玄武戦記 第一部
--殺人許可省
かつての日本の行政機関の一つ。
犯罪の抑止、適性かつ公平な制裁、国民の統制、国の安定の確保を図ることを任務とする。
そして、合法的殺人…合殺を行うための殺人許可証の発行。それを持つ資格者を管理する国の機関だった。
しかし、あまりにも肥大化した"戦力"を指摘され、殺人許可省は規模縮小を余儀なくされていたが、大臣・桂一紗の手により、日本は新たな時代を迎えることになる。
かつては防衛省と共に、日本の国防を行う組織が今は内閣を制圧し、現在の日本国を成り立たせる、実質上現在日本を牛耳る存在となった。
他の省を吸収・合併して殺人許可省一つに纏めており、正確には省の名を冠するのは適正ではなく、また省の名を冠する理由も無くなっている。
現在日本は、他国との貿易を完全に封鎖。鎖国時代が到来し、真聖天皇家による【防護結界】が日本中に張られ、国外退避・避難や他国からの干渉を避けている。
---真聖天皇家
桂大臣により選出され、彼により主張される正当な日本の皇族後継者候補の総称。
【朱雀】、【白虎】、【玄武】、【青龍】という4人の後継者候補が存在し、旧天皇家を抑えて新たな皇となる。
現在、名前が知られているのは【朱雀】である炎の申し子『カンナ』のみ。
4人の力を合わせることにより、如何なる干渉・攻撃をも防ぐ【防護結界】を、沖縄を除いた日本全土に張り巡らせ、強制的な鎖国を行った。
----異能力
そもそも殺人許可省が生まれた理由の一つ。名の通り、人間には過ぎた力の総称。
旧時代で使われていた名称である超能力と意味合いが似ており、現在は異能力に統合された。
異能力者対策として、同じような異能力者、または対抗戦力を持つことになり、段々と殺人許可省へと推移していった。
異能力を持って生まれ出る存在が増え、異能力を持つ人間の犯罪が多発。異能力を使った犯罪を起こした場合、合殺が許可されることになる。また、有資格者は国防の勢に所属しないこともある。
異能力とは様々だが、真聖天皇家は異能力の中でも最高位の力を持っている。
-----流転自治国
日本から切り離された旧沖縄県。朱雀の出身地域。
他者の異能力を無効化する能力者を輩出する家系が流転自治国を統べている。
領土とするべく日本から勿論、他国からも派兵が行われており、凄惨な戦場となっている。
その混乱にまぎれ、カンナの幼馴染みであるタケル王子が行方不明となっている。
同時期、流転内に存在する全ての勢力に反旗を翻す【不変】と呼ばれるレジスタンスが生まれ、流転自治国は存亡の危機を迎えた。
-------玄武戦記
これは、玄武の少女の記録の物語である。
代々日本に仕えてきた剣士の末裔トウヤ。
彼の目的は一族を裏切った日本に復讐すること。
獣と鬼の血が混ざりあい、誰からも忌み嫌われるロウガ。
嫌われても尚、日本を守りたいと心より願った男。
どこから侵入したのか分からない西洋人のケイン。
記憶喪失の彼は、とりあえず日本から出たいと鎖国を怨む。
三人は共闘し、防護結界の中核の異能力…絶対防御を持つアイという少女を攫い、殺そうとした。
絶対防御という異能力は単純な防御ではなく、彼女の生命の危機を排する絶対な力である。
それゆえに、彼女が作り出す結界は絶対にして無敵。強制鎖国を提唱する日本のコア。
たった三人で日本の首都から、玄武の少女を攫うことに成功した三人の全力の攻撃でさえも通じない。
三人が無力さに苛まされている時、彼女はこう言った。
「私は外の世界が見たい」
「日本を、ぐるーって一周してみたい」
「その夢が叶うんだったら、私は『自殺』するよ?」
彼女の言葉が三人の運命を変え、どこか奇妙な…少女を殺すために守る旅が始まった。
玄武戦記 第一部:アイ
殺人、開始。