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プロローグ
当たり前だった手のぬくもりも、
ふとした笑顔も、
隣にあることがどれほど尊い奇跡だったのか。
人はそれを失ってからでなければ気づかない。
深い悲しみの底で
もう二度と光なんて見えないと思っていた。
けれど、それでもある朝、
カーテンの隙間から差し込む
ひとかけらの陽だまりが胸に落ちた。
小さな光は、やがて心の奥に
静かに、そして確かに息を吹き返す。
——だから、今日という瞬間を
失うことを恐れず、胸にそっと抱きしめて生きていく。
それがもう一度歩き出すための、私のはじまりだった。