竜と波乱3
「やかましい!人が寝ておるんだから静かにせぬか!」
む?誰の声だ、これ?
「ほう、朝早くから随分と倒錯的なことをしておるのう。人の趣味にけちをつけるつもりは無いが、もう少し静かにしてくれんかの?じゃあの、寝るから起こすでない」
不機嫌そうな声がゴソゴソという物音と共に聞こえた。この位置はベッドか。
脳内のピースが埋まった。この口調はあれだな、うん。
「寝てんじゃねえ!竜!せめて誤解を解いてから寝やがれ!お願いします!お慈悲を!」
後半弱気なのは気にしちゃ駄目だぜ!?
「ほう、人に化身しているのに気が付いたか。やるな、人間。いつから気が付いたのかの?」
「教えるから、頭の袋と手枷足枷解いてくれると助かる」
「ほう、我を小間使いとはのう。よかろ、外してやる」
因みになのだが、今手足にはめられているプラスチックカフは華奢な形のわりに意外に切断しにくい。ナイフで刃が立たない。カッティングプライヤーで切るのがお勧めだ。
だが、そんなプラスティックカフは一瞬で切断された。恐らく素手で。
ようやく自由になった手で袋を毟り取る。
ベッドにペタペタ歩いていく幼女が見えた。地面にまで届くような銀髪に目がいく。
ベッドを椅子代わりに腰掛けた幼女がこちらを向く。
整った顔、病的なまでに白い肌、金色の目が人間離れした雰囲気を醸し出す。
「改めましておはよう、竜さん」
「うむ、おはよう」
それはともかく・・・・服着てもらえませんかね。
僕のマイサンが自己主張しそうなんですが。
(呼んだ?)
(呼んでねえ!)
しょうがないので、毛布でグルグル巻きにする。
春巻きの完成だ。
「恥ずかしがることあるまいに、初心じゃの」
「紳士なので」
ただし、変態という名の紳士ですが!
「それではの、いつから気が付いた?」
「割と最初から」
「ほう、後学のために何故気が付いたか教えてはもらえんかの」
「何故ってそりゃあ・・・・口調に決まっている」
「口調?」
心底わからないようだ。
「そんな口調してるのがいたらババアに決まってるだろうが。外見幼女だからロリババアだ」
「くくく、ババアとは良い度胸だの。人間、命が惜しくないのかのう?」
「勘違いするなよ、ババアというのは俺等の業界では親愛と好意の意味を込めて言われることもある。例えていうなら、BK・・・・ババア結婚してくれ、とかな」
結婚の辺りで竜の様子がおかしくなった。瞬きの回数が増え、こちらに視線を送っていたのが周囲にチラチラ向かうようになった。
何意識してんの、この竜。
「結婚・・・・・随分と性急な・・・・」
「いや、それ例え話だから」
「人間!!」
抗議の声をあげる竜。うむ、馬鹿可愛い。
「ついでながら言うが、竜・・・お前の外見なら結婚するのは不可能だ」
「・・・・・・・・・はっ!笑わせるなよ、人間!この見目麗しく若々しい肢体の何処に不満がある!」
僕は首を無言で横に振った。
「若すぎるんだよ」
「は?」
「若すぎるんだよ!ロリババア!加減を考えろ!馬鹿!その外見だと、エロ展開したら問題出るだろうが!邪神アグネスちゃんとか召還しちゃうだろうが!最近は『このさくひんのとうじょうじんぶつは18さいいじょうなんだからね!かんちがいしないでね!』とか効かないんだぞ!(中略)あ、でも外見はともかく実際の年齢は多分18歳以上だから合法か?合法ロリ!合法ロリです!僕は感動を抑えることが出来ない!(中略)あ、でも人間じゃないしこの際はどうだろう。でも、逆に人外って事で脱法か?脱法ロリ!新ジャンル!(中略)勝訴!勝訴です!」
剣幕に押されてか竜は泣いていた。
ち、メンタルが弱いやつめ。