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『縛られた男と旧校舎』

 金木犀(きんもくせい)の強烈な匂いが、湿った闇の中に広がる。目が覚めると、何も見えず、ただ暗闇だけが広がっていた。椅子に座っているが、手と足は冷たい鉄の鎖で拘束されているようだった。その鎖のようなものからは冷気が伝わり、肌に触れるたびに鳥肌が立つ。


 部屋の片隅には、かすかな灯りが点滅して、不気味な影を投げかけていた。その影が近づくにつれ、心臓は不安と恐怖で激しく鼓動するのを感じた。金木犀の甘美な匂いは、不気味な雰囲気と絡み合って、鼻腔を刺激した。


 かすかに人の気配が迫ってくる。その存在は見えないが、何かが私を観察していることは確かだ。不気味な静寂が部屋に漂い、私は自分が何者かによって囚われていることを思い知らされる。そして、未知の恐怖が私を襲う。


 冷たい鉄の鎖が足元から腹へと尖ったように這い上がる感覚が私を襲う。その冷たさは、まるで生きた何かが私の中に侵入しているかのようだ。私の心臓は激しく跳ね、不気味な静寂が耳に響く。


「やめてくれ、だれなんだ...」


 その瞬間、部屋の隅に立っていた影が一歩近づき、かすかに笑い声が漏れる。その声は人間のものとは異なり、不気味な共鳴が込められていた。


「フフフ...」


 私の心臓は恐怖で躍動し、金木犀の匂いがますます強烈になる。不気味な存在の正体や目的は謎のままで、私はこの闇に取り込まれることを恐れていた。


 影がさらに近づき、その不気味な笑い声が耳を貫く。私は拘束されたまま、この不気味な存在に対抗する方法が何もないことを悟る。金木犀の匂いが私を包み込み、その香りはますます圧倒的になる。


「...寂しい」


 影が私に触れると、冷たさと恐怖が私の体を貫く。私の意識は次第に朦朧とし、現実と夢の狭間にいるような感覚が襲ってきた。私は何が起きているのか、どこにいるのかを理解できなくなる。


 その状態で私は不気味な幻影を目にし始めた。金木犀の花が影を舞台に、奇怪な踊りを披露しているように見えた。花弁は鮮やかな紫色に輝き、その美しさと同時に不気味さを湛えていた。そして、花の中から生えた鉄の鎖が、私の体に絡まり始めた。


 幻影が私を包み込み、私はその中で自分自身を見失いつつあった。金木犀の匂いがますます圧倒的で、私の意識がその中に溺れそうだった。


 しかし、どこか深いところで、私は自分を取り戻すべきだと感じた。この恐怖の幻影に負けるわけにはいかない。冷静さを取り戻し、自身の力を取り戻すべく心の中で叫び続けた。


「誰か助けてくれ...」


 その声が私の中に響き渡り、幻影は揺れ始めた。金木犀の香りが微かに薄れて、鎖がゆるんでいく。私は力強く足を引き、鎖を断ち切り、椅子から立ち上がった。


 不気味な笑い声が一度だけ鳴り響き、影は消えた。部屋の闇も次第に薄れ、現実の世界が戻ってきた。私は何が起きたのかを理解できなかったが、金木犀の匂いは依然として部屋に漂っていた。

 その土地に縛られた幽霊。地縛霊。金木犀の匂いがする時期に旧校舎では、不気味な叫び声が聞こえるらしい。それは昔、生徒監禁事件があった部屋。

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