01年、戦争は終わらない。
1956年、戦争は続いていた。
1918年、戦争が佳境に差し掛かったころ、人類は新たな力を手にしたのだ。その超常現象的な力に、あるドイツの科学者はこう名付けた。「神託」と。世界各国は力を求めた。この戦いを終わらせるために,,,,,,,,,。
―1956年1月4日 オホーツク海海上リグー
「一度始まったら意地でも終わらない,,,そういうものだな。」
そう呟く上司のジークフリートと才蔵は、オホーツク海の海上リグの甲板の上で、周囲の警戒任務を行っていた。冬の早朝の海は寒い。
「さぼんないでくださいよジーク小隊長。戦争が終わってもやることないでしょ。」
白い息を吐きながら小隊長のボヤキにイジリを入れる。
「失敬な。俺だって趣味の一つや二つくらいあるぞ、,,,,,,園芸とか。自分で育てる花はきれいでいいぞ~。」
「今頃、その花枯れてそうっすね。」
「まあ四週間もこの海上リグの上だもんな~」
「でもこんなところ、誰が目標にするんですかねえ。」
「さあな。まあ今のところは平和だ。海も静かでいいな~。」
ーオホーツク海海上リグ近海ー
「変ね。罠にしてはあからさますぎるわ。ねえクラベル?」
「ですが参謀様がおっしゃられていますので。作戦は遂行せねばなりませんよ姫様。」
「それもそうね。」
ロシア帝国製の最新高速艦が、スクリューを回してぐんぐん進んでいく。載せているのはただの一兵卒ではなく、国の最高戦力レベルの神託を持ちながら、ロシア帝国第二王位継承者であるアレクセイ=ナターシャ=アレクセーエヴナその人である。
「……そろそろです。…姫様。」
「そう,,,,,,嫌いなのよね。戦闘前のこの雰囲気。みんなピリピリしてる。」
船と海上リグの間はまだ五キロ以上あったが、意にもせずアレクセイは単騎で飛び立った。
ーオホーツク海海上リグー
「しっかしホントーに寒いですねえ北は。」
「地元があったかく感じるか?サイゾー君」
「そりゃドイツも寒いっすけど,,,,,,,,,あれ、なんですかね小隊長?」
「なんだ?その望遠鏡かしてみろ,,,,,,人間か,,,,,,?」
「なんですかねえ。」
「なあサイゾー君。」
「はい。」
「敵だ。」
「え?」
「っ,,,!各員に通達っ,,,!敵騎来襲!敵騎来襲ぅ!」
戦闘配置につく前にアレクセイは既にすぐそばまで飛来していた。
「撃てー!撃てー!」
銃器で何とか撃ち落とそうとするも、かすりもしない。
「悲しいものね。同情するわ。,,,,,,,,,死になさい。」
その瞬間エネルギーが収束され、海上リグ目掛けて明るい何かが飛んでいく。
瞬く間にオイルタンクに引火し誘爆する。運悪く何十人も冷たい海に放り出されていく。
「これが戦争だ。」
「何!?」
アレクセイの背後に突如として現れたのはジークフリートだった。
「戦争だ。抵抗させてもらうぞ。」
「何を,,,,,,!っつう」
海の上、空の上でその戦いは繰り広げられる。
片や弾幕、片や大剣を振り回ししのぎあう。
アレクセイの乗っていた船の後続も次々と到着し、戦況はロシア帝国側に傾いていく。
「分が悪いか,,,」
「させないっ,,,!」
撤退しようとするジークフリートをアレクセイは阻止する。
「俺を忘れてるねえ」
「遅いぞ!」
「すみません落ちた人たちを救助してて,,,」
「あっ,,,待てサイゾー,,,」
「甘いわね。そうやって油断する奴らを何人も狩ってきたのよ」
才蔵の腹に明るい球が貫通する。そして才蔵の意識は遠のいていくのだった。
ー1月8日 ベルリン近郊ー
「っは,,,!」
才蔵はベットから立ち上がり周囲を見渡した。そこは知らない病室のようで才蔵は今まで起きたことを思い出していた。
コンコン,,,
ドアをノックする音が聞こえジークフリートが入ってくる。
「おお、起きたか。災難だったな~。でも良かったな生きてて」
「何がですか,,,?」
「いやー感謝しろよサイゾー君。バルト戦線の奴らが頑張ってくれたから君は生き残っているんだぞ~」
「はあ,,,」
「あのあとロシア帝国軍が何故か撤退してね,,,まあ目標の海上リグも破壊されたし、バルト戦線の応援に向かったようだがね。おかげでアレクセイ様が大暴れしてるらしいぞ。」
「なにもできませんでした,,,」
「まあ仕方ない。今のお前じゃあ彼女には勝てないからな。」
「悔しいですが簡単に腹を貫通させられては反論もできません,,,」
「まあしばらくは休め。ここまで連れてくるの大変だったんだからな~」
「はい,,,」
「じゃあ行くからな」
ジークフリートが部屋を出ていく。それを見届けた才蔵は窓の外を見つめながら呟く
「絶対に,,,終わらせる,,,彼女のために,,,救い出してみせる」
ー翌日 ベルリン近郊ー
コンコン,,,
「誰だろうな,,,はーい」
「さいんちゅー!大丈夫だったー?心配したのよぉ」
「なんだ舞子とアーリか」
「何だって何よ!心配したのに,,,」
「夜も眠れなかったらしいわよ」
「そこまでじゃない!」
二人は同じドイツ国民軍の同期の鋼野舞子とマーガレット=アーリヤ。候補生であり才蔵やジークフリートと同じように神託を持つ能力者である。
「まあだいじにならなくてよかったねー」
「いや大事にはなってるんだが?」
「ともかく生きててよかったわね。,,,ああそうそう、あなた宛てに任務書よ。これを届けに来たの」
「なんだよただのお見舞いじゃねえのか,,,,,,で、どれどれ,,,」
「これは…」
「何だって?」
2人が任務書をのぞき込んでくる。
「神託を磨けだって,,,?」
「なるほどねえ,,,」
「練度不足ってことかあー」
「まあ仕方ないでしょ。卒業して配属されたばかりなんだし。」
「しかも訓練期間が一年って。短すぎるよね」
「まあそうだなあ。心機一転訓練に精を出すしかないか」
「その意気だぞー!頑張ってー!」
「応援してるわ,,,」
外に目をやると雪が積もっているのが見える。今も戦場では白い雪の上に赤い血が降り注いでいるのだ。
まだ誰も知らない。この終わらない戦争の行きつく先を。
誰にも想像できないのだ。未来のことなんて,,,
ー19??年 ???????ー
「これは,,,,,,始まるぞ戦争が,,,真の,,,争いが,,,」
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