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手ぶらの魔法使い  作者: 手ぶらの魔法使い
6/22

手ぶらの魔法使い その5

朝早くに目が覚めた。

長らく人が立ち入ることがなかったこの教会周辺は、その元凶を失い静けさを保っていた。

軽く伸びをして火の様子を見ていたらタカさんも目を覚ましてきた。


「あ、おはようございます」


「おう、おはよう」


目覚めはよさそうだ。


「タカさん、起きてすぐになんなんですけど…」


「ん?なんや?腹でも減ったんか?」


「いや、お腹はそんな空いてません。教会ですよ!!早速中見てみませんか?」


「お、ええな、調べもんしとったら目も覚めそうやしな」


二人は身をただして教会へ向かう。朝日を受けた石造りの教会は長年放棄されていたとは思えないほどに美しかった。

クリーム色の壁には細かい動物や果物の彫刻が施され、一目で立派な建物であることが分かる。

昨日は戦闘に集中していたため気がつかなかったが、かなり歴史のあるもので中に国の守る何かがある、それくらい考えても不思議ではない。



「タカさん、かなり立派ですねこの教会」


「ああ、よくよく見るとかなりのもんやな」


「やっぱり何かありそうですよね、こんなに立派な教会を火事が起きたからって放棄するなんて。僕ならここに村をもう一度、って思いますよ。勿体ないとかそういうレベルじゃなくて、なんかいい雰囲気じゃないですか」


「まあ、確かに、これだけのもんを放って置くのは不思議やな。村はまだしも、教会の手入れくらいはやってもええかもな」


「ですよね?でもま、とりあえずちゃちゃっと調べちゃいましょうか!」





ぐるっとまず外側を回ってみるけど、特に気になる点はない。多少かけたりした所はあるけど、まあ古い建物が100年放置されてるわけだし、経年劣化の範囲だと思う。


扉は木製の立派なものがついていて、割りと新しいように見える。野盗が住み着いていたと聞いたし、その辺のメンテナンスは誰かがしていたんだろうか。


中に入ってみると空気がガラっと変わる。冬の空気の冷たさが和らぎ、少し暖かいような気さえする。朝早くにもかかわらず、光は十分入ってきている。

天井は高く、綺麗な幾何学的な模様が描かれている。教会内の装飾や椅子などは荒らされることもなく、綺麗に残っている。貴重なのものは火事の際に運び出されたというから、野盗達はただの寝床として行儀よくしていたんだろうか。

中央にはステンドグラスが美しいままのこされている。

おそらくビスコナ国教の象徴である像はハリソン村へ運び出されて台座には何も残されていない。細かく調べてみるものの、特に何もない。

地下室とかそういうのもあるかもしれない、と床をくまなく見る。しかし何も見つからない。


「何か特別な仕掛けとかはないみたいやな~。こんなことってあるかいな」


「おかしいですね、依頼にあった教会の秘密って何なんでしょう?見る人が見たら何か分かるんですかね?タカさん、少しでも気になることってありませんでした?」


「気になることなあ、思ったより中が綺麗ってことくらいかな。あとは椅子やら内装やらその辺が王家御用達のもんってくらいやな」


「そうですね、綺麗ですよね。ああ、確かに、やたら紋章が刻まれてますね。あの台座のとことか超怪しいんですけど、何にもないんですよね。王家の人が来たら何か起こるんですかね~」


「確かに、何かありそうやけど何もないよな…」


「うーん、依頼書にはタカさんが案内するってあったから、タカさんなら何か分かると思うんですけどね」


「いや、そないな事言われても、分からんもんは分からんで。ホンマに」


「ま、仕方ないですね。僕もお手上げですよ、諦めましょう」


「あっさりしとんなぁ、まあダラダラ粘ればええてもんちゃうしな。さっさとウィタワットから剥ぎ取りして帰ろか」


二人は表に出る。太陽は少し高くなっていたが、やはり冬の空気は冷たい。

ウィタワットの前に立つ。



ー綺麗に半身が消え去っとる。土砂降りにエンチューを割り込ませたって言っとったからな、断面は焦げとるな。綺麗なもんや。

翼とか毛皮とかある程度剥ぎ取ったけど、なんや凄いな。この皮とか超強そう。

この羽根一本でも結構すごい。綺麗やし、魔力ためるのとかに使えそう。

二人でひっくり返してみた。加護持ちらしい綺麗な銀色の目や。これは高そうやな、ユージーンが売るかどうか分からんけどな。あ、なんや、目玉に魔力残っとるな。大丈夫かあな。

鱗も堅いなぁ、ええなぁ、強そう。

あとは牙とかそれくらいか。

いや、よう考えたらこいつ倒すの剣とかじゃ無理やったんちゃうかな。



「タカさん、僕は目玉だけもらっときます、なんかこれ魔力感じますよ。残り欲しいのがあったらとっちゃっていいですよ」


ーマジか!?太っ腹やな。ギルド受けの分払ってもお釣りくるでこれ。ただデカイ、全部一度にってのは難しそうやな。


「ホンマ?ええんか?結構ええもんとれるでこれ」


「僕が使えそうなのってなさそうなんで、いいですよ。この目玉はなんか魔法込めて使えそうなんでもらっときます。あ、昨日の猪の角もタカさんにあげます」


「マジで!?ありがと!いや、助かるわ~。これちょっと運ぶの大変やけど、ホンマありがとう」


「運ぶの手伝いましょうか?何回も来るのめんどくさいでしょ?引っ張っていきましょう。もう特に用もないし、さっさと帰りましょうよ」


ーマジか?なんやこいつ…なんてええやつなんや。あと、切り替えの早さハンパない。もう教会秘密とかそんなに気にしてないみたいや。天才ってこんなんなんか…


「ホンマに?引っ張るってどうするん?ロープはあるけど、車とかないで?作っとったら日も暮れるわ」


「ああ、これも秘密ですよ?まだ開発中なんですけどね、ちょっとタカさんその槍貸してください」


「槍?指パッチンやないんか?ほれ」


「いえ、指パッチンでも出来るんですけど、引っ張るのはタカさんなんで、こっちの方が都合いいんですよ」



ーん?引っ張るのはオレ?まぁええわ。

お、魔法陣やん。当たり前やけど、普通に描けるんやな。矛先の方で地面ガリガリやっとるのは気になるけどまあええわ。

おお、デカイな。これは、何魔法や、風かな?分からんな。

はい、槍を地面に突き刺して?力を込めて、おお、凄い、なんやこれ。

もう、驚き疲れたわー


ユージーンが魔法陣を描き終え、力を込めるとウィタワットの身体が浮き上がる。

そして光の球体が包み込み半分くらいの大きさになった。

光は消え、真っ黒になったが依然として宙に浮いている。


「はい、終わりました。槍返します。大体半分くらいの重さと大きさにしときました。まだそれなりに重いですけど、タカさんなら引っ張れます。この球体は槍に繋がってるんで、普通に歩けばついてきます」


ーでた、新魔法。おお、槍についてくる。すげえ、でも結構重いな。でもまぁいけそうや、しっかしなんやこの魔法。


「風魔法の応用ですね。浮かせて、圧縮してます。黒くしてるのは光の魔法の応用で、これだと重力とか空間の魔法みたいに見えるでしょ?そんな魔法まだないんですけどね」


ー大体半日くらいで元通りらしい、普通に歩けば間に合うな


「じゃ、帰りましょうか」


僕は教会を後にする。

来るときよりはペースが遅いが順調に進む、縄張りの杭を越える。分岐のところに来た時に一息つくことにする。

タカさんはまだ元気みたいだ。

最後のパンを二人で分けて食べる。水は魔法で出した氷を溶かして飲む。これあんまり美味しくないんだよな、研究しなきゃいけない。


「重くないですか?もう少し軽く出来たらいいんですけどね、それ。あんまりすると飛んでいってしまうんですよね」


「いや、余裕やで。凄いわ、これオレでも使える?」


「どうですかね、さっき魔法陣は見ましたよね?なんとなく分かりました?打ち消しとか割り込みとかに比べれば易しいと思いますけど」


「ん?風魔法っぽいな、くらいしか分からんかったな。今度教えてや、出来んかったらしゃあないわ」


「凄い!風っぽいって分かるなら可能性ありますよ!」


ーおお、やった、使えたらええな、どうせ無理やろうけど


「じゃあ、ぼちぼち行きましょうか。夕方には着きたいですね」



帰り道では魔物は出なかった。昨日頑張ったしのんびり帰れてよかった。


途中でタカさんから銀の目玉を受けとる。20センチくらいの綺麗なガラス玉みたいな感じだ。ずっしり重い。

確か魔法の炎で金属みたいに加工が出来るらしいから、歩きながら使い道を考える。

ほんのり魔力を感じるし、武器にしてもいいんだけど、基本的に何も持ちたくないんだよなあ。

鎧とか?重くなってしまうよなあ。

靴底に仕込むとか良さそうかな。あとは指輪かな。

小さい珠にして魔法込めて置いておくのもいいかな。

いや、僕にあんまりメリットがない。でもタカさんに魔法陣を刻んだやつあげたら喜ぶかな。

そんなに大きくなさそうだし、一つそれ作ろうかな。

あとは、何があるかなあ。


ーユージーンは天才や。この出会いはオレにとって衝撃や、最初はちょっと利用できたらなあとか思ったけど、もはやそんな気持ちは全くない。心酔しきってしまった。めっちゃええやつやし。ただ、マキロイのレターにあった通りこいつはまだ12歳。しっかりしとるしそんなに心配はないけど、誰かが守ってやらんとこれだけの力や、大人が放って置かんやろ。こいつは力を秘密にしたがってるから、その辺も分かってるんやろう。でも出来るだけ助けたろ、そう思ったー



「タカさん、何か欲しい夢の魔法ってありますか?帰り道暇なんでちょっと試したいことあるんですよ」


「欲しい魔法?せやなあ、空飛ぶとか、瞬間移動、透明になるとか。ああ、この黒い玉の魔法もオレからしたら夢の魔法やな。あとお前の使う打ち消し魔法も夢みたいやな」


「飛行魔法、瞬間移動、透明化。他には何かありません?これあれば便利だな、とかそういうアイデアでいいんですけど」


「うーん、現実的なところでは食器洗いとか、頑丈な金庫とか、ハンターのツケ回収とかかなあ。あとは強力な攻撃魔法が簡単に使えればいいな、とかいう頃もあったけど、もうそれはええかな、と昨日今日で思ったわ」


「なるほどなるほど。出来そうなのと出来なさそうなのがありますね、やっぱりこの辺なら出来そうです。欲しいの選んでください」


「え?何?魔法使えるようにしてくれるん?なんでなんで?」


「いや、昨日助けてくれましたよね、そのお礼ですよ。これからも多分色々助けてもらいたいですしね、一日一緒にいれば頼れる人か、信用していいかどうかはなんとなく分かります。マキロイさんの紹介ってだけじゃなくて、タカさんならいいかな、って」


「そんな簡単に信用してええんか?とんでもないヤツかもしれんで?そんな聖人でもないし、悪いことしたことないっていったら嘘になるし…」


「ハハッ、別にタカさんのこと聖人とは思ってませんよ」


「なんやお前ハハッ、やっぱおもろいやつやな」


「まあまあ、そういうことで。昨日の借りを返して置くってことで、出来るだけのことをしたいんですよ。これ、リストです見てみてください」


パチン


タカの前の空間にレターが浮かび上がる。


1. 荷物引っ張り魔法


2. 食器洗い魔法


3. 金庫最強化魔法(盗難保障付)


4. ツケ未払いの人をこらしめる魔法(最大10人まで登録可)


5. そこそこ高速移動魔法


6. 暗いところでの迷彩魔法(迷彩率95%)


7. 武器の強化魔法


8. ユージーン一日お手伝い券




「こんなかから選べばええんか?一個だけ?」


「まあ、一つが現実的ですかね。何個でもいいですけど、超難しくなっちゃいますよ?まあ組み合わせ次第ですけど…」


「いや、冗談冗談、ちょっと待ってな。選ぶわ」



ーアカン、欲張ったらアカン。

確実に美味しい思いできるやつ考えな。って、全部魅力的やな…。

お手伝い券とか不可能なことないんちゃうか?なんか高ランクの仕事こなしたら儲かるな、いや、その日だけやしな。

食器洗い…ええなぁ、リアルやな。

金庫?保障付って多分ユージーン以外は開けられんガチのやつかな、ええな。

高速移動とか武器強化もよさそうやな、オレもまだ現役やし…ユージーンの言う強化ってハンパなさそうやし。

迷彩魔法か…95%これどの程度なんやろか。かなり見えなさそうやな。でも夜中以外は使えないんかな。

ツケもええな、こらしめるって何か分からんけど、ユージーンのことやし、多分回収できるやろ…

んで、この荷物引っ張り魔法か。これ便利なんよなあ、使ってみたらヤバいわ。ただ、そんなシチュエーションあるか?秘密にしろってことやから、これで商売するのは難しいやろし。


「よし、決めたで、5やな。そこそこ高速移動魔法や」



「あ、これでいいんですか?試しにどれくらいかやってみます?」


ーえ?試せるの?なら一通り見てみたかったけど…


「お、ええな、頼むわ」


ーユージーンは銀の目玉を地べたに置く。オレにも荷物を置くようにいう。その後オレの指パッチンで両足に魔法陣を浮かべる。ん?なんともないぞ?終わり?


「はい、終わりました。身体強化の魔法の要領で素早く動いて見てください。そこそこスピードが出るので、最初は気を付けて下さい。あと、そんな魔力使わないんで長距離移動にも使えます。ああ、でも自分の身体以外を運ぼうと思うと魔力はその分沢山必要ですね。コツを掴めば水上もこの魔法だけで歩けます。ただ、空気は蹴れません」


ーすげえ。ちょっとやってみたろか。おお、沸き上がる感じがあるな、ほれ、こうか?


ダッーー


ダッー


シュッー


サッー



ーおお、速い!速いなんてもんじゃない、しかもそんな魔法の使ってる感がない!いや、魔力は使ってるけど、確かに普通の身体強化の時とは比較にならん。まだスピード出るな、これ凄いわ。


「ふぅ、凄いな、これ。槍持って試してええ?」


「いいですよ、ただ、ウィタワットがくっついてるから疲れますよ。槍だけならそんなに変わらないと思いますけどね」


「ああ、そうか、引っ張り中やったか…まいっか、これでええわ最高、決定」


「よかった!気に入ってもらえましたか!じゃあ早速これ作ります、とりあえず帰りながらやりましょう」


ーやった、すげえわ。荷物を背負いながら魔法を使ってみる。アカン、めちゃパワーいるわ、これ。ウィタワットめちゃ重い、やめとこ。あ、魔法陣消えた。

なんで高速移動魔法にしたかって?これやったら、もし次にユージーンのお供した時もスピードで逃げられそうやろ。あと、普段の生活でも便利そうや。それに、スピードっつーのは、格上と

戦う時には一発逆転の可能性になるからな。


パチン


お、なんか始めたな、横で見たろか。なんや銀の目玉を溶かしとるな、赤黒い焔や。はいはい、昨日見たやつの応用なんやろ、凄い凄い。でもこんなんこいつどこで覚えたんや?今初めてやってんちゃうか?


時間かかりそうやな、ずんずん進もう。もうすぐ帰れるわ。


パチン


おお、溶かしたやつを小さい珠にした、凄い器用やなこいつ。ん?大きい方はひとまず持っといてくれってか?おう、任せとけ。

小さい珠を~放り投げて~

パンッ

手を叩けば~二つに別れて~

パチン

パチン

両手の人差し指をクルクル回したら…おお、なんやこれは光ってる。

すね当てか?レグガードや、かっこええな。両手で持ってなんか見てるな、お、満足してるっぽい。


「出来ました、銀のレグガードです。一点物です、これでタカさんも加護持ちです!タカさん以外には使えませんか、さっきの魔法陣が刻んでます。ちょっとやってみましょう」


ーつけてみた、あ、出来るわこれ。魔法使いすごいわ。大満足、もう一生ついていきますわ、ユージーン様


「よさそうですね、まあなかなか真似出来ませんけど、これも秘密にしといてください。魔法陣はレグガードの内側に展開されるので人前でも使えますけど、怪しまれない程度で使ってくださいね」


「おう、ありがとよ!」


そうこうしているうちに王都が見えてきた。ひとまずこのウィタワットを王都の門の前に置く。引っ張り魔法を解除して、王都の役人に見てもらうけど、ダメだこの人はウィタワットのこと知らないみたいだ。まあ、タカさんが見てるんだから本物なんだけど、色々あるみたいた。


しばらくすると、マキロイがやってきた。僕がやったって広まると大騒ぎになるからって、タカさんと何やら話をして、トンデモ屋に流浪の魔法使いがやってきて倒した事にするらしい。

僕は教会のことを聞いてみたけど、見て分からないんなら分からないとのことだった。多分マキロイも知らないんだろう。まあそのうちまた調べよう、まだまだ僕の冒険は始まったばかりだ。


トンデモ屋に行こうかと思ったけど、タカさんがまだちょっと待ってろと言うから待つことにした。まだ明るいから、ここで商人にウィタワットを売ってしまうんだと。

タカさんは適当に羽根と皮、鱗を剥いで、残りは全部売ってしまった。

色々全部で銀貨150枚と銅貨50枚になった。猪の角は銀貨2枚だった。


ほんならトンデモ屋に戻ろうかというかとで、店に戻った。

トンデモ屋に戻ると大騒ぎになった。

さっき帰ってきたばかりなのに、ウィタワットがやられたということは一瞬でハンター達に伝わりタカさんは質問攻めにあった。酒場も兼ねるギルドでは珍しい存在のはずの僕のことは誰も気に止めないようだった。

タカさんは適当に話を誤魔化しながらハンター達の相手をしていた。僕は暇だったので、ちょっと散歩してくると伝えて外に出ようとすると、丁度マキロイが入ってくるところだった。


「ああ、丁度よかった。報酬を持ってきたんだが、お前に直接渡してもよかったか?金貨5枚なんだが。大金だし、どこか預ける銀行はあるか?」


「いいです、今もらっておきます。銀行より自分で持っていた方が安全ですしね」


「確かにそうだな、家に戻るのか?」


「いえ、まだもうちょっとブラブラしようかと思ってます。マキロイさんはもうお仕事は終わりですか?」


「うむ、お前に報酬を渡して今日は上がりだ」


「じゃあトンデモ屋でご飯食べましょうよ、今僕お金持ちですし、ご馳走しますよ」


「いやいや、初等学院を出たばかりのやつにおごってもらうわけには… 」


「いいじゃないですか、別に。金貨5枚ですよ!?マキロイさんのお給金2年分くらいはありますよ!?」


「お前、なんでオレの給金知ってんだよ!?」


「え?当たっちゃいました!?適当に言ったのにーハハハッ」


下らない事を言い合いながら、マキロイさんとトンデモ屋に入っていく。

兵隊長のマキロイさんが入ってきて場は少しざわめくが、すぐにウィタワット討伐の話に戻っていく。適当に端の席に座り、ボーイさんを呼ぶ、マキロイさんはお酒が好きで、ここぞとばかりに高いお酒や料理を注文している。僕はホットチョコだ。


「いやはや、流石にウィタワットの話で持ちきりだな。みんな耳が早いな…」


パチン


僕は会話が他から聞かれない遮断魔法をかける。これをかけると範囲内の会話はざわざわした雑音に溶け込んでよく分からないことになる。


「で、どうだった?初のお仕事は?まさかいきなりウィタワットの討伐のにいくとは思わなかったな。ボーイからタカのレターを受け取ったときは驚いたぞ。まあ最悪の時は逃げるって書いてたし心配はそんなにしてなかったけどな」


僕は、かくかくしかじかこの二日間の話をした。マキロイはほうほう、と話を聞きながら食べたり飲んだりしていた。

教会や王家の紋章の話を改めて聞いても本当に何も知らないみたいだ。何か分かったら教えてもらうように言っておいた。


「ああ、そう言えば報酬の一つの褒賞なんだけど、あれどうしようか?紋章付のネックレスか腕輪らしいんだが、それでいいか?まあ他には変えられないんだけど」


「あ、はい、腕輪でいいです。まあそんなものより教会の秘密を教えて下さいって話なんですけどね」


マキロイさんと話ながら食事をとっていると、タカさんも加わってくれた。ハンター達の質問攻めも一段落したみたいだ。

兵隊長がいることもあって、テーブルまで誰かが絡んでくることもない。

タカさんは興奮しながら二人の仕事のことをマキロイさんに話していた。

しばらくすると、次の僕の仕事の話になった。魔法の本を広げながら色々考える。

ギルド受けにして仕事をするのはマキロイさんも賛成だった。

僕的には一人でこなせる仕事が良かったので、良さそうなのを見繕った。


タカさんはギルド受けすると補填の自腹が痛いと話したが、そこは仕事で得られる剥ぎ取りの物の一部を僕が還元することで落ち着いた。

僕も報酬が増えるし、タカさんも損することがないだろうからよかった。

基本的に、面倒でなさそうな、高額報酬の魔物討伐を仕事にすることにした。


ああ、銀の目玉の使い道も考えないといけない、やることが沢山だ。







こうして、手ぶらの魔法使いの最初の仕事が終わった。





これで最初の仕事の話は終わりです


次からプロローグの話の後に戻ります

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