カップルが生まれた瞬間が何だか犬の「お手」の様に見えるんだが、果たしてそれで良かったのかは当人達のみぞ知る。
「あなたの髪を一房いただきたい」
教室で次の授業までの暇を潰す生徒達は凍り付いた。
「あら、髪だけなの? まるっと私ごとあげてもいいわよ?」
観衆はどよっとざわめく。
「ただし、貴方をまるっと全部くれるならの話だけれど」
さあ寄越せとでも言う様に彼女は手の平を上にして突き出した。
「そういう話じゃないのかしら」
「そ、そういう話だ」
首を傾げる無表情なままの彼女の手に彼は慌てて手を乗せる。
生温い視線が二人を包んだ。