『メリーちゃんの看板』
夕暮れ時、俺は疲れた足を引きずりながら帰路についていた。地方の薄暗い街路を歩いていると、突然目に飛び込んできたのは、古びた看板だった。
「私メリーちゃん、今、東京にいる」
その文字を見た瞬間、背筋が凍りついた。かつて都市伝説として語り継がれていた怪談を思い出したからだ。思わず携帯を取り出し、看板の写真を撮って友人の曾山に送信した。
「おい、曾山。メリーちゃんの看板バージョンって知ってる?」
メッセージを送ると、俺は再び歩き始めた。しかし、数分も経たないうちに、また別の看板が目に入った。
「私メリーちゃん、今、神奈川にいるの」
冗談じゃない。東京から神奈川?まさか、こっちに向かってきているのか?
冷や汗が背中を伝う中、俺は足早に歩いた。だが、その努力も虚しく、次の看板を見つけてしまった。
「私メリーちゃん、今、今國町にいる」
今國町。ここからわずか数キロ先だ。
その瞬間、携帯が震えた。曾山からのメッセージだった。
「とにかく、急いで戻れ!」
家まであと少し。安全な場所に逃げ込めば大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながら、俺は全力で走り出した。
アパートが見えてきた。ほっとする間もなく、入り口の壁に置かれた新しい看板が目に入った。
「私メリーちゃん、今、あなたの後ろにいる」
恐る恐る振り返ると、そこには...