ペアリング
紙袋の中から出てきたのは2つの指輪。
「えっ、これ……?」
「ペアリング!作ってきた!いつかちゃんと指輪渡す前の準備運動、、ってやつ笑」
紗良の目が潤んだ。
「……すごくうれしい」
二人はその場で指にリングをはめた。
指先が重なると、幸せの輪郭がはっきりと見えた気がしてあたたかい温もりを感じた。
「これからも、もっともっとたくさん思い出作ろうな」
「うん、ずっと一緒にたくさんの思い出を作ろう」
その小さな約束が春風に溶けていった。
その夜。
二人は紗良の部屋でささやかな祝いをした。
スーパーで買ったワインと、手作りのパスタ。
豪華ではないけれど、心から幸せを感じる時間。
「こういう日がずっと続けばいいのにな〜」
ベッドに横になり、隣にいる悠人の背中にそっと腕をまわす。
「続くよ。絶対!」
その声が、なによりの約束に聞こえた。
そして翌朝。
悠人は急な仕事で地方の撮影に出かけることになった。
玄関先での別れ際、いつものように軽くキスを交わす。
「行ってくる。夜までには戻るよ!」
「うん、気をつけて」
「お土産、期待しといてな!」
にこっと笑った悠人の顔を、紗良は何度も思い出していた。