竜と波乱5
「スイッチオン!ポチッとな!」
テレビをつける。
「おお!箱の中に人が!」
テンプレの反応ありがとう。
テレビの説明を簡単にすませる。
ついでに、「スイッチオン!ポチッとな!」と唱えながらスイッチを押すように言うと信じた。
ただし、今回見てもらうのはテレビ番組じゃない。
この島が舞台になった映画2つ。
実際に一部ロケも行ったと聞いた。
その映画の名は「硫黄島の星条旗」と「硫黄島からの手紙」。
どうでもいいけど、この島の売店に売ってるお土産品のクッキーの名称が「硫黄島からの便り」なのは狙いすぎだと思う。
ついでに、同じく売店で売っている『硫黄人』と描かれたTシャツも、『海人』のパクリである。
ああ、いけない。
つい脱線してしまった。
この島が舞台になった映画を見せるのには、もちろん理由がある。
それは、この島が大東亜戦争中に激戦地になったのに他ならない。
この島は島自体が自衛隊の基地であると同時に、墓標。
色々と特異な島なのだ。
未だに不発弾が見つかる。
未だに数多の英霊の遺骨の多くが発見できていない。
未だに多くの地下壕、朽ち果てた兵器群、施設跡が残っている。
民間人は建設業者、電話会社の社員、食堂の調理師以外にこの島に民間人はいない。
火山島なので、危険地帯が多い。
火山島なので、毎年徐々に地形が変化している。
基本的に島全体がジャングルなのだが、火山島なので一部地熱のおかげで不毛の大地になっている。
火山島なので地下壕は基本的に天然のサウナ。
サウナ豪と呼ばれるサウナ目的に整備された地下壕も存在する。
サソリやファイヤーアント、寄生虫持ちのカタツムリ等、危険生物がいる。
エトセトラ・・・・・。
色々と特異事項が多く、特別なルールが多い。
そのなかでも、僕が真っ先に覚えておいてほしいと思うのは、数多くの人がそれぞれの思いを抱えたまま散っていったこと、生き地獄を味わったこと、未だに悔やみ悩んでいる人がいること。
遺骨収集を手伝ったことがある。
ジャングルの中、地下壕の中、様々な場所を探した。
暗く、暑く、湿気がこもる地下壕の中はじっとしているだけで辛い。
その様な状況で、限界を感じて休憩をとる人が多い中、黙々と作業する人がいる。
かつての戦友を、家族を懸命に探す人たちだ。
それを見る以前も、見て以降もこの島で散っていった数多の魂への敬意、畏敬を忘れたことが無い。
だから、竜にも少しはこの片鱗でも良いから感じて欲しかった。
映画なら、物語なら、最後まで見てもらえるだろう。
御霊に対して、失礼な真似をして欲しくなかった。
それは僕のちっぽけな自己満足。
だから、見て欲しい。
この『硫黄島からの手紙』を。
DVDプレーヤー代わりに使っているゲーム機にDVDをパッケージから取り出し再生する。
さて、出勤しようと腰を浮かした瞬間、ふと手元を見る。
・・・・・・・・・・・。
はて?
何故、手元のパッケージの中に、入れたはずの『硫黄島からの手紙』が?
これは一枚しかないのだけど・・・・。
では、今ゲーム機に入っているのは・・・・・何だろう?
その直後に艶やかな嬌声がテレビから流れ始めた。
・・・・・・・・・ヤッチマッタ。
コレ、アダルトナビデオデス。