人で途中まで行動を共にすることにしたようだ。スターチはオウルズの討伐という目的は伏せていた。

悪くない判断だ。怪しい人物じゃないのは見てとれるし、信頼ができるならば夜は複数人でいるほうが体も休められる。



僕はとりあえず安心した。念のための広域警戒魔法を張って一息ついた。もう休もうとしたところで、空腹に襲われた。


手ぶらの魔法使いの辛いところだ。

何か食べられる物はないかとしばらく森を徘徊する、幸運にも野ウサギを捕らえることに成功する。これがあるから手ぶらはやめられない。


鼻歌を歌いながら適当な夜営スポットを探している途中、四人の野盗を発見した。


瞬間、迷彩魔法をマックスにして気配を消し後をつける。スターチ達まではまだ距離があるがこのまま進むと確実にぶつかる。話を聞く限り、野盗はオウルズのメンバー、四人だけで偵察にきたらしく仲間は他にいないようだ。

実力は四人足してスターチ一人分に少し足りないくらいか。チーロがいるからまあ心配はない、逆にチャンスかもしれない。

僕は方っておく。








森の中に四人の男の存在をとらえた。

チーロさんを起こそうと振り返ったが、もう身体を起こしていた。


「お、兄ちゃんも気付いたか。大したもんだな、でもまあ相手は大したことないな。何人か分かるか?」


「チーロさんも流石ですね。ええ、まあ近くにいるのは四人ですね。確かに大したことなさそうです。オレらが二人いるってことでビビってますね。一人を圧倒すれば散って逃げるでしょう」


「正解だな。でも逃がすのは良くない、オレは商人だから野盗の数は減らしておきたい。殺しが出来ないならオレがやるからお前はあっちの二人を逃がさずに潰せ、オレはこっちをやる、飛び道具にはきをつけろ」


「大丈夫です、やれます。どうせ悪人でしょう」





覚悟が決まったようだ。こっち側はチーロが来るのか。逆側に移ろう、と思っていたらチーロが先に左手側に仕掛けた。右手側の相手には風魔法を飛ばし、木を斬り倒す。ああ、多分誘ってるんだな、間合いを詰めた左側の相手と小太刀で切り合う。明らかに手を抜いている押され気味だ。

スターチの方はまだ始まっていないが魔力はもう高まっている、距離は少しずつ縮まっていて、もうすぐ射程距離だ。


チーロは敵を誘き寄せ、挟み撃ちの形になる。二人目か背後から炎魔法をかけようとして構えた。


遅い


その瞬間に一人目を袈裟斬りに捨て、そのまま反転し身体強化魔法で突進し炎魔法の発動を待たずに心臓を一突き。


お見事。





チーロの方は終わったみたいだ。


剣を鞘に収めたまま前に構える。


敵二人が射程距離に入った


やる、半端なことはしない




「いけっ レアルクレスタ 」





パキンッ




闇に佇む木々は乾いた音を立て、その色を白く変える


二人の賊も同様に白い石像に姿を変え動きを止める





「おお、兄ちゃんやるね。これは珍しいな、石魔法か?凄い威力だ」




《レアルクレスタ ー王家の紋章ー》


中範囲の石化魔法だ。その名の通り、紋章を刻んだ魔法剣を使い、やたらとパワーを増幅して範囲内の物を全て石にする。


中空を舞う虫も、地中のもぐらも、二人の賊も石になり、死ぬ。


不思議と特に実感はない。魔法のいいところかもしれない。手を汚した感じはない。


「チーロさん、こいつらってオウルズですかね?」


「ああ、そうだな、タトゥーが入ってる」


「そっちの二人はもう死んでますかね?」


「一人は多分まだ生きてる、なんでだ?」


「いえ、ちょっとこっちの事情なんですがね、待っててください」


石化はまずかった!雑魚なんだから殺さず捕らえればよかったんだ!気負いすぎた!

オウルズで当たり前なんだよ、この辺の野盗なんだから。幸い一人は瀕死か?

あ、袈裟斬りにされてる。

よし、止血してやるよ、喋れるか?アジトと宝の位置教えろ、どこだ?吐け、助けてやるぞ、お、☆、△、ここと、ここか。よし、でかした、死ね。オレの魔法じゃ命までは助けられん、楽にしてやる。


ザクッ



ああ、さっきと全然違う、オレは人を殺した。

いや、割り切って行く。



「お、終わったのか?やったのか、若いのに大したもんだ。やつらは悪党だ、盗みはもちろん意味のない殺しまでやる。だから気にするな、とは言わないが気に病むことはない」


「はい、ありがとうございます。大丈夫です、大丈夫です」



「寝る前にどっと疲れたな、お前しばらく寝てていいぞ。この魔法結構凄そうだもんな」


「あ、ありがとうございます。寝ます、適当に起こしてください」


「おう、朝まで寝てていいぞ」







スターチは頑張ったな、素直にそう思った。やらなきゃやられる、そういう世界に僕はいる。スターチだって僕と一緒にいるならそれは必要だ。

ましてや王家の人間なのだから、戦争や討伐でもっと多くの命を奪うことになる。

遅いか早いかの違いしかない。今日殺さなければ明日殺されるかもしれない、それだけだ。


そにしてもいきなりレアルクレスタを選んだのは王家のプライドだったんだろうか、あそこまで強い魔法じゃなくてもよかったのに。


でもまあ情報も聞けたみたいだし、今のところは順調と言える。


今度こそ休もう。明日の今頃には全て終わってるだろう。













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