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幕間 変化
0130時 硫黄島 戦車豪
虫の音が唐突に止まる。
同時に重量物が地面をこするような音が聞こえた。
豪の中から巨体が身を現す。
竜だ。
竜が巨体を震わせ身についた土埃を振り落とす。
広場で縮めた体躯を伸ばし、月を仰ぎ見る。
その様は月を捕食せんがのごとく。
畳まれた翼を全開。月に照らされた小山のようなシルエットは、複雑な曲線を描く優美なものに変わる。
一声吼えた。竜の身が燐光に包まれる。
それは一瞬の出来事だった。
燐光が収束し、人型を形作る。巨大な竜の姿は既に無い。
燐光が消える。
そこには人間と変わらぬような生き物が直立していた。
差異は二つ。人間に翼は無い。そして、尾も無い。他にもあるかもしれないが、月明かりの中ではわからない。
人間のような生き物は足を踏み出そうとして躓く。まるで、初めて歩くようなぎこちなさだ。
・・・・・・・・かなりの時間動き回り身体が慣れたのだろう、ようやく動き回るのを止めた。
宙に手をかざす。それを数秒行った後、その生き物は歩き始めた。
その方角には・・・・・自衛隊の施設が月明かりに佇んでいた。