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竜と思惑9

「盛り上がっているところ申し訳ありませんが・・・竜が何かしたときの対策はいいんですか?具体的には・・・・・・・・竜をぶっ殺す方法は?」

まあ、来るだろうなあと思っていた。

でも、ストレートに言いすぎでしょ、これ。もうちょっと、対処とか色々と言葉を選んじゃってくださいよ。せめてプチ殺す位にして欲しいものである。

まあ、それはともかく重大な問題がある。

ビールを一口含む。うむ、美味い。これから少し口を開くことになるので喉を湿らせておくのは大切だ。

「まだ、現時点では竜は何も問題を起こしていません。いやまあ、僕の魚食われましたけど」

自衛隊が動くには根拠が必要だ。具体例を出す。

自衛隊が防衛出動する際は、自衛隊法76条に基づき国会の承認、事後承認により総理が命じて自衛隊が出動できる。

その他、自衛隊の行動は全て法によって決められている。自衛隊の基地内では原則禁酒ってのも自衛隊法にのってたはず。ぶっちゃけ悪法じゃね?

因みに、武器使用規則・・・・ROE(Rules Of Engagement 交戦規定)も自衛隊法にのっている。

あ、偉そうなこといってますがうろ覚えだからね?昇任試験の試験勉強でたまたま覚えてただけなんだからね!勘違いしないでね!気になる人はネットの法令データ提供システムで調べてね!

それに対して反論はというと。

「まあ、根拠はこの際置いておきましょう。何かあったときに備えるのも必要だと思うので。正直、自衛隊法95条の『武器などの防護』と『施設の警護』で何とかなりそうですが」

陸さん曰く、根拠?そんなの関係ねー!そんなの関係ねー!だった。大事なことなので2回言いました。

「そうですね。人が対象の法なので人以外のものなら、正当防衛か緊急避難しか武器等の使用が許されていない場合でも使用できるかもしれません。既に前例がありますし」

因みに前例というのは、怪獣退治ならぬ海獣退治とか色々やってる。病気だか寄生虫持ちの大量発生した貝を火炎放射器でヒャッハーしたこともあったりするから凄い。リアル汚物は消毒である。

「ならば、幾つか試案を持っていても良いでしょう。被害の局限が重要ですから」

「そうですね。ならそれを話す前に見ていただきたいことがあります」

脇に置いたリュックから取り出すは『点検ハンマー(自称猫型ロボットの口調で)』。

周りは人間は1人を除いて全員困惑している。陸自の1曹だけは理解したようだ。ここら辺は現場で働いてないとわからないだろうしなあ。

点検ハンマーの普通のハンマーとの違いは、柄が細く長くてハンマーヘッドの片面は尖っていることだろう。

ボルトやナット、ネジの頭を叩いて緩んでいるかを確認する工具なのだが、このハンマーは本来の用途以外に重要な使い道がある。スプレー缶の穴あけである。

本来は小さいボルトとかを正確に叩くために尖っている片面で軽くスプレー缶の底を叩いてやると、簡単に穴が開いてガス抜きが出来る。ただ、応用動作(整備において基本と異なる方法、手段。故障や不具合の原因になったりする場合がある)なので、本来がやっちゃいけないのだが・・・。楽だしね。

まあ、そんな代物である。で、今からするのはボルトとかを叩くわけでは当然無い。叩くのは、竜の鱗だ。

「それではいきます」

床に置いた竜の鱗にハンマーを振り下ろす。

叩いた瞬間に生じた音は予想と少し違っていた。

鉄板を叩いたときのような音がすると思っていたのだが、高音で後を引くような音が少し聞こえただけだった。

結果は予想以上だった。

竜の鱗にクラック(ヒビ)どころか、一切傷が付いていない。指先で竜の鱗の表面を探れば、凹みすらもないのがわかった。

・・・・・・・何食えばこんなものが生えるんだか。

そう思いつつ点検ハンマーのほうに目を向ける。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・尖っていた先端が少し平らになってた。

ありえねえ。

あと、少し凹む。この点検ハンマー私物だし高いんだけど・・・。

簡易硬度試験が終了したので、竜の鱗と点検ハンマーを机に置いて見てもらう。

陸自の1曹の反応は・・・・・。

「小銃・・・・・いや、12.7mmでも厳しいですね。これは・・・・・厄介だな」

満面の笑みである。

怖いよ、この人。ウォーモンガー(戦争狂)確定。

「この鱗・・・・・役に立ちそうだとは思いませんか?耐弾試験をしないとわかりませんが、この軽さでこの硬さであればボディーアーマーのセラミックプレートの代替になるかもしれませんよ」

アプローチを少し変えてみる。

近年、歩兵の装備の性能向上の反面、重量が著しく増えている。その一番の原因がボディーアーマーだ。昔のボディーアーマーは単純に砲弾や爆弾の破片の防御だけが求められていただけだったので、それほどの重量はなかった。

だが、近年の世界情勢は小銃弾の直撃に耐えられるボディーアーマーが求められている。人の命の価値が上がったのだ。おまけに、移動は車両がメインで荷物等は車両に積んだままでいいならば、その分の重さを他にまわしても良い。陸自の防弾チョッキ2型だけで12kgを軽く超える程だ。

数十年前では消耗品だったのが、歩兵1人の命で世論が動く社会。それが今だ。

そのような中、ひょっとしたら小銃弾を簡単に防ぐかもしれない軽量の素材がある。数が限られるとはいえ、無料だとすれば非常に魅力的だろう。

「すみません、今から竜を狩ってきます」

陸さんはウォーモンガーからモンスターハンターにクラスチェンジしたらしい。

ちょっと、やっちゃったかなあ、これ。酔った勢いの冗談だと良いんだけどねえ・・・・。

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