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色の無い散歩

作者: タカハシ

 訪れた友人が、(そう云えば先日、君を✕✕で見かけたよ)と話した。が私は、✕✕などという地名を聞くのは初めてだったし、故に行った記憶も無かった。

 それでもその瞬間、ちょうど歯車が逆の回転を始める音は聞こえたし、運命ならば避けては通れまいとも予感した。

 旅の支度を終えると、しかし友人は消えていた。いや、あれは迷宮の中の夢だったのか? 床に目を落とすと、点々と続く、不潔な蹄の跡が映った・・・

 収穫祭のような、寂しさと開放感に酔った足取りで、私は✕✕への道のりを歩いて行った。道中の案内は、シラミだらけの羽根を持つ、首から大量の鈴をぶら下げた、陽気で不潔な天使が買って出た。しかし天使が歩く度に鳴る鈴の音と、羽ばたく度に舞い上がるシラミとには正直閉口した。

 だから目的地が見えた時に私が真っ先にした事は、用済みになったその尻を思い切り蹴飛ばして、地球の裏側、本場のカーニバルまでヤツを追いやってしまう事だったのだが、放屁をしながら飛んでゆくヤツの尻からは、案の定、嫌らしい黒い尾がぶら下がっていたのだ!


 町は巨人の襲撃を恐れるように、巨大な壁で守られていた。

 背徳感から、我知らず赤面した時だった!

 途端に、二次元で描かれた扉が開いて、頭に無線のアンテナを生やした、白黒の官憲たちが現れて、私の身体を百メートルの鎖でグルグル巻きにしてしまった。私の頬に生じた薔薇の赤が、この町の秩序を乱したと云うのだ。いったい世の中に、未だかつて(秩序)なるものが存在した例など無いのだと連中に説こうにも、それを電波で操っている卑怯者は、遥か離れた場所に居るので、裁判すらも起こせなかった。心を持たぬ者に、青くなって助けを請うと、返答にブーツが飛んで来た。噴出した赤の洪水は、瞬く間に町を、色彩とリズムの混沌で満たした。官憲は紙屑と舞い散り、アンテナを持たない民衆が、それをマルク紙幣のように踏みつけて、自由の踊りを踊った。

 緩やかに革命の煙が漂い、炎はその歯車に、いよいよ色彩と加速を加えていった。しかし・・・

 どうやら時間らしい、再び己の内で、カチリと反転する音が響いた。

 大道芸人が投げたナイフは、詩集から手中へと収まり、吐き出した炎は再び腹の中へと仕舞い込まれる。白塗りのジャグラーが素敵に笑う、後ろ向きの闇のカーニバルは、見せ物も逆に、しかしなかなか忠実に(過ちの)歴史を再現するのであった。

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