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思い出の写真
会社には「しばらく休む」とだけ伝えたが、同僚や友人からのメッセージにも返信する気力が湧かなかった。
ベッドの中で丸くなり、悠人の名を何度も呼んだ。
「悠人……なんで、どうして……」
返事がないのが、ただ、ただ、怖かった。
夜になると余計に孤独が押し寄せてきた。
目を閉じれば、あの日の朝の笑顔が蘇る。
「行ってくる」と笑ったあの顔が。
次の瞬間には、病院の白い廊下と告げられた言葉が脳裏をよぎる。
『……心肺停止で——』
耳を塞ぎたかった。
もう一度、目を開ければ夢であってほしい。
でも、現実は容赦なく突きつけてくる。
ある日、ふとリビングの引き出しを開けた。
そこには悠人が撮った写真たちが入っていた。
空の写真。
街角の風景。
そして、二人で旅先で撮ったスナップ。
紗良の無防備な笑顔と、カメラの向こう側にいた悠人の存在がそこにはあった。
写真を胸に抱きしめ、声を押し殺して泣き崩れても
悠人はもう私を抱きしめてはくれない。
「……悠人……会いたいよ……」
いつまでこの苦しみは続くのだろう。
先のことなど、考える余裕もなかった。