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竜との遭遇5

竜を誘導する際、初歩的かつ重大な問題点が見つかった。

歩行速度の違いだ。

後ろ向きで歩きながら、頭の横で手を前後に振る・・・車を誘導するように行ったら、竜は驚くべき素直さでついて来た。(因みにだが、発炎筒は竜が食事とうがいをしている間に消えている)

問題点はすぐに明らかになった。

こちらが10歩歩いているのを、竜は1歩(四足歩行なのでこの言い方もおかしいが)で済ませてしまうのだ。

短距離だったら問題ない。だが、目的地『戦車豪』への道のりはかなりある。後ろ向きで歩く僕の歩みは遅々として進まない。行き先もわからず、連れて行かれる竜の心境はどのようなものだったかはわからない。

業を煮やしたのだろうか、急に竜は動きを止め、その場に座り込んだ。

困惑する僕を尻目に、右前足を突き出す。

竜が右前足先とこちらに交互に顎を向けるのを、何度も繰り返すうちにようやく理解が出来た。

乗れということらしい。

おっかなびっくり近づく僕に対して竜は落ち着いている。目と呼吸を除き、ピクリとも動かない。

それはまるで、こちらの勇気を試しているようにも見えた。あるいは、無謀さかもしれない。

間近でみる竜は美しかった。

ガリバー旅行記のスィフトは、巨大な人間は醜いと書いた。造形的に美しくないと。

それに対し、竜は美しかった。

それは、機能美、空力的な美しさかもしれない。スマートだった。

つまるところ、それは・・・速い物は美しいの一言に尽きる。

直接見てはいないものの、長大な羽と合わせて如何にも大空を自由に舞う姿が思い浮かぶ。・・・・・・・・・・・・・もっとも、このサイズ・重量の生物が空を飛ぶことは物理的にありえないと知りつつ。

と、竜が急かすような声をあげた。少し見惚れていたらしい。

「はいはい、すみませんっと」

右前足にそっと乗っかる。靴を脱いだほうがいいだろうかと微妙に思いつつ。

と、足に乗ったのを確認したのだろう。竜は右前足を頭の真横までゆっくりと上昇させた。

慎重に、足から頭に移る。精々2階位の高さとはいえ、何処に掴まればいいかわからない、不安定な足場では自然と慎重になる。

竜の頭頂部ともいうべき場所に落ち着き先を見つけた。跨って鱗を掴む。

掴んだ鱗は仄かな温かみがあった。外見とは裏腹に、恒温動物なのだろうか。

周囲を見渡す。人の身では有り得ない高さ、竜の視点だ。

普段はジャングルに覆われていて目に付かない様々な造形物が目に付く。

右手に見える普段は目にすることが出来ない、この角度からのすり鉢山は新鮮だった。火口の位置の抉れている部分は興味深かった。

余り周囲を見渡していてもいけない。

目の前の業務車からも田中2尉が呆れ顔で顔を突き出している。

「パァンツァーフォー!」

色々な意味で間違っているが、最適な掛け声をかけて竜に合図を送る。

間違い無く、僕は幸せだった。

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