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手ぶらの魔法使い  作者: 手ぶらの魔法使い
1/22

プロローグ

ガルルルゥゥゥゥ


群の中で一際大きな身体をもつ魔狼が身を構える。




このアイグと呼ばれる個体がボスになってから、この半年間に魔狼達は急速に王都ビスコナの周囲に勢力を拡大してきた。

1ヶ月ほど前からビスコナの猟師や商隊、ギルドのハンター達がアイグの群に襲われ始めたため、軍は戦士20名、魔導士5名からなる第一次アイグ討伐隊を組織しアイグの討伐を目指した。

しかし、アイグの力は予想以上に強く、結果的に討伐は失敗に終わり、部隊は生存者1名を残し撤退することとなった。

生存者は語る、群の魔狼自体は普通の魔狼と大差のない力だったが、アイグだけが図抜けて大きく強かった…銀色の目、あれは《加護持ち》だ、と。








パチン








少年が指を鳴らすと、眼前で牙を剥く魔狼は瞬く間に氷に包まれた





パチン





少年がもう一度指を鳴らすと巨大な魔狼の氷像は足下から崩れていった。











「おおーー!!」

「やったぞ!!さすが《手ぶらの》だ!!」

「やはり凄まじいな」

「オレ初めて見たよ、噂に聞いてたけどすごいな」

「相手は加護持ちだって聞いてたが…ここまでとは」





後方で戦っていた兵士達から歓声があがる。




群のボスを失った魔狼達は統率を失い兵士達の連携の前に、一頭、また一頭とその数を減らしていくー










「ユージーン様お疲れ様でした。毎度のご協力助かりますよ。お怪我などは…」


魔狼の残党を撃退し終えた頃、髭を蓄え立派な銀色の鎧を纏った男が少年に声をかけた。

彼の名はマキロイ、この第二次アイグ討伐隊の指揮官でありビスコナ王国の第二兵隊長だ。


「あるわけありませんね。いつもの事ながら感服致します。そろそろ隊への正式入隊も検討して頂ければ陛下や王子、私も…」


「マキロイさんこそお疲れ様でした!部隊の人に怪我はなかったですか?あと、その堅苦しい話し方やめてくださいよ」


遮るようにして口を開いたユージーンと呼ばれた少年はそう言って笑った。



マキロイはふぅ、と息をつき応える

「ああ、こっちの被害は…死者は0、重傷者2名、軽傷者が全体の5割ってとこだな。重傷のやつも命に関わるような怪我でもないし、この規模の部隊から言えば無傷みたいなもんだよ。全てはお前さんがボスを相手に圧倒してくれたお陰だな、本当にありがとう」


「いいですよ、僕も好きでやってるわけだし。それより、重傷の人の怪我みましょうか?」


マキロイは周囲を見回しながら小声で返す


「それは有難い、と言いたいところだが、今回は少し簡単に行きすぎた。練兵のために、怪我人には悪いが少し痛いまま我慢してもらうことにする、楽な遠征ばかりだと思われると困るからな。まあ、無事に帰って給金が出ればみんな元気になるだろうよ。 それより、さっきのお前の入隊の話なんだがな…」


「はいはい、それはまた時期が来たときに考えますよ。マキロイさん、僕の年いくつか知ってます?まだ15ですよ?」


「うむ、確かにお前はまだ若い。だが、これだけの力を持っている《魔法使い》だし、それはもう殆どの人間が認めているし、頼っている。誰も何も問題になどしない。だってそうだろう?この通り加護持ちの魔狼も指をパチンでちょちょいのちょいだ」



「うーん…そんなものなんですかね。でも僕もまだ少し学校だって行かないといけないし、家もそんなに長く空けられない。こうやってたまに参戦してるんですから、このままでいいんじゃないですかね。あと、加護持ちっていってもまだまだ若い個体でしたからね、これで報酬が高くなるなら僕はラッキーですよ!」


ユージーンの笑顔でいつものようにマキロイは押し切られる。二人で戦う度に繰り返されるこの問答ももう何度目だろうか。


「はい!ではそういうことで、僕は掃除しながら先に帰りますね。マキロイさんもいますし、流石にここからなら僕なしでも問題なく帰れますよね?あ、あといつも通り、目玉だけ後で下さい」


「おいおい、馬鹿にするなよ?多分大丈夫さ」


二人は笑いながら握手を交わす。




「おーーーーい!!お前ら!!!ユージーン様がお帰りだぞ!!!元気なやつはお見送りしろ!!!」



80人からなる部隊の殆どの兵士達が集まって整列しユージーンを見送る。


「「「ユージーン様に敬礼!!!!」」」




「あー、もう!それしなくていいってば!!みんな!気を付けて帰ってきてね!!」





少年は照れ臭そうに笑い、手を大きく振り部隊に背を向けて歩きだした。

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