春
窓から吹き抜ける春風が桜の花弁と眠気を運び込む。こういう時は特に用もなく外を飛び回りたくなる。短い春を何もせずに終えるのはもったいない気がするから。
「………」
空から見下ろすこの街が好きだ。四季によって移り行く景色の変化が面白いから。良く出来てるよね。本当に。
「………」
春風に踊らされる桜の花弁と一緒にどこまでも飛んで行く。今日はどんな出逢いがあるのかな。色んな人と笑顔の絶えない日々を過ごすのが大好き。涙降らせる雨雲なんかどっかに追い払ってやるんだから。
「……あっ! 天使だ!」
何気なく過ごすのも悪くはない。でも、せっかくなら移り行くものに目を輝かせ楽しむ方がお得な気がする。今日出逢えた誰かともいつかはお別れする時が来る。そんな当たり前だと思っていることに目を向けてみるのも悪くはないと思う。でも、まだ訪れていない先のことに不安を覚えるくらいなら、今存在する幸せを全力で楽しむ方が良いって思うんだ。
「こんにちわっ!」
初めましてのキミが元気よく挨拶をしてくれる。今日も全力で手を振り応えるんだ。言葉だけがコミュニケーションじゃない。身振り手振りで今日も気持ちを伝える。