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『引っ越すたびにやってくる』

 

 大学入学直後と新卒入社直後で同じような体験をしている。


 大学入学時代~


 大学入学直後、一人暮らしにも慣れた夏頃だった。

 暑さに弱い私はその日、少し体調が悪くて、アパートに帰って昼寝をしていた。すると、外から男の子がはしゃぐ声が聞こえた。続いて、おばさんの声も聞こえた。声がだんだん大きくなる。


 どうやら、このアパートに向かっているようだ。私の住んでいた部屋は、2階の奥から2つ目の1Kだった。


 子供は好きだが、体調が悪いのもあって、早く静かにしてほしいと思っていた。


 徐々に彼らは近づいてきた。男の子が階段を登っていく音が聞こえてきた。どうやら、おばさんとおばあさんも一緒にいるみたいだ。二人の声も少し聞こえた。


 ちょっと寝返りを打とうとしたが、動けない。そこで、自分が金縛りになっていることに気が付いた。


 そして、チェーンロックとカギをしていないことに気が付いた。自分でもなぜなのか分からない。彼らがここまで来たらどうしようと少し焦ってきた。


「早く―」


 男の子が元気におばさんとおばあさんを階段で待っている。


 彼らは徐々に私の部屋に近づいてくる。どうか、自分の部屋に来ないでくれ、祈るようにしていた。金縛りも解けない。足音がどんどん近づいてくる。あと一部屋だ。


 自分の部屋の前で止まってしまった。身体を頑張って動かそうとしても動かない。玄関の扉が徐々に開いて、日光が差してくる。


「誰かいらっしゃいますか?」


 おばさんの声だった。


「い、います」


 私は声だけでも返事をしないと入ってくると直感して、振り絞ったかすれた声で返事をした。


「失礼しました」


 そういうと彼らは、少し扉を閉めて、帰っていった。


 ここから4年間同じ経験はなかった。友達にこの話をすると、宗教勧誘が多い地区だからよく子連れの勧誘は来るという。彼らは宗教勧誘だったと、自分を納得させた。


 就職直後~


 彼らのことも忘れつつあった就職直後、仕事にも慣れた頃の土曜日昼だった。その時住んでいたのはマンション6階の1K部屋。駅から5分と立地もよかった。


 家で休んでいると、廊下が少し騒がしかった。住んでいたマンションはエレベーター1つと階段が2つあった。

 普通6階に来るなら、エレベーターを使って来るはずだが、反対側にある階段の方から声が聞こえてきた。


 前と同じだ。誰が来るか直感でわかった。少年とおばさんとおばあさんだ。声が聞こえる。少年の声とおばさんの声が聞こえる。

 玄関の前で止まって、扉をたたく音がした。


「い、います」


 相手が声を出す前に声を出した。彼らが去ってから、玄関に行くと、今回も鍵をしていなかった。


 この話を兄弟にしてもみんな苦笑いをして「一人暮らしなんだから、気を付けろ」と言うだけだった。


 その後~


 実家に帰って聞いた話。父には兄がいた。だが、すぐに亡くなったという。墓参りをして、墓石を見てはっとした。亡くなったおじさんと私の名前には同じ漢字があった。


 何かの縁で人と人はつながる。が、それは現世の人だけじゃない…

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