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竜と思惑7

(前回のあらすじ兼、現実逃避中)

「遊びに来たヨ!」

娯楽室の扉を開けた瞬間に、挨拶一発。空気が止まる。

石井3尉しかいないと思ってラブラブチュッチュタイムを楽しみにしていたら、基地のお偉いさんが集まっているという罠。

オッス!オラ2曹!周りから可哀想なイキモノを見る目で見られてる状態だってのになんだかすっげえワクワクしてきたぞ!

ごめん、うそ、死にたい、穴があったら坑道戦術で爆破したい。

地球のみんな!オラに元気を分けてくれ!!

(現実逃避終了)


「失礼しました。てっきり、石井3尉しかおられないと思っていましたので」

急遽、真面目モードにチェンジ!イエス!アイキャン!(自己暗示)

下手のことして、昇進とかボーナスの評定に悪影響が出たらマジ困る。

「部下の心情把握も職務の一つなんだよ。それと、つい酒の香りに誘われてな」

と、空自司令。もう少し言い訳を考えろ。

「・・・3幕統合運用の一環だ。・・・ここに来れば、美味いつまみが食えると聞いたんだが」

と、海自司令。

因みに硫黄島は海自の基地で、空自は間借りしてるだけです。

なので、海自の司令が実質硫黄島のトップと言えます、はい。

あと、もう少し言い訳を考えろ。

「この島では、うちは余り周りと関わりはないのでいい機会でしたので。あと、綺麗な女医さんがいると聞きました」

と、陸自の1曹。

不発弾の対処のために、少数の陸自の隊員が常駐しているのだが、食堂で時折見たことがあるだけで直接の面識は無い。

とりあえず、上半身は戦闘服、下半身はジャージという服装・・・通称『ジャー戦』のおかげで、階級やレンジャー徽章、空挺徽章等がわかった。

EOD(爆発物処理・Explosive Ordnance Disposal)要員のはずなのに、なぜ空挺徽章をつけているのかは謎だが。

そろそろ慣れたが、もう少し言い訳を考えろ。

「・・・・・」

石井3尉は無言で、空気嫁ならぬ空気読めといった感じで、視線を送ってくる。

いや、この状態なら僕みたいな馬鹿でも状況はわかる。

呑みと称して、ブリーフィングを行うつもりなんだろう。

仕事に関係のあることならまだしも、対象が『竜』だ。

酒を飲まなければやってられないとまで言わないが、空想の産物みたいなものの為に正式な会議を開くのも考え物なのだろう。

ならばまあ、空気読んで合わせるとするか。

「おや、誰もまだお呑みになっておられないようですね。のどがお渇きでしょうし、乾杯いたしましょうか?」

持ってきたクーラーボックスの中から缶ビールを取り出して全員に注いで回る。『とりあえずビール』なのは、3自衛隊共通なのか誰からも文句は出ない。

ところで、この酒代とかって全部僕が負担するんですか、そうですか。

「海自司令、乾杯の音頭をお願いします」

「・・・皆さんのご多幸とご健勝を記念して乾杯」

「乾杯!!」

グラスの中のビールを一息にあおる。

冷たいロープが胃に一直線に落ちていくような感覚。舌先に残る炭酸の刺激と心地よい苦味。ああ、生きているって素晴らしい。

「そうそう、少量ではありますが、おつまみも用意しているのでご賞味ください」

そう言って、本当に少量の刺身が盛られた皿をテーブルに置く。

「・・・今日の釣りは不調だったのだね?」

「かなり釣れたんですが、色々ありまして・・・。少しお待ちください。面白いもの撮ったので、デジカメとって来ます。酒の肴にぴったりですよ、ええ」

「・・・楽しみにさせてもらおう」

「では、少々お待ちあれ」

断わりを入れて娯楽室を退出する。

全力疾走で部屋に戻って、デジカメとケーブルを取り出す。

それと、私物の工具箱から、やたら柄が長くて、細身のハンマーを取り出す。

コイツの通称は『点検ハンマー』。ボルトやナット、ネジの頭を叩けば感覚的に緩んでいるかわかる代物だ。

今回は、ハンマーのヘッドが片面が尖っているのと、柄の長さが重要なのでこいつを使う。さて、準備は整った。 

色々と小道具の準備も必要だが、次は情報を集める必要がある。

本来、今回の宴会は個人的なもののはずだった。それが、このような事になるならば、何処かで誰かがそのように誘導したと考えるべきだ。まあ、その犯人はわかってるが。

「入ります」

「どうぞ~」

当直室の扉をノックして入室する。

「そろそろ来ると思っていたよ~」

そう言って、当直室に置き忘れていた竜の鱗を差し出してくる。必要だったので受け取る。

「宴会の情報バラしました?」

「うん。色々と考えたけどこれがベストだったんでね~」

やっぱり、犯人コイツか。

「オレサマオマエマルカジリ」

「ビール2ケース」

「吊るす」

「ビール4ケース」

「許す」

「許された~」

「ついでに、つまみの食材が足りないので何かください」

「後で持っていくよ~」

色々と言いたい事があるが、まあこれぐらいが引き出せる限界か。

「ところで、何処まで情報は話しました?」

「掻い摘んでしかね、細部まではとても手が回らないよ~。あと、島の外には一切情報流れてないはずだよ~。」

「わかりました。じゃあ、戻ります」

「ご武運を~」

「靖国で会おうぜ」

笑顔でサムズアップ。ついでに、微妙に死亡フラグ立ててみる。

さて、手札は少ないけれども準備は整った。

お偉いさん相手に小気味でウィットに富んだジョークを含んだトークを繰り広げることにしましょうかね?

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