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ライフ  作者: 拓海
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第三話 歩く者

 そんなことがあって、旅人を泊めることになるまでは良かったのだが、なにぶんスペースが無かった。


 それもそうだろう。もともと3人が住んでいるくらいでちょうど良い家だ。4人になってくるとさすがにスペースがない。


 そんなことを考えていると、旅人が、


 「僕はあそこで寝泊まりさせてもらって良いでしょうか?」


 そう言って、物置を指さしたのだった。


 ──あれは俺に気を使ったんだろうなぁ


 と、ブランは思う。


 もちろん、ブランは最初反対した。


 娘の恩人を物置なんかに泊まらせるわけにはいかない、と。


 しかし、旅人は


 「僕が泊まりたいとお願いしているのですから、贅沢を言うわけにはいきません」


 と言い、それでも渋るブランに、


 「もし、本当に僕に恩を感じてくださっているのなら、僕の泊まりたいと言っているところに泊まらせてくれませんか」


 と言われた。こう言われると、渋々了承するしかないブランだった。


 その後、ちょうど帰ってきた妻に色々説明していると、旅人は勝手に物置に行き、寝てしまっていた。


 だから、朝起きたときに謝ろうと思っていたのだが……。


 ──ありゃあ、もう謝らせてはくれないだろうな


 と、ブランは苦笑する。


 そして、そういえば、まだ旅人の名前も知らないことに気づいた。


 ──まぁいいか。昼飯の時に娘と一緒に自己紹介でもさせよう


 そう思い、ブランも昼飯を食べるために、家に入っていった。

 

 

 

 家に入ると、もう娘が昼飯を、上機嫌につくっているところだった。


 「お、おい?もう大丈夫なのか?」


 すると、昨日まで寝込んでいた人とは思えないくらい元気な声が返ってくる。


 「うん!もうすっかり元気!これも旅人さんのおかげだね♪」


 娘は、朝説明した、旅人の事をとても気に入っていた。


 ブランは治癒魔法が使える旅人だ、としか言ってなかったが、どうも娘は、勝手に、かっこいい魔法使いの旅人、と認識しており、朝からずっとこの調子なのだ。


 先ほども、寝顔を見てくるっと行こうとするのを止めるのに苦労したものだ。


 確かに、旅人は美形だった。ブランはあれほどまでの美しい顔を女の人でも見たことがなかった。


 「先が思いやられる……」


 ブランはため息をつきたくなった。


 「ん?なんか言った?」


 「なんでもねぇよ」


 「どうして先が思いやられるの?」


 「このヤロウ、聞こえてたんじゃねぇか!」


 「そんなに、旅人さんってかっこいいの?もしかして、惚れちゃった!とか?」


 思わず絶句してしまう。


 「……え?図星?」


 「んなわけあるか!」


 「んー…。あー!旅人さん!」


 ついバッ振り向いてしまう。


 そして、すぐに気づく。ここは家の中なので、物置は見えないことを、娘は旅人の顔を知らないことを。


 「やっぱ惚れちゃったんだ?」


 「このヤロウ!!歯食いしばれ!」


 「ちょっと!子どもに対して、しかも女の子に暴力って!?」


 「うるせぇ!てめぇの性根、一から叩き直してやる!」


 「それって普通男の子に言うセリフだよね!?」


 そんなことを言いながら、机を中心に走り回っていると、


 「こんにちは、いい匂いですね~。…どうかされたんですか?」


 この状況を見て、不思議そうな顔をする旅人。


 旅人がでてきたことで、すこし落ち着いたブランは、とりあえず昼飯を食べようと思い、なぜだか先ほどから旅人を見たまま固まっている娘を見た。


 すると唐突に、


 「ま、負けた…………」


 といって、膝から崩れ落ちた。




 とりあえず、昼食の準備が終わり(残っていた準備は全部ブランがやった)、席に着く。


 ちなみに、妻は、町まで野菜を売りに行っているのでいない。


 「とりあえず、紹介しよう。こいつが娘のリアだ」


 「……はじめまして」


 「おい、礼くらいちゃんとしろ。お前の恩人だぞ」


 「……ありがとうございました」


 顔を上げるが、旅人と目があった瞬間、またうつむいてしまう。


 ため息をつくブラン。


 「いえいえ、泊まらせてもらっているのに、その上お昼ご飯までごちそうしていただいて、お礼を言うのはこちらのほうです。ありがとう」


 相変わらずニコニコほほえんでいる旅人。


 それを見たリアが、いきなり、


 「オヤジのバカヤロウ………!」


 ……ののしってきた。


 「親に向かってバカとはなんだ!」


 「おおバカやろうじゃんか!なんでこんな美形だって教えてくれなかったんだよ!めっちゃさわやかじゃん!私より美人じゃん!」


 と、そこで旅人が、


 「そんなことはありません。リアさんもとてもかわいいですよ」


 ……歯の浮くようなセリフを言う。


 その瞬間、ボッ!と湯気を出し顔を真っ赤にしたリアは、またうつむいてしまう。


 ブランは今日、何度目ともしれないため息をつくと、


 「あんたも自己紹介してもらえるか?」


 っと、半ば強引に話を変える。


 「そうですね。ではとりあえず名前から。

 僕の名前はウォーカー、《ヒーラー》を生業とする者です」

 







主人公の名前やっと登場!

すこしベタかも知れませんが、やっぱり『旅人』なので(笑)この農家の話もそろそろ終わりにして、次の町に行かせたいと思っています!



次回もお楽しみに!

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